世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。今回は前回に引き続き時価総額2位のアリババ集団(09988)を紹介します。前回の内容については、下記をご覧ください。
▼参考
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(1) 落ちこぼれジャック・マーの逆襲
CtoC事業を舞台に米イーベイと全面対決、中国撤退に追い込む
BtoBの「1688.com(アリババドットコム)」が軌道に乗り、ようやく黒字化を果たした2002年、CtoCを中核とする米国のEC大手イーベイが中国市場に進出してきます。そして、イーベイは2003年、当時中国でCtoC最大手だった企業を買収して一気に市場を支配します。危機感を持ったアリババ集団は、イーベイに対抗するため、同じ年に新たなサービスとしてCtoCサイトを立ち上げます。これが「淘宝網(タオバオ)」です。
このとき、アリババ集団はオンライン上の決済サービスである「支付宝(アリペイ)」を導入するとともに、出品や取引にかかる手数料を無料化することでイーベイを徹底的に潰しにかかります。
これによりアリババ集団は徐々にイーベイからシェアを奪い、2005年の後半にはついに逆転。2006年にはイーベイを中国市場から撤退に追い込みます。創業者のジャック・マー氏はこのとき、「イーベイが大海のサメなら、私は揚子江のワニだ。海で戦えば負けるが、川で戦えば勝てる」という名言を残しています。
BtoCの「天猫」をリリース、安心して買い物できる環境を提供
BtoBの「1688.com(アリババドットコム)」に続き、CtoCの「淘宝網(タオバオ)」の成功で会員数が伸びるなか、ニセモノ商品の問題が深刻化してきます。当時、「淘宝網(タオバオ)」では誰もが無料で利用できたことから、非正規の商品を出品する出店者が続出していたのです。そこで、アリババ集団は出品者の審査を厳格化し、ブランド力があり、認証を受けた企業だけが出品できるBtoCの「淘宝商城(タオバオモール)」を2008年に立ち上げます。これが現在の「天猫(Tモール)」です。
「天猫」というのは、英語の「Tmall」の読みに中国語を当てたものです。これによって利用者は、販売している商品がニセモノかどうか悩むことなく、安心して買い物ができるようになったのです。「天猫(Tモール)」は、CtoCの「淘宝網(タオバオ)」との差別化を図るため、販売手数料や出店料を徴収するビジネスモデルを採用しました。
写真は「天猫」のスマホ画面 引用:アリババ集団ホームページ
独身の日のイベントで人気を集める
設立10周年にあたる2009年になると、数字の「1(シングル)」が並ぶ11月11日を「独身の日」として、一大ネット商戦を展開します。当初は立ち上げたばかりの「淘宝商城(現天猫)」の売り上げを伸ばすための販促セール「双11(ダブルイレブン)」として始まりました。発案者は「淘宝商城」の担当を任されたアリババ集団現会長の張勇(ダニエル・チャン)氏です。米国の感謝祭翌日にあたる「ブラックフライデー」のセールを真似たもので、「自分へのご褒美」として商品をたくさん購入してもらおうというものでした。
写真は独身の日イベントの様子 引用:アリババ集団ホームページ
2009年に行われた最初の「双11」は、全品半額セールを展開して人気を集め、大成功を収めます。そして、その後はライバルのECサイトも参戦してきたことで全国的なイベントに発展しました。2009年の初年度に0.5億元だったアリババ集団の「双11」取引額は、2021年には5403億元(約10兆8100億円)にまで拡大。セール期間が当初の1日から1カ月近くに延長されてはいますが、この期間だけで楽天の年間流通取引総額(2021年)の2倍の規模となっています。
13年に菜鳥を設立、物流改革を推進
ただ、こうしたイベントの開催などによる急激な宅配需要の増加で物流が混乱します。「商品が届かない」「配送中に中身が壊れた」などのトラブルが頻発し、アリババ集団としても対応を求められることになります。そうしたなか、2013年に物流改革に乗り出し、小売企業や宅配会社との共同出資で「菜鳥網絡(ツァイニャオ・ネットワーク)」を設立。「中国国内24時間以内、全世界72時間以内の配送」を目標に掲げ、データのデジタル化とフォーマットの標準化を進めます。
菜鳥自身がトラックやドライバーを抱えて荷物を運ぶのではなく、宅配業者にトラックやドライバーを効率的に手配するための基盤となるシステムを整えたのです。このシステムはCNS(China Smart Logistic Network)と呼ばれ、菜鳥はこのシステムを小売業者や宅配業者に提供。小売業者や宅配業者は、このシステムを利用することで大量の商品を効率的に購入者に届けることができるようになったのです。アリババ集団はこうして徐々に事業の基盤を整えていったのです。
引用:「菜鳥網絡(ツァイニャオ・ネットワーク)」のホームページ
次回はアリババ集団の紹介の最終回となります。お楽しみに。(続く)