中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(11) ランキングを使って銘柄を探す、「業績増額修正」と「業績減額修正」で予想の変化をつかむ

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「業績増額修正」と「業績減額修正」のランキング活用法を紹介します。


「業績増額修正」と「業績減額修正」ランキングの活用法


業績増額修正は、予想純利益が上振れした銘柄のランキングです。具体的には、「中国株二季報」に記載された個別銘柄の予想純利益が前号記載の予想から上振れた銘柄で、その上振れ率が大きな銘柄のランキングです。2024年春号の場合は、2023年度予想または2024年度予想が対象となっています。予想が上振れたということは、予想を出しているアナリストの評価が前号の発売時よりも高くなったことを意味します。上振れ率が大きければ大きいほど、それだけ評価が大きく変化したことを意味しますので、株価にとってはポジティブな材料です。新たな買い候補となる銘柄といえるかもしれません。


 


逆に業績減額修正は、予想純利益が下振れした銘柄のランキングです。前号に記載の予想純利益が今号で大きく下方修正された銘柄となります。アナリストの評価が下がっている銘柄なので、下振れ率が大きければ大きいほど、株価にとってはマイナスの材料となります。内容は吟味する必要はありますが、ホルダーにとっては売り時を検討すべき銘柄といえるかもしれません。


 


なお、「業績増額修正」と「業績減額修正」のランキングは、純利益の絶対値が小さいと極端な変化率になる可能性があるので注意が必要です。ランキングで気になる銘柄が見つかった場合、必ず個別銘柄のページで業績予想を確認してみましょう。「中国株二季報」の業績予想は、ファクトセット社が各アナリストの予想をまとめて平均したコンセンサス予想を採用しています。銘柄によっては、予想を出しているアナリストが1社だけというケースもあり、予想が大きくブレる可能性があります。また、複数のアナリストが予想していたとしても、予想が大きく外れる可能性があることは念頭に置いておいてください。


個別銘柄のページも業績予想の変化を矢印で掲載


個別銘柄のページでも、業績予想の変化を確認することができます。「30%以上の増額」または「赤字予想から黒字予想への転換」が「↑(上向き矢印)」、「5%未満の増減」または「赤字継続」が「→(右向き矢印)」、「30%以上の減額」または「黒字予想から赤字予想への転換」が「↓(下向き矢印)」などとなっています。予想がない銘柄については「-」と表示。視覚的にもすぐに判断できるようになっています。


 


ランキング利用に当たっての注意点は?


ランキングを利用するにあたって注意する点としては、さきほど絶対額の小さな銘柄の場合に変化が大きくなってしまう点、アナリスト予想が外れる可能性がある点を書きました。このほか、業績の下振れが一時的なものか継続的なものかに注意を払う必要があります。例えば業績が大きく下方修正された場合、その理由が業況の悪化であれば長引く可能性がありますが、一時的な引当金の計上や特別損失の計上であれば、影響を受けるのは1年だけで、翌年には業績が回復している可能性があります。


「中国株二季報」では、業績予想を2期分掲載しているので、翌年の業績も合わせて確認してみてください。翌年の業績が改善しているようであれば業績予想の下方修正は一時的なものである可能性があります。ただ、翌年も業績が悪化しているようであれば、先行きに対して慎重にみる必要があります。


以下は、MGMチャイナ(02282)の2023年本決算の利益予想の推移です。2023年春号のときは、コロナ禍の行動制限で厳しい見通しでしたが、その後の行動制限の解除で業績予想が上向いていることが分かります。 


「中国株二季報」は、書名の通り年2回の出版なので、半年の間にも市場環境は大きく変化します。最新の予想については、「中国株二季報」のWEB版である「二季報WEB」も合わせてご確認ください。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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