中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(1) 中国株の銘柄選びに欠かせない「中国株二季報」とは?

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


「中国株二季報」は中国企業のデータブック


「中国株二季報」は中国・香港に上場する企業のデータブックです。会社の事業内容を記した企業概要から、直近の中間決算もしくは期末決算の内容、最近の動向などをコンパクトにまとめています。データについては、財務情報、株価指標、チャートなど投資に欠かせない情報を網羅。1銘柄で1ページを使い、企業の情報をぎっしり詰め込んでいます。



日本株では東洋経済新報社から出版されている「会社四季報」をご存知の方が多いと思いますが、その中国株版と考えていただければイメージしやすいと思います。主な違いとしては、「中国株二季報」は全銘柄ではなく銘柄を厳選して掲載している点、企業概要など文章による紹介を厚くしている点などです。


「中国株二季報」の銘柄紹介ページ、銘柄紹介を厚めにしている


主に中国株に投資をしている人を想定して編集していますが、中国のライバル企業や取引先の動向調査といった企業研究にも使える内容になっています。こうした上場企業のデータブックは、日本では昔から一般的ですが、海外ではあまり見かけないようです。


中国株二季報は2001年に誕生


創刊当初は「中華圏企業ハンドブック」というタイトルだった


その「中国株二季報」が誕生したのは2001年のこと。意外に思われかもしれませんが、創刊からすでに四半世紀近くも発行を続けているのです。創刊した当初の書籍タイトルは「中華圏企業ハンドブック」でした。いまと違う点はたくさんあるのですが、創刊当初は中国・香港企業だけでなく、台湾に上場する銘柄も取り扱っていた点が大きな違いです。中国は上海と深センのB株が100銘柄、香港と台湾が各100銘柄の合計300銘柄を掲載していました。まだ中国を含めた海外の企業に関する日本語での情報が非常に少ない時代だったので、1冊にまとまったデータブックはとても貴重な存在でした。その後、取り扱い銘柄を中国・香港だけに絞り、2003年夏秋号から書籍タイトルを「中国株二季報」に変更。2023年12月に出版した2024年春号で通算45号目となりました。


創刊号である2021年秋号を改めて眺めてみると、企業の栄枯盛衰が見てとれます。すでに上場廃止となっている銘柄もあれば、売り上げ規模が数十倍に拡大している企業もあります。「あのころ買っておけばよかったなぁ」と後悔させられる銘柄もあります。中国株を代表する銘柄の一つであるITサービス大手のテンセント(00700)は、創刊当初はまだ上場していませんでしたが、「中国株二季報」を通じて早くからその存在に気づいていた人は、もしかしたらその後のテンセントの成長の恩恵にあずかることができたかもしれません。


創刊当初の銘柄紹介ページ、写真は中信泰富(現中国中信:00267


なぜ「二季報」なのか?の疑問


書籍タイトルについて、たまに「なんで二季報なの?」と聞かれることがあります。「会社四季報」は年4回出版で「四季報」であることを知っていれば、推察できると思います。「中国株二季報」は年2回の出版なので、「二季報」なのです。たまに「二期報」と誤って書かれているのを見ますが、正しくは「二季報」です。


香港市場では、上場企業に対して中間決算と期末決算の年2回の業績発表を義務付けており、四半期決算の発表は求められていません。そのため、「中国株二季報」では、中間決算と期末決算の発表に合わせ、毎年7月と12月の年2回出版しているのです。7月に発売する号が期末決算を反映した「夏秋号」、12月に発売する号が中間決算を反映した「春号」です。12月発売なのに「冬号」ではない理由は、「冬」が相場にとってあまりよいイメージではないためです。



制作に当たっては、多くのスタッフが1銘柄ずつ決算報告書を読み込み、手作業で作成しています。なかには数百ページにも上る決算報告書を発表する会社もあり、ひと通り内容をチェックするだけでもひと苦労です。しかもそれが中国語や英語で書かれているのですから、読み間違いのないよう細心の注意を払って作成にあたります。株価や財務などのデータを入力し、何度も何度も確認作業を行い、最終的に数百銘柄に上る企業情報ができあがります。印刷会社にデータを入稿すると、ようやく作り終えたという達成感が湧いてきます。毎回、このようにして「中国株二季報」は作られているのです。


次回以降は「中国株二季報」の具体的な活用の仕方、銘柄選びのポイントなどについて紹介していきます。「中国株二季報」を使いこなして、老後も安心して生活できるだけの資産を築いていきましょう。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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