中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(8) ランキングを使って銘柄を探す、「低PER」は投資指標の基本中の基本

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「低PER」ランキングの活用法を紹介します。


「低PER」で割安な銘柄を探す


PERとは、Price Earnings Ratioの頭文字を取ったもので、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。株価が割安か割高かを示す指標として利用され、株価÷EPS(1株当たり利益)で計算することができます。



PERは株価が割安か割高かを判断するにあたって、最も利用頻度の高い指標の一つです。この計算で一体何がわかるのか? 1株当たりの株価を1株当たりの純利益で割っているので、「株価が利益の何倍まで買われているか?」を示していると言えます。PERの計算を1株当たりの株価と純利益で出していますが、時価総額を純利益で割って出すこともできます。


「株価が利益の何倍まで買われているか?」ということは、要するに「株価が何年分の利益を先取りして買われているのか?」ということであり、PERが高ければ、それだけ現在の株価が割高であることを示しています。


しかし、毎年大きな利益を生み出している会社の場合、分母であるEPSが毎年大きくなっていきますので、分子である株価が同じであれば、翌年の予想PERはもっと低くなり、その次の年はさらに低くなります。PERが高いということは、それだけ将来の成長への期待が高く、逆にPERが低いということは、それだけ将来の成長への期待が低いことも意味しています。


「実績PER」と「予想PER」


PERは分子が株価で分母がEPSになりますが、いつ時点のEPSを使うかによって、PERの値は異なってきます。直近の本決算で発表された実績のEPSを使ったり、今期予想もしくは来期予想のEPSを使ったりします。実績のEPSを使って算出したPERを「実績PER」、予想を使って算出したPERを「予想PER」と呼びます。株価は基本的に将来の予想を反映して動くので、「予想PER」を使うのが一般的です。「中国株二季報」のランキングでも今期予想のPERを使っています。


個別銘柄のページでは実績と予想のPERを掲載している


なお、「中国株二季報」の予想については、「中国株二季報」の独自予想と勘違いされることがありますが、ファクトセット社の市場コンセンサス予想を採用しています。これは、各ブローカーの予想を集計した平均値になっています。1社だけの予想だと大きく外れることもありますが、予想しているブローカーが多い銘柄では、予想に近い結果になることが多いようです。


割安と割高の判断はどうする?


では、どのくらいの水準だと割高で、どのくらいの水準だと割安と判断できるのでしょうか?まずは平均と比べてみましょう。「中国株二季報」で採用している銘柄の平均は、2024年春号で「20.5倍」となっています。

 

平均はランキングの右上に記載している


例えば、中国のIT業界を代表する銘柄の一つである、インターネットサービス大手のテンセント(00700)を見てみます。「中国株二季報」2024年春号では、予想PERが21.5倍、実績PERが13.9倍となっています。一方、インフラ建設大手の中国鉄建(01186)は、予想PERが2.2倍、実績PERが2.5倍となっています。テンセントは平均よりPERがやや高く、中国鉄建は平均よりかなり低いことが分かります。


ただし、ITセクターのように高い成長が期待される業種の銘柄はPERが高めになる傾向があり、逆に安定した成熟産業ではPERが低めになる傾向があるので、実際には業種ごとに比較してみる必要もあります。


その場合は、「中国株二季報」の企業データの最初のページに掲載している「業種別指標一覧」も合わせて比較してみましょう。こちらは香港証券取引所に上場している全銘柄を集計した平均ですが、コンセンサス予想のない銘柄もあるため、実績PERを掲載しています。



PERは必ずしも低ければ低いほどよいというわけではないので、業績の見通しがよいにも関わらず、PERが業界平均に比べて低い銘柄を中心にチェックしてみるとよいでしょう。意外な割安銘柄が見つかるかもしれません。


実際の「中国株二季報」では低PER銘柄を45位まで掲載している


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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