中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。
▼参考
中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
香港の鉄道運営会社、公共輸送シェア約5割
今回紹介するのは香港の鉄道運営会社、香港鉄路(MTR:00066)です。香港の地下鉄や空港線、ライトレールなどの運行を手掛け、22年の総利用客数は延べ15億1800万人。平日の1日平均で445万人が利用し、香港の公共旅客輸送シェアは48.3%(22年)に上ります。香港での移動に必ずと言っていいほどお世話になる会社です。
また、傘下にSuica(スイカ)やPASMO(パスモ)のような交通系ICカード「八達通(オクトパス)」を発行・運営する会社を抱えているので、香港を旅行したことのある方にとってはお馴染みの銘柄かもしれません。
香港鉄路は香港の公共輸送シェアの5割を占める
1975年に条例に基づき創業
まずは香港鉄路の歴史を見ていきましょう。香港鉄路の創業は1975年、当時の香港政府の条例に基づいて設立されました。香港政府による100%出資で、設立当時の名称は「地下鉄路公司(Mass Transit Railway Corp.)」でした。
このときの香港はまだ中国返還前、英国による統治時代です。香港ではすでに鉄道やバス、トラム、フェリー、ケーブルカー、タクシーなどさまざまな交通機関が発達していましたが、中国からの人口流入などで香港の人口が急増するなか、政府による計画的な交通システムの策定・運営が求められたことが設立の背景にありました。
香港ではさまざまな交通機関が発達している
1980年代は開業ラッシュ、香港市民の移動が便利に
最初に建設されたのは、九龍地区の観塘(Kwun Tong)と石硤尾(Shek Kip Mei)を結ぶ観塘線で、1979年10月に開業しました。その後も路線建設は次々と進められていきます。1979年に石硤尾-尖沙咀(Tsim Sha Tsui)が開通したのに続き、翌年の1980年には海底トンネルを通じて香港島側の中環(Central)まで延伸します。
1980年代は建設ラッシュを迎えます。1982年にセン湾線のセン湾(Tsuen Wan)-太子(Prince Edward)、1985年に港島線の金鐘(Admiralty)-柴湾(Chai Wan)、1986年に港島線の上環(Sheung Wan)-中環、1989年に観塘-ソク魚湧(Quarry Bay)が次々と開業します。
10年間でこれだけの路線が開業するのですから、驚くべきペースです。特にビクトリア湾を海底トンネルでつないだ尖沙咀-中環、そしてビジネスエリアの香港島を走る港島線の開業は、九龍半島側と香港島側の移動の利便性を格段に高めることになりました。
1990年代にはランタオ島に鉄道を敷設、空港線も開業
1990年代に入ると、1998年に東涌線の香港(Hong Kong)-東涌(Tung Chung)が開業。東涌線の開業で初めてランタオ島に鉄道が開通します。1997年7月には香港が英国から中国に返還。英国統治時代が終わりを告げます。
翌年1998年には手狭になった九龍地区の啓徳空港(カイタック空港)に代わり、ランタオ島の北側に新たな香港国際空港が開港。これに合わせて空港線(エアポートエクスプレス)が開通します。空港線は香港島の香港駅から香港国際空港までをほぼ10分間隔で運行。渋滞に巻き込まれることなく市内と空港をわずか24分で移動することができます。香港を訪れたことのある人であれば、多くの人が利用している路線だと思います。
空港線の車体カラーは青 出所:香港鉄路HP
次回も香港鉄路の続きです。お楽しみに。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、2000年に香港証券取引所メインボードに上場した香港の鉄道運営会社、香港鉄路(00066)です。
【香港の鉄道運営会社】香港で地下鉄や空港線、ライトレールなどを運行する。中国本土(北京、深セン、杭州)や欧州(英国、スウェーデン)、豪州でも地下鉄・鉄道事業に参画する。07年に九広鉄路を吸収。香港の公共旅客輸送シェアは49.6%(23年1-5月)。沿線の不動産開発や駅構内・周辺施設の店舗賃貸収入も収益の柱。香港での22年の総利用客数は延べ15億1800万人で平日の平均で445万人。香港と広州を結ぶ「広深港高速鉄道」の香港区間も運営する。