世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。これまでテンセント(00700)、アリババ集団(09988)の2銘柄を紹介しました。今回は時価総額3位の中国建設銀行(00939)を紹介します。
中国建設銀行は総資産で世界2位の銀行
中国建設銀行は、中国を代表する国有の大手商業銀行で、主に個人向け銀行業務、法人向け銀行業務、トレジャリー業務などの銀行業務を手掛けています。2022年6月末時点の総資産は33兆6900億元(約682兆5600億円)に上り、中国では中国工商銀行(01398)に次ぐ2位。世界でも2位の規模を誇ります。下の表はS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスが発表している世界の銀行時価総額ランキングで、中国の4大国有商業銀行がそのまま世界のトップ4を占めています。日本の銀行で総資産最大の三菱UFJフィナンシャルグループが世界6位に入っていますが、中国建設銀行の総資産はその1.5倍の規模に上ります。
総資産は4大国有商業銀行で2位だけど時価総額トップの謎
中国建設銀行は総資産で中国工商銀行に次ぐ2位の規模ですが、時価総額では中国工商銀行を大きく上回り、香港に上場する銀行銘柄の中で1位となっています。総資産では1位が中国工商銀行、2位以下が中国建設銀行、中国農業銀行(01288)、中国銀行(03988)と続きますが、時価総額では1位が中国建設銀行、2位以下が中国工商銀行、中国銀行、中国農業銀行となっていて、総資産と時価総額の順位はリンクしていません。
実はこれ、香港市場で発行している株式数の違いが反映されているだけなのです。4大国有商業銀行はすべて香港証券取引所でH株、上海証券取引所でA株を発行しており、両方の市場に重複上場しています。A株とH株を合計した時価総額では総資産の順位通りになりますが、中国建設銀行は香港市場で発行しているH株の株式数が圧倒的に多いため、香港市場での時価総額が4大国有商業銀行の中でダントツのトップとなっているのです。逆に上海証券取引所に上場するA株は発行数が非常に少ないため、上海市場に上場するA株の時価総額は4大国有商業銀行の中では最低となっています。
どの市場でどれだけの株式を発行するかによって、これだけ大きな違いが出てくるのです。A株とH株の時価総額を合計すると、正確な規模感が見えてきます。
中国建設銀行は1954年に誕生、政府のインフラ融資の分配を担う
中国建設銀行が設立されたのは1954年で、政府機関である財政部傘下の銀行として誕生します。ゼロからのスタートではなく、当時中国で事業を展開していた旧交通銀行がベースとなっています。設立日は10月1日で、ちょうど中国建国5周年の記念日です。4大国有商業銀行の中では1912年に設立された中国銀行に次いで古く、翌年の1955年には中国農業銀行も誕生しています。このときの名称は「中国人民建設銀行」で、いまの名称に似ていますが、「中国」と「建設」のあいだに「人民」が入っています。
1954年といえば、建国からまだ間もない時期です。長年にわたる日中戦争や国共内戦で国土は疲弊していたため、建国後は復興に向けた大規模なインフラ建設が必要とされていました。中国建設銀行は、こうした国内のインフラ建設需要に応えるため、中長期のインフラ融資を担う政策的な専業銀行として設立されたのです。銀行とはいっても、当時は計画経済の時代なので、政府が決めた計画にもとづいて政府資金を各建設プロジェクトに分配して管理するという役割でした。
当時の中国人民建設銀行 引用:当代金融家
政策銀行の役割を国家開発銀行に引き継ぎ商業銀行として発展
1979年になると国務院直属の金融機関として再編され、このころから徐々に商業銀行的な役割を担っていくようになります。鄧小平氏が主導して改革開放政策が始まった時期です。1994年には政策銀行である国家開発銀行が設立され、中国人民建設銀行が担っていた政策銀行的な役割は国家開発銀行に引き継がれます。こうして1996年に行名から「人民」が消え、名称が「中国建設銀行」となります。
その後、中国建設銀行は2004年に株式会社への組織改革を行い、2005年10月に香港証券取引所、2007年9月に上海証券取引所にそれぞれ上場を果たします。
中国建設銀行は、こうした設立の背景もあり、いまでもインフラ建設分野に強みをもっているのです。このほかの国有銀行も、例えば中国工商銀行が商工業向け、中国農業銀行が農村・農業向け、中国銀行が外為業務を専門に担ってきた背景から、それぞれ得意分野が異なります。基本的には銀行の名称を見ただけで何となく特徴が分かりますので、銀行銘柄に投資するにあたっては、こうした特徴の違いを知っておくといいでしょう。