中国株の銘柄選び

香港市場の主要銘柄:JDドットコム(3) 自前主義でライバルと差別化、顧客に喜びを届ける

世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。これまでテンセント(00700)、アリババ集団(09988)、中国建設銀行(00939)、チャイナ・モバイル(00941)、美団(03690)、HSBC(00005)、AIAグループ(01299)の7銘柄を紹介してきました。今回も時価総額8位のJDドットコム(09618)を紹介します。 


 


自前の物流網が最大の強み、自前主義でスピード配送を実現


JDドットコムの最大の強みは自前の物流網です。2023年2月時点で全国に1500以上の自社倉庫があり、その面積は約3000万平方メートルに上ります。東京ドーム556個分です。そして20万人超の配送員も自社で抱え、ほとんどの配送を自社でカバー。倉庫での作業はロボットの導入でほとんどが無人化され、人工知能(AI)やビッグデータを使って最適なルートが割り出されます。


出所:京東物流ホームページ


午前11時までに注文すれば当日中、午後11時までに注文すれば翌日午後3時までに届く「211限時達」のほか、注文後2時間以内に届ける「極速達」など、自前主義によって機動的でスピーディーな配送を実現しています。


このほか、高級ブランドや大切な人へのプレゼント用のハイエンド配送サービスとして、スーツ、ネクタイ、白手袋で正装した配達員が商品を届ける「京尊達(京東Luxury)」なども展開。こうした顧客体験によってライバルとの差別化を図っています。


 

写真は京尊達(京東Luxury)サービスのイメージ 出所:JDドットコム公式サイト


2007年に劉氏が自前の物流網構築を決断した際には社内から多くの反対意見が出ましたが、今ではJDドットコムにとって最大の強みとなっています。ライバルであるアリババ集団(09988)創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は当時、JDドットコムの自前主義について「EC会社が自社で配達員を大量に抱えるなんて馬鹿げている。こんなやり方は長続きしない。いずれ自滅する」と、あるインタビューで語っていましたが、この発言はいずれ撤回しないといけなくなるかもしれません。


ラストワンマイルでも無人化、ドローンや配送ロボットを投入


このほか、顧客に直接荷物を届ける「ラストワンマイル」でも、ドローン(小型無人機)や地上配送ロボット(UGV)による無人化が進められています。ドローンは2015年に開発に着手し、すでに江蘇省や陝西省などで商用化。UGV は多くの学生が寮生活をする大学などを中心に導入が進んでいます。


写真はJDの配送ロボットとドローン 出所:京東物流


ドローンにより道路が整備されていない農村部や山岳地・離島への配送が可能になり、UGVにより天候に左右されない安全な配送が実現します。そして何よりも無人化によって配送時間の短縮、配送コストの削減も実現することができます。JDドットコムは今後、配送コストの高い農村を中心にドローンによる配送を展開していく方針を示しています。また、2019年には楽天が JD ドットコムのドローンと UGV を導入し、各地で実証実験が行われました。


犬のキャラクター「JOY」、顧客に喜びを届ける


ちなみにJDドットコムのロゴに出てくる犬のイメージキャラクター「JOY(ジョイ)」は、2013年にECサイトを「京東商城(360buy.com)」から「京東(JD.com)」に変更したのに合わせて誕生しました。当初はメタリックの硬いイメージのデザインでしたが、2017年からは可愛らしいキャラクターにイメージチェンジしています。

 

JDドットコムのロゴの変遷 出所:広州三文品牌設計


犬は主人に忠実で正直、そして走るのも速いことから選ばれたようです。創業者の劉氏は、かつて中国でニセモノばかりが売られていた時代にも正規品だけを扱うという強い信念を持ち、顧客の信頼を非常に大切にしてきました。2004年にECサイトを立ち上げ、事業が軌道に乗るきっかけになったのも実は、「絶対にニセモノは売らない会社」という評判が掲示板で広がったからでした。


顧客に対して誠実に接し、商品を素早く顧客のもとへ届ける。気軽に安心して買い物を楽しんでもらい、顧客に喜びを届ける。イメージキャラクターの「JOY」は、そんなJDドットコムの企業理念を表しているのです。


喜びを届けるキャラクターのJOY


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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