中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(17) 「低額銘柄」ランキングの「お手頃」銘柄で中国株投資をスタート

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「低額銘柄」のランキング活用法を紹介します。


中国株は多くの銘柄が20万円もあれば買える


「低額銘柄」のランキングは、最低取引単位の株を購入するのに必要な資金である「最低売買価格(=最低購入額)」が小さな銘柄のランキングです。株価は1株当たりの金額ですが、必ずしもその金額で購入できるわけではありません。銘柄ごとに「最低何株から買うことができるか」という取引単位(単元株)が決まっていて、最低売買価格は、株価×取引単位×日本円換算レートで算出します。


 


取引単位(=単元株)は、香港市場は銘柄によって異なり、通常銘柄であれば1000株や2000株のケースが最も多くなっています。本土市場はすべて100株で統一されています。「中国株二季報」2024年夏秋号では、最低売買価格の平均は約18万5500円、中央値は約10万5400円となっています。つまり、中国株の場合は20万円もあれば多くの銘柄が購入可能となっています。


 

出所:「中国株二季報」2024年夏秋号の最低売買価格を集計


「低額銘柄」ランキング、中には千円以下で買える「お手頃」銘柄も


具体的に「中国株二季報」2024年夏秋号で低額銘柄をみてみましょう。低額銘柄の1位は家電量販店大手の国美零售(00493)で、最低売買価格はわずか658円です。もちろん、これに売買手数料がかかりますので、実際にこの金額で買えるわけではありませんが、個人投資家でも気軽に購入できる金額です。


 


ほかの銘柄を見ても、不動産開発の中国恒大集団(03333)や遠洋集団(03377)は4000円以下で購入することができ、1万円以下の銘柄も珍しくはありません。購入するのに数十万円、百万円以上必要となれば、投資するのに慎重になったり、及び腰になったりもしますが、「低額銘柄」ランキングの上位銘柄は「お手頃価格」なので、失敗してもダメージが小さくて済みます。とりあえず中国株を始めてみようという人にとって「低額銘柄」は、金銭的な面で最初のお試しに適した銘柄の候補といえるかもしれません。


また、高額銘柄では1銘柄で予算を使い切ってしまうことも珍しくありませんが、低額銘柄は1銘柄当たりの投資金額を少なく済ませることができるので、少ない資金で比較的自由にポートフォリオを組むことも可能です。例えば、1銘柄では倒産や上場廃止によってすべてを失ってしまうリスクがありますが、小売銘柄、不動産銘柄、自動車・二輪銘柄などセクターを分散させたポートフォリオを組んだり、短期投資銘柄と長期投資銘柄など投資期間を分散させたポートフォリオを組んだりすることもできます。これは投資金額が安く済むからこそできることです。


 


また、この低額銘柄ランキングに入ってくるような銘柄は、株価が大きく下落した銘柄が多くなっています。株価が大きく下落するのは、それなりの理由があるはずですが、中には人気がなくて、ずるずると株価の下落が続いているような銘柄もあります。こうした銘柄は、市場の評価が変わることで株価が急騰するようなケースもあります。低額銘柄は株価の変動が比較的大きいため、値幅制限のない香港市場では、短期間で利益を上げられることもあります。


小売りや不動産など不況業種や不人気な銘柄も


一方、気をつけなければならないのは、低額銘柄ランキングに載るような銘柄は、業績が極端に悪い銘柄や不人気の銘柄が多いという点です。「低額銘柄」の上位の銘柄をセクター別で見ると、国美零售(00493)、イオン・ストアーズ(00984)、永輝超市(601933)といった小売り銘柄や中国恒大集団(03333)、遠洋集団(03377)、恒大物業集団(06666)といった不動産銘柄が多いことに気づきます。


不動産銘柄は販売不振による深刻な不動産不況の真っ只中にあり、小売り銘柄はオンライン販売の普及や不動産不況のあおりで厳しい業況に陥っています。個別銘柄のページで、決算動向や最新動向を読めばこうした状況が説明されていますので、投資に当たっては個別銘柄のページもぜひ参照みてください。


 

出所:「中国株二季報」2024年夏秋号


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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