中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回もファミリー型ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ」の店内で中国株銘柄を探してみました。
江蘇恒順醋業の「鎮江香酢」
今回見つけたのは、江蘇恒順醋業(ジャンスー・ホンシュン・ビネガー・インダストリー:600305)の「鎮江香酢」です。中華食材を扱っているお店では必ず置いてある中国の代表的なお酢で、山西省の「老陳酢」、福建省の「永春老酢」、四川省の「中保寧酢」と並んで「中国4大名酢」の一つに数えられています。
「鎮江香酢」は、江蘇省鎮江周辺で生産されるお酢で、主にもち米を原料としています。半年以上の長期間にわたって熟成・醗酵させるため、香りが豊かで、まろやかな酸味のある味に仕上がります。黒みがかった色をしていることから黒酢と呼ばれることもあります。アミノ酸などの栄養素を豊富に含み、食べ物の消化を助け、血糖値の上昇を緩やかにする効果があるとされます。
出所:鎮江市文化広電・観光局
日本では1990年代に黒酢を飲むと健康に良いということで、「黒酢ブーム」というのがありました。当時ハマった方もいるのではないでしょうか。中国では料理に幅広く使われ、スープに入れたり、酢豚や酢鶏のソースに使ったり、小籠包や水餃子のたれとして使ったりもします。
創業は1840年、中国を代表する老舗企業
江蘇恒順醋業の創業は1993年ですが、そのルーツは清朝時代の1840年。世界史で勉強したアヘン戦争の起きた年です。清朝政府が発行したという当時の営業許可証が、いまでも博物館に残っています。同じ食酢を中核とする日本のミツカンが江戸時代の1804年創業なので、ミツカンと比較すると歴史は浅いのですが、100年を超える老舗企業が少ない中国にあっては、非常に珍しい創業から200年に迫る「超」がつく老舗企業です。
清朝政府が発行した当時の営業許可証 出所:新浪財経 恒順往時
創業者の朱兆懐氏は、1801年に江蘇省鎮江の裕福な家庭に生まれ、1840年に「恒順」を立ち上げます。創業当時は、もち米を原料とした「百花酒」を工房で醸造し、店先で販売していました。「百花酒」は人気を集め、生産量も急拡大します。しかし、生産量が増えるに従い、生産工程で発生する大量の酒粕の処理が問題となります。そこで、朱兆懐氏は酒粕を原料にした新たな醸造方法を研究。籾殻(もみがら)を加えて撹拌し、半年以上熟成させて完成したのが「鎮江香酢」です。強い香りと独特の風味が加わり、その後1850年ごろからは香醋が事業の中心となっていきました。
仏教の経典『華厳経』の一節が社名の由来
ちなみに、社名の「恒順」は、仏教の経典である『華厳経(けごんきょう)』に記されている普賢菩薩の十願の一つ「恒順衆生(こうじゅんしゅじょう)」から名付けられました。「すべての衆生の救済が実現するように願う」ことを意味し、人々の善性や利益を尊重し、常にそれに沿って行動していこうという企業理念を表しています。
「恒順」はその後、「鎮江香酢」の代表的ブランドとして発展。1915年にサンフランシスコで開かれた万国博覧会では金賞を受賞。世界に「鎮江香酢」が知れ渡り、いまでは日本を含む世界100カ国以上に輸出。長年にわたり業界をリードし、いまでは中国最大の食酢メーカーとなっています。
同社の主力商品は伝統的な食酢の「鎮江香酢」ですが、「陳酢」「米酢」「白酢」などの食酢も製造。また、近年は老舗企業のブランド力を生かして、さまざまな調味料の分野に進出し、料理酒、醤油、ごま油、漬物、ケチャップ、鶏精(チキンエキス)、味精(うま味調味料)、豆板醤、火鍋の素、複合調味料など、商品ラインアップを拡充しています。
出所:江蘇恒順醋業のホームページ
中華食材の店などで「恒順」ブランドの調味料を見かけたら、まずはどんな味か試してみて、気に入れば企業を応援してみるのもいいでしょう。
まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄
今回見つけた身近な中国株銘柄は江蘇恒順醋業(600305)の1銘柄で、上海証券取引所に上場しています。
【中国の老舗調味料メーカー】清朝後期1840年創業の老舗調味料メーカー。酢、醤油、漬物、料理酒、複合調味料などの調味料を製造・販売する。酢では長年にわたり中国トップシェアを誇る。子会社を通じて、包装印刷、小売りなどにも従事。「恒順香酢」は、中国4大名酢の一つ「鎮江香酢」の代表ブランドとして知られる。筆頭株主は江蘇省鎮江市政府が全額出資する鎮江国有投資控股集団。