中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回は街中で中国株銘柄を探してみました。
サムソナイトの旅行かばん
さまざまなシリーズのスーツケースが売られている
今回、街中で見つけたのはサムソナイト(新秀麗:01910)の旅行かばんです。スーツケースで「サムソナイト」と言えば、多くの人が一度は聞いたことがあるブランド名だと思います。スーツケースを含む旅行かばんの分野で圧倒的なシェアを握り、直営店や代理店、ネット通販などを通じて世界100カ国以上で製品を販売。ビジネスや観光などのシーンで、世界中の人々が同社のかばんを利用しています。
かく言う筆者の自宅にも何十年も前に買ったサムソナイトの旅行かばんがありますが、いまでも使おうと思えば現役で活躍できる状態です。サムソナイトの旅行かばんと言えば、機能的でありながら、軽量で長持ちすることで知られています。
サムソナイトの創業は1910年
サムソナイトの前身となるシュウェイダー・トランク社(後にシュウェイダー・ブラザーズ社に改称)が設立されたのは1910年。ポーランド系ユダヤ人であるジェシー・シュウェイダー氏が、米コロラド州デンバーで創業したのが始まりです。
創業者のジェシー・シュウェイダー氏 出所:サムソナイト・ジャパンHP
過酷な旅にも耐えられる頑丈で高品質なトランクを作ることを目標に掲げ、自社トランクの上に板を置き、兄弟と父親の5人がその上に乗るというパフォーマンスを当時の広告に使います。「100人乗っても大丈夫」のイナバ物置も同じ手法で、頑丈さをアピールするには十分なインパクトでした。この当時に旅行する人はかなりの富裕層ですが、富裕層を中心に人気を集めました。
「5人乗っても大丈夫」の広告 出所:サムソナイト・ジャパンHP
社名の由来となった「サムソン」とは?
1941年には新製品「サムソナイト・ストリームライト」シリーズを発表。印刷技術により外見を本皮のように見せつつ、頑丈さと耐久性を備えた比較的安価なトランクです。このときに「サムソナイト(Samsonite)」というブランド名が初めて使われます。
サムソナイトという名称は、旧約聖書の士師記に出てくる士師(指導者)の一人で、怪力「サムソン」から名付けられました。「サムソン」は、イスラエルをペリシテ人から救った英雄で、創業者のジェシー・シュウェイダー氏が子供のころ憧れたヒーローです。
ライオンを素手で引き裂いて殺したり、腕力で神殿の柱を破壊したりと、とにかくハチャメチャでケタ外れの超人でした。頭に血がのぼると手に負えなくなり、落ちていたロバのあご骨でペリシテ人1000人を打ち殺したという伝説も残っています。怪力「サムソン」のイメージを重ねることで、新たなトランク「ストリームライト」の頑丈さと耐久性を強調しようとしたのです。そして、この「ストリームライト」が大ヒットします。
神殿の柱を破壊する怪力「サムソン」
聖書の「黄金律」が創業以来の行動規範
1965年にはブランド名に合わせて社名も「サムソナイト」に変更します。創業者のジェシー・シュウェイダー氏は1973年に会社を売却してしまいますが、「サムソナイト」の精神は受け継がれます。
創業以来大切にしている同社の行動規範に「己の欲する所を人に施せ」というものがあります。これは「新約聖書」に出てくるイエス・キリストの教えで、一般に「黄金律(Goleden rule)」と呼ばれています。
東洋でも似た言葉がありますね。孔子の教えをまとめた「論語」に、「己の欲せざる所は人に施すことなかれ」という言葉があり、日本人にとっては馴染みの深い言葉だと思います。西洋と東洋で積極的か消極的かという違いはありますが、同社では1910年の創業からこうした規範が連綿と受け継がれているのです。
聖書の黄金律「己の欲する所を人に施せ」
サムソナイトのマルチブランド戦略
サムソナイトは買収を通じて多くのブランドを保有し、ターゲットに合わせたブランドを投入するマルチブランド戦略を展開しています。1933年創業の老舗ブランド「American Tourister(アメリカンツーリスター)」を1993年に買収したほか、1877年創業の旅行かばんブランド「Hartmann(ハートマン)」も買収して傘下に収めています。
サムソナイトが展開するブランド 出所:同社決算報告書
このほか、高級ビジネスバッグの「TUMI(トゥミ)」、アウトドアブランドの「GREGORY(グレゴリー)」、バックパックの「HIGH SIERRA(ハイシエラ)などもサムソナイトの傘下です。サムソナイト傘下のブランドと知らずに使っているという人も多いのではないでしょうか?
Samsoniteの「o」の部分が「Samsonite Swirl(サムソナイト渦巻き)」
ちなみに、サムソナイトのロゴ「Samsonite Swirl(サムソナイト渦巻き)」が初めて登場したのは、創業者が事業を売却した1973年。4つの葉が渦を巻いたような形ですが、これは同社が重視する「デザイン」「開発」「市場調査」「宣伝」の4つを意味するとともに、同社が主な事業エリアとしている4つの大陸(アジア、欧州、北米、中南米)を示しているそうです。
まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄
今回見つけた身近な中国株銘柄はサムソナイト(01910)の1銘柄で、香港証券取引所に上場しています。なお、銘柄コードの1910は同社の創業年でもあります。覚えやすいですね。
【旅行かばんの世界的ブランド】米コロラド州で1910年に創業。旅行かばんの世界最大手で、スーツケースなどを中心にビジネスバッグやカジュアルバッグを生産する。高級ブランドの「サムソナイト」と中価格帯の「アメリカンツーリスター」のほか、「TUMI」「GREGORY」「HIGH SIERRA」などの複数ブランドを展開する。