中国株の銘柄選び

香港市場の主要銘柄:ネットイース(1) 中国のオンランゲーム大手、より簡単なネット接続を目指す

世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。これまでテンセント(00700)、アリババ集団(09988)、中国建設銀行(00939)、チャイナ・モバイル(00941)、美団(03690)、HSBC(00005)、AIAグループ(01299)、JDドットコム(09618)、CNOOC(00883)の9銘柄を紹介してきました。 今回は時価総額10位のネットイース(網易:09999)を紹介します。


 


中国のオンランゲーム大手、テンセントに次ぐ世界2位

 

出所:ネットイース(網易)のホームページ


ネットイース(網易:09999/NTES)は中国を代表するIT企業で、パソコン・スマホ向けのオンラインゲーム事業を中核に、中国生活用品通販サイトの「網易厳選」、ニュースサイトの「網易新聞」、電子メールサービスの「網易電子郵件」といった各種インターネットサービスを手掛ける会社です。日本で言うとディー・エヌ・エー(DeNA)やサイバーエージェントといったイメージでしょうか。


このほか、ニューヨーク証券取引所に上場する有道(DAO)を通じてオンライン教育事業、香港証券取引所に上場するクラウドミュージック(09899)を通じて音楽配信事業なども展開しています。米ナスダック取引所にも上場しており、アプリストアの消費支出ベースでテンセント(00700)に次ぐ世界2位の規模を誇ります。


 

創業者の丁磊氏は中国を代表する富豪、「ネット界の三銃士」


創業者の丁磊(ウィリアム・ディン)氏は、中国のインターネット黎明期をリードした中心人物として知られ、ともにポータルサイトで一時代を築いた新浪(SINA)の王志東氏、搜狐(SOHU)の張朝陽氏と並んで、「ネット界の三銃士」とも呼ばれています。


2003年のフォーブス中国長者番付でインターネット業界では初めて1位となり、直近2022年版では8位となっています。中国を代表する富豪の一人といえます。


 

左から新浪の王志東氏、搜狐の張朝陽氏、網易の丁磊氏 出所:36Kr


丁磊氏は大学でコンピューターに没頭


丁磊氏は1971年に浙江省寧波のエンジニアの家庭に生まれ、小さなころから父親の影響で電気製品が大好きだったようです。中学のときには自分で複雑なラジオを組み立て、ご近所のあいだでは「神童」と呼ばれます。高校のときにはプログラミング言語の「BASIC」も独学でマスターします。好きなものにのめり込むタイプだったようです。


一方、学校の成績はあまりよくなかったようで、先生によく叱られていました。大学は成都電訊工程学院(現成都電子科技大学)に滑り込みます。


本人はコンピューター関連の専攻を希望していましたが、父親から「パソコンは身体に有害だ」と強く反対され、仕方なく当時人気のなかった通信分野を専攻。大学では講義内容にあまり興味を持てず、コンピューター学科の講義に潜り込んだり、図書館で海外のコンピューター関連の書籍を読み漁ったりしていました。丁磊氏は後に大学時代を振り返り、ほとんどの時間を図書館と食堂で過ごしていたと語っています。食べるのも好きだったようです。


大学卒業後は寧波市電信局に就職、転職が人生の分岐点に


大学卒業後は地元の浙江省に戻り、1993年に国有の寧波市電信局にエンジニアとして就職します。自ら望んで選んだ仕事ではありませんでしたが、将来安泰の仕事に就いたということで、両親は非常に喜んだといいます。しかし、仕事は辛かったようで、提案がなかなか受け入れられないもどかしさも募り、上司や両親の大反対を押し切って2年で辞めてしまいます。丁磊氏は後に、このときの行動が人生の分岐点になったと語っています。


丁磊氏は寧波市電信局を辞めた後の1995年5月、改革開放に湧く広東省広州で米国のデータベースソフト大手サイベースの現地法人に入社。プログラマーとしてコンピューターに関わる仕事に携わります。しかし、わずか1年で退職。今度は同じく広州のインターネット・サービス・プロバイダーで働き始めます。しかし、ここでは業界内での競争激化や高額な通信費などで会社の業績が悪化。ついにはリストラに遭ってしまいます。職を失った丁磊氏は、自ら会社を立ち上げて起業することを決意します。


1997年にネットイースを立ち上げ、自分のやりたいことに挑戦


丁磊氏は1997年6月、50万元の資金を元手にパートナーとともに新会社「網易(NetEase:ネットイース)」を立ち上げます。社名には「もっと簡単にインターネットに接続できるように」という想いを込めました。


写真は若かった頃の丁磊氏 出所:21世紀経済報道


エアコンもない、広さわずか8平方メートルのオフィスを広州市内に借りて事業を開始。スタッフは4人だけ。会社を経営するという意識はなく、技術者らしく、「自分のやりたいことをしたい、という気持ちだけだった」といいます。亜熱帯に属する広州の夏は蒸し暑く、カビ臭い臭いが充満する部屋のなかで、汗だくになりながら必死に仕事に打ち込んだといいます。


次回もネットイースの続きです。お楽しみに。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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