中国株の銘柄選び

意外と身近にある中国株、街中で探してみた(2) ペニンシュラホテル、「東洋の貴婦人」と呼ばれた歴史と伝統の高級ホテル

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回は街中で中国株銘柄を探してみました。


香港上海ホテルズの「ザ・ペニンシュラ東京」


今回、街中で見つけたのは香港上海ホテルズ(香港上海大酒店:00045)が展開する高級ホテル、「ザ・ペニンシュラ東京」です。場所は日本を代表するオフィス街、東京丸の内エリア。皇居外苑と日比谷公園に面し、東京国際フォーラムや帝国ホテル、帝国劇場、東京ミッドタウン日比谷などが立ち並び、銀座も徒歩で行けるロケーションです。


ザ・ペニンシュラ東京は2007年に開業した


ザ・ペニンシュラ東京の開業は2007年9月。建物は地上24階、地下4階建てで、日本の「灯籠」をイメージして建てられたそうです。一棟まるごとホテルになっており、客室数はスイートルーム47室を含めて全314室。客室やロビーなどインテリア全般は橋本夕紀夫デザインスタジオが担当し、随所に日本の文化や伝統を取り入れた独特のスタイルになっています。


屋上には送迎用のヘリポートを配置していますが、行政の許可が下りないため実際には使われていないとのことです(香港などの都市ではヘリコプターによる送迎サービスが提供されています)。


公式サイトを見ると、スタンダードの「デラックスルーム」で1泊約15万6000円から。フロアの8-12階にあり、客室面積は54平方メートル。天然木材を使った落ち着いた空間になっています。最上級の「ザ・ペニンシュラスイート」は、客室面積が347平方メートル。リビングやダイニングの天井には金箔が施され、プライベートテラス、プライベートジム、お茶室まで完備しています。料金は電話・メールでの問い合わせとなっていますが、消費税・サービス料込みで1泊380万円ほどするそうです。金銭感覚がマヒしてきそうです。ザ・ペニンシュラスイートのルームツアーはこちら


お茶室も完備した「ザ・ペニンシュラスイート」 出所:ザ・ペニンシュラ東京HP


また、ホテル1階の「ザ・ロビー」では、楽器の生演奏を聴きながら伝統的な英国スタイルのアフタヌーンティーを楽しむことができ、ペニンシュラホテルの名物となっています。料金は、公式サイトによると、平日税込み8000円、土日祝日9000円となっています。


ペニンシュラホテルの名物アフタヌーンティー 出所:ザ・ペニンシュラ東京HP


創業は1866年、香港で最も歴史のあるホテル


ホテルを運営する香港上海ホテルズの創業は、日本で言えば江戸時代末期にあたる1866年。香港で最も歴史のあるホテル会社であり、香港で最も早く証券取引所に上場した企業のうちの一社でもあります。最初のホテル「香港ホテル」が完成したのは1868年。当時の香港総督であるリチャード・グレイブズ・マクドネル卿も開業式典に主賓として招待されています。


1868年に完成した香港ホテル 出所:香港上海ホテルズHP


当時の経営は、スコットランド出身の海運王ダグラス・ラプライク氏やユダヤの血を引くオランダ系英国人のC.H.Mボスマン氏(マカオのカジノ王・故スタンレー・ホー氏の曽祖父)、ドイツ人で元外交官のグスタフ・フォン・オーバーベック男爵らが中心でした。しかし、1890年になるとイラク系ユダヤ人の青年が株式を取得してオーナーとなります。彼の名はエリー・カドゥーリー。このときまだ23歳という若さです。


オーナーはイラク系ユダヤ人のカドゥーリー家


エリー・カドゥーリー氏は13歳のときに故郷を離れ、ユダヤの名門サッスーン家が設立した上海のサッスーン商会で働いていました。サッスーン商会と言えば、ジャーディン・マセソン商会とともに、アヘン貿易で巨額の富を築いた貿易会社です。エリー・カドゥーリー氏はそこで貯めた資金などを元手に独立し、香港で証券会社を設立。その証券会社を通じて香港上海ホテルズの前身・香港ホテルの株式を手に入れたのです。そして、不動産や銀行、電力などに事業を拡大。とりわけ電力事業で大きな財産を築き、香港を代表する大富豪となりました。


現在は彼の孫にあたるマイケル・カドゥーリー氏が事業を引き継ぎ、一族の経営が続いています。香港証券取引所に上場している大手電力会社、中電控股(CLPホールディングス:00002)もカドゥーリー家が支配している会社です。


ホテル事業では香港の旗艦ホテル「ザ・ペニンシュラ香港」が特に有名です。ホテルの完成は1928年。その洗練されたサービスと優雅な雰囲気から「東洋の貴婦人」とも呼ばれています。筆者も中国の旅行会社で働いていたころ、現地で客室を案内してもらったことがあります。室内の装飾などは非常に豪華でありながら、意外と最先端の設備を導入していたりして、びっくりした記憶があります。


旗艦ホテルの「ザ・ペニンシュラ香港」 出所:ザ・ペニンシュラ香港


世界11都市でホテル事業を展開、ロンドンでも新ホテル開業へ


香港上海ホテルズは、拠点の香港のほか、東京、上海、北京、バンコク、マニラ、パリ、米国ではニューヨーク、シカゴ、ビバリーヒルズの各都市でペニンシュラホテルを運営しています。さらに、2023年2月にはトルコのイスタンブールに新たなホテルが開業。そして、ロンドンの高級住宅街でも新たなホテルの建設が進められており、2023年9月12日から宿泊予約を受け付けることが発表されています。


同社が運営するホテルの一部 出所:香港上海ホテルズ決算報告書


ちなみに、ペニンシュラは「半島」を意味し、旗艦ホテルである「ザ・ペニンシュラ香港」が位置する九龍半島からブランド名がつけられました。


ピークトラムも運営、22年に第6代の新型車両を投入


「100万ドルの夜景」で知られるビクトリアピークに登るためのケーブルカー「ピークトラム(山頂纜車)」も、実は同社が運営しています。香港に観光に行ったことがある人であれば、乗ったことがあるという人が多いのではないでしょうか。もともとは英国人の避暑地として山頂が開発され、いまでは香港を代表する観光スポットとなっています。セントラルの花園道駅から山頂駅の1.4キロメートルを約10分で結んでいます。


香港名物のピークトラム 出所:香港上海ホテルズ決算報告書


コロナの影響などで2022年のピークトラムの利用者は約90万人にとどまりましたが、コロナ前は年間600万人以上が利用していました。2022年には改修工事が行われ、1888年の開業から数えて6代目の新型車両が投入されています。これにより、1車両あたりの定員が120人から210人へと大幅に増加。輸送能力のアップでコロナ前の激混み状態の緩和が期待されます。


香港に行ったら、「ザ・ペニンシュラ香港」に宿泊し、「ピークトラム」に乗って、中電控股の電気をガンガンに使った「100万ドルの夜景」を楽しむ――。こんなプランはいかがでしょうか。


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄は香港上海ホテルズ(00045)の1銘柄で、香港証券取引所に上場しています。

 

【ホテル経営の老舗】旗艦ホテルは18年に創業90周年を迎えた「ザ・ペニンシュラ香港」。香港、米国、中国本土、フィリピン、タイ、日本に高級ホテル10軒を展開し、総客室数は2767室(22年末)。14年8月に「ペニンシュラ・パリ」をオープンし、欧州にも足場を築いた。ほかに香港とベトナム、パリでマンション、オフィスビルなどの賃貸事業を手掛けるほか、ゴルフクラブ経営や香港ピークトラム運営にも従事している。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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