中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。
▼参考
中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
2013年の「標準門」事件で大打撃
2013年にはさらなる大事件が起きます。のちに「標準門」事件と呼ばれる、品質基準を巡る農夫山泉と北京の地方新聞「京華時報」との壮絶なバトルです。きっかけは、2013年3月に農夫山泉の未開封のボトル入り飲料水から黒い浮遊物が見つかったことでした。
「京華時報」は2013年4月から28日間にわたり、76本もの農夫山泉を攻撃する批判記事を掲載。「農夫山泉の水質基準は水道水にも劣る」などとし、農夫山泉に対する集中攻撃を始めたのです。北京の地方紙の報道とはいえ、新聞によるこれほどまでに過剰な集中批判は過去に例がありません。
当時の「京華時報」の紙面 出所:知乎
農夫山泉も必死に反論を試みますが、効果がありません。そもそも地方基準と国家基準が矛盾していたりして、水質基準の整合性が取れていないのです。メディアによる一方的な報道で次第に形勢が不利になっていきます。
「京華時報」の過剰報道への対応で業務にも影響が出始めます。報道が過熱するなか、ついには北京市当局も調査に入ります。そして、調査に入ったという事実を重く受け止め、事業への影響を考慮して北京工場を閉鎖。北京のウオーターサーバー用ボトル水市場からの撤退を発表したのです。農夫山泉にとっては苦渋の決断でした。
北京の地方紙「京華時報」との「標準門」事件は、勝者のない戦いだったと言われます。「京華時報」で農夫山泉を徹底的に攻撃した記者はその後、検察に連行されて取り調べを受けます。記者の取材先も取り調べを受け、裏で手を引いていたのはライバルの「華潤怡宝」だったのではないか?とのうわさもささやかれました。
「一匹狼」として、業界内に敵を多く作り過ぎたことが招いた結果といえるかもしれません。鍾会長はこの事件の後、ほとんどメディアに姿を現すことがなくなりました。農夫山泉と「京華時報」の双方にとって大きな痛手となった事件だったといえます。
飲料水以外の分野にも進出
農夫山泉は飲料水のイメージが強いかもしれませんが、飲料水以外の分野にも力を入れ、ボトル入り飲料水と非水飲料(ビバレッジ)を事業の両翼に位置づけています。
農夫山泉の飲料ブランド 出所:農夫山泉目論見書
2003年に果汁飲料の「農夫果園(Farmer’s Orchard)」を発売したのを皮切りに、翌2004年に機能性飲料の「尖叫(Scream)」、2010年に同じく機能性飲料の「力量帝維他命水(Victory Vitamin Water)」を市場に投入。茶飲料では、2011年に「東方樹葉(Oriental Leaf)」、2016年に「茶π(Tea π)」の販売を始めます。果汁飲料、機能性飲料、茶飲料は、国内でも競争が特に激しい分野の一つですが、いずれの分野でもシェア上位を奪っています。
農夫山泉はこのほかにも、コーヒー飲料や炭酸水、「東北香米」というブランドのお米、「175°」というブランドのオレンジやリンゴまで扱っています。これらの売上比率は低いのですが、決算報告書の「その他」という項目に分類されています。
売り上げ全体の4割ほどを非水飲料が占める
次回も農夫山泉の続きです。お楽しみに。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、2020年に香港証券取引所のメインボードに上場したボトル入り飲料水最大手の農夫山泉(09633)です。
【ボトル入り飲料水の中国最大手】「農夫山泉」ブランドでボトル入りのナチュラルミネラルウオーターの製造・販売を手掛ける。中国市場で長年にわたってシェアトップを維持。新疆ウイグル自治区や黒龍江省、浙江省、河北省、湖北省、四川省など全国12カ所に湧き水や深層水の水源を持ち、水源の近くに工場を保有する。茶飲料「東方樹葉」、機能性飲料「維他命水」、果汁飲料「農夫果園」なども生産。これら3種でもシェア上位。