中国株の銘柄選び

意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(4) 周恩来が愛した大白兎のミルクキャンディー

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回もファミリー型ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ」の店内で中国株銘柄を探してみました。


大白兎のミルクキャンディー


今回見つけたのは、「大白兎(White Rabbit)」のミルクキャンディー。上海証券取引所に上場する上海梅林正広和(600073)傘下の上海冠生園食品が展開する、ミルクキャンディーのトップブランドです。上海冠生園食品の創業は1915年と古く、中国企業では非常に珍しい百年企業です。「大白兎」のミルクキャンディーは1959年に誕生し、中国人なら誰でも知っている国民的ブランドとなっています。


大白兎のミルクキャンディー 出所:上海梅林正広和


もともとはウサギではなくミッキーマウスだった!?


「大白兎」のキャンディーは、1943年に上海の「ABC糖果廠」という工場のオーナーだった馮伯鏞氏が、英国のミルクキャンディーを真似て作ったのが始まりです。当初は「ABC米老鼠糖(ミッキーマウス・キャンディー)」という商品名でした。英国や米国で人気があったキャラクターの「ミッキーマウス」をパッケージに採用します。安価で流行を取り入れたパッケージが人気を集め、「ABC米老鼠糖」は非常によく売れたそうです。


「ABC糖果廠」は1950年に国有化されて「愛民糖果廠」に名称を変え、後に冠生園に統合されます。「ABC米老鼠糖」は人気商品でしたが、「米老鼠(ミッキーマウス)」は西洋崇拝的な印象を与えるとの理由で、デザインと名称を変更します。そこで、上海美術設計公司に依頼して誕生したキャラクターが、この白ウサギの「大白兎」なのです。白くて甘く、栄養豊富なミルクキャンディーのイメージともぴったりです。


「ABC米老鼠糖」と「大白兎」 出所:冠生園食品


当時は物資の足りない貧しい時代でしたが、「大白兎」のキャンディーは飛ぶように売れます。供給が追い付かず、「大白兎」のキャンディーを買い求めようと店には長蛇の列ができます。何度も並んでいるうちに人々は顔見知りになり、なかには恋愛感情が芽生えて、結婚に至ったカップルもいたようです。


大白兎が中国外交を支えた!?


1972年に米国のニクソン大統領(当時)が訪中した際、ニクソン大統領が「大白兎」のミルクキャンディーを大変気に入り、それを知った周恩来首相(当時)がニクソン大統領にプレゼントしたというエピソードも残っています。周恩来首相自身も「大白兎」の大ファンで、執務室の机の上には常に「大白兎」のミルクキャンディーが置かれていました。周恩来首相は、「大白兎」のミルクキャンディーを、フルシチョフ氏やブレジネフ氏ら旧ソ連の歴代指導者にも贈ったといいます。「大白兎」は当時の中国外交を陰で支える役割を果たしていました。


 

周恩来が愛した「大白兎」 出所:冠生園食品


COACH×大白兎のコラボも


「大白兎」のミルクキャンディーは、誕生から60年以上が経っていますが、いまでも人気は衰えません。上海の定番土産として、中国人が真っ先に思いつくのは、この「大白兎」です。最近では、IP(知的財産)戦略にも力を入れており、他社とのコラボも目立ちます。2022年には米高級ファッションブランドの「COACH(コーチ)」とのコラボを実現。このほかにも、コカ・コーラ、GODIVA、SK-IIなどのブランドと次々と提携。新たな客層の取り込みを進めています。


 

COACHと大白兔のコラボ 出所:時尚周刊


「大白兎」のミルクキャンディーは、ドン・キホーテに限らず、日本の中華食材店などでよく見かけます。周恩来やニクソンが愛し、旧ソ連の歴代指導者が口にした(と思われる)「大白兎」を、ぜひ歴史の重みを感じながら味わってみてください。


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄は上海梅林正広和(600073)の1銘柄で、上海証券取引所にA株を上場しています。


【上海市政府系の食品メーカー】上海市政府系の国有食品大手、光明食品(集団)の傘下企業。主力製品は牛肉や羊肉で、豚肉事業では中国全土にコールド物流網を展開する。蜂蜜やミルクキャンディーでも高い市場シェアを誇り、「大白兎」「蘇食」「愛森」「梅林」「冠生園」などの複数ブランドを展開する。

この連載の一覧
二季報を使った銘柄選び(10) ランキングを使って銘柄を探す、「高配当利回り」はお宝銘柄の宝庫?10%を超える高配当銘柄がザクザク
二季報を使った銘柄選び(9) ランキングを使って銘柄を探す、「低PBR」だけで割安株を探してはいけない
二季報を使った銘柄選び(8) ランキングを使って銘柄を探す、「低PER」は投資指標の基本中の基本
二季報を使った銘柄選び(7) ランキングを使って銘柄を探す、経営効率の高い銘柄を探すなら「高ROE」
二季報を使った銘柄選び(6) ランキングを使って銘柄を探す、「時価総額」で企業規模の大きな会社を見つける
二季報を使った銘柄選び(5) 「業界マップ」を使って銘柄を見つける
二季報を使った銘柄選び(4) 証券会社の「注目銘柄ランキング」を参考にする
二季報を使った銘柄選び(3) 「業界天気予報」を使って業種を手掛かりに絞り込む
二季報を使った銘柄選び(2) 「中国株二季報」を目的に合わせて効率よく使いこなそう!
二季報を使った銘柄選び(1) 中国株の銘柄選びに欠かせない「中国株二季報」とは?
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(5) 香港版Suicaのオクトパス、世界に先駆けてFeliCaを採用
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(4) 香港鉄路はなにで儲けてる?鉄道会社だけど利益の柱は別にある
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(3) 海外売上比率5割超、香港の鉄道会社だけど海外で稼ぐ
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(2) 九広鉄路吸収で香港の鉄道独占事業者に、ディズニー線も運行
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(1) 公共輸送シェア約5割!香港市民の移動を支える鉄道銘柄
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(5) 広告重視の経営、どうする後継者問題?
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(4) 勝者無き戦い、「京華時報」との大バトル
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(3) 新参者のとった驚きの戦略とは!?訴訟に敗れて市場を奪う
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(2) 娃哈哈との最初の確執、亀とスッポンで成功後に飲料水業界に参入
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(1) 社名はダサそうだけど実はスゴい、ボトル入り飲料水の中国最大手
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(4) ロクシタン、南仏プロバンス発祥の自然派コスメブランド
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(8) バドワイザーAPAC、世界最大のビール会社のアジア部門
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(4) 23年に創立90周年、デジタル分野でも挑戦を続ける
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(3) 史上最大の1965年危機、ライバルの傘下に下る
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(2) 戦後の香港で再出発、香港の「超人」李嘉誠氏らを支援
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(1) 「永遠の成長」を目指す香港の華人系銀行大手
香港市場の主要銘柄:中電控股(3) 戦後復興と海外展開、SOCに守られた香港事業と不安定な豪州事業
香港市場の主要銘柄:中電控股(2) カドゥーリー家の夢と挫折、第二次大戦中は日本軍が接収
香港市場の主要銘柄:中電控股(1) 100年以上の歴史を誇る香港最大の電力会社、イラク系ユダヤ人が支配
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(3) 1910年創業の旅行かばんの王者「サムソナイト」、社名の由来となった「サムソン」とは?
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(2) ペニンシュラホテル、「東洋の貴婦人」と呼ばれた歴史と伝統の高級ホテル
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(1) シャングリラ・アジア、東京駅に隣接する「理想郷」
中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
意外と身近にある中国株、ショピングモールで探してみた(1) ポップマートのロボショップ、沼にハマる人続出の「盲盒」とは?
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(7) お湯要らず!「海底撈」のインスタント火鍋
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(6) 1840年創業の超老舗企業が生み出す「鎮江香酢」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(5) 不思議な味の中華ジャンクフード「辣条(ラーティアオ)」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(4) 周恩来が愛した大白兎のミルクキャンディー
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(3) 旺旺のミルクキャンディー、独特の企業文化と「黒皮精神」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(2) 洽洽食品のヒマワリの種と康師傅のカップ麺
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(1) 小米のスマートバンド、TCLのテレビ、ANKERのスマホアクセサリー
香港市場の主要銘柄:ネットイース(3) どん底から奇跡の大復活、ゲームを事業の柱に成長
香港市場の主要銘柄:ネットイース(2) ポータルサイト化へ戦略転換、ナスダックに上場
香港市場の主要銘柄:ネットイース(1) 中国のオンランゲーム大手、より簡単なネット接続を目指す
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(3) お米を使ったライスヌードル「米線」の「譚仔三哥」
香港市場の主要銘柄:CNOOC 中国最大のオフショア石油開発会社
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(2) 羊のしゃぶしゃぶ料理の「小肥羊」
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(1) 火鍋のトップブランド「海底撈」、抜群のエンタメ性が人気の秘密
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(3) 自前主義でライバルと差別化、顧客に喜びを届ける
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(2) 創業記念日に上場、618に強い思い入れ
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(1) 中国のネット通販大手、分かれ道となった20年前のSARS
香港市場の主要銘柄:AIAグループ(2) AIGから独立して香港市場に上場、ロゴに描かれている山は?
香港市場の主要銘柄:AIAグループ(1) アジア最大級の生命保険会社、1919年創業の保険代理店がルーツ
香港市場の主要銘柄:HSBC(2) 民間銀行だけど紙幣を発行、紙幣に描かれたライオンの正体は?
香港市場の主要銘柄:HSBC(1) 1865年に香港で創業、アヘンで成長した黒歴史も
意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(3) 白物家電編
中国株の銘柄選び:意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(2) テレビ編
中国株の銘柄選び:意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(1) スマホ、PC編
香港市場の主要銘柄:美団(3) 「アリババ系」から「テンセント系」へと転身、そして・・・
香港市場の主要銘柄:美団(2) アリババ集団との蜜月と決別、転機となった15年のある出来事
香港市場の主要銘柄:美団(1) ATMXの一角で時価総額5位、清華大卒の王興氏が北京で立ち上げ
香港市場の主要銘柄:チャイナ・モバイル 携帯契約数は世界1位、NTTドコモの11倍
香港市場の主要銘柄:中国建設銀行 4大国有商業銀行で時価総額最大、インフラ建設分野に強み
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(3) アリババは102年続く企業になれるのか?
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(2) イーベイとの争いを制して中国での覇権を握る
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(1) 落ちこぼれジャック・マーの逆襲
香港市場の主要銘柄:テンセント、目指すは「最も尊敬されるインターネット企業」

中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

池ヶ谷 典志の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております