中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(33) 個別銘柄の基本データを読み解く、民営企業の会長は個性派ぞろい

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


個別銘柄の基本データを正しく読み解く


中国株二季報の個別銘柄ページでは、ページの最上部と最下部に基本データを掲載しています。今回も最下部について説明していきます。


 

出所:中国株二季報2025年春号


前回は個別銘柄ページ最下部の基本データのうち、(1)住所(2)電話番号(3)URLについて説明しました。今回は(4)役員(5)上場年月――についてです。


国有企業の会長と民営企業の会長は違う?


(4)の役員については、A株企業は法定代表人、香港上場企業は基本的に董事長(会長)、もしくは最高経営責任者(CEO)を記載しています。前任者の辞任に伴って一時的に不在の場合は「―」としています。国有企業の会長人事は中国政府の意向が強く反映され、極端なケースではある日突然ライバル会社の会長との交代が発表されたり、退任が発表されたかと思うと中央政府の要職に就任する、といったケースもあります。大手国有企業の会長ともなると、中央政府の「大臣級ポスト」とみなされることがあります。


一方、民営企業の会長は非常に個性豊かな面々が揃っています。比較的歴史の浅い企業が多いため、創業者がそのまま会長というケースが少なくありません。貧しい農村から一代で莫大な財産を築いた「チャイナドリーム」を実現した経営者もいます。テンセント(00700)の馬化騰(ポニー・マー)会長や農夫山泉(09633)の鍾センセン会長、ネットイース(09999)の丁磊(ウィリアム・ディン)会長などは中国の富豪ランキングの常連です。


出所:胡潤百富

 

このほか、中国のスマートフォン大手、小米集団(01810)の雷軍会長も中国を代表するカリスマ経営者の一人です。キングソフト(03888)や金山雲(03896)の会長も兼任し、シリアルアントレプレナー(連続起業家)であると同時に、ネット上で絶大な影響力を持つインフルエンサーでもあります。SNSでは連日、会長自ら積極的に会社の情報発信を行っています。SNSを見ていると会社のカラーや社風が見えてきます。


上場直後の銘柄は勢いのある銘柄が多い


(5)上場年月は取引所に上場した年月です。中小型株市場のGEMからメインボードに指定替えした場合は、GEMに最初に上場した年月を記載しています。香港を代表する大企業である長江和記実業(CKハチソン:00001)や新鴻基地産(サンフンカイ・プロパティーズ:00016)、新世界発展(ニューワールド・デベロプメント:00017)はいずれも、上場基準が緩和されて上場ブームが沸き起こった1972年の上場です。


青島ビール(00168)が1993年に中国本土登記のH株銘柄として初めて香港市場に上場すると、その後に中国企業の香港上場ブームが起き、2000年代には中国の大型国有企業の香港上場が相次ぎました。中国の国有商業銀行である中国建設銀行(00939)、中国工商銀行(01398)、中国銀行(03988)はいずれも2005-06年に香港への上場を果たしています。


上場年月が古い会社は一般的に、◇業界内でのポジションが確立している場合が多く、収益基盤が安定している◇長期的な実績や信頼感があり、投資家からの支持を受けやすい――といった特徴があります。多くの銘柄で配当も安定して実施しています。


一方、上場したばかりの会社には勢いがあります。資金需要が旺盛なため無配の銘柄も多く、上場時点で赤字であることも珍しくありませんが、売上高や利益が急成長している銘柄が多いのが特徴です。話題のIPO銘柄については、中国株二季報でも上場直後から掲載するようにしています。気になるIPO銘柄があればぜひチェックしてみてください。


この連載の一覧
二季報を使った銘柄選び(34) 個別銘柄の基本データを読み解く、中国企業の決算期は基本12月
二季報を使った銘柄選び(33) 個別銘柄の基本データを読み解く、民営企業の会長は個性派ぞろい
二季報を使った銘柄選び(32) 個別銘柄の基本データを読み解く、ウェブサイトの更新がないような企業は避けよう
二季報を使った銘柄選び(31) 個別銘柄の基本データを知る、QRコードで最新株価を必ず確認
二季報を使った銘柄選び(30) 市場・属性から銘柄を探す、属性ごとの特徴の違いは知っておこう
二季報を使った銘柄選び(29) 業種から銘柄を見つけてみよう、中国株二季報では全銘柄を32の業種に区分
二季報を使った銘柄選び(28) 銘柄を探すに当たって銘柄コードのルールくらいは知っておこう
二季報を使った銘柄選び(27) 個別銘柄ページの構成を知って二季報を使いこなそう
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(7) 積極的な提携と買収で事業領域を拡大、再びトップに立つ日は来るか?
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(6) メラミン事件後は再び追う立場に、広告を巡り激しいバトル
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(5) 業界を揺るがした08年のメラミン事件、巨額の赤字で経営危機に
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(4) 蒙牛の快進撃続く、積極的な広告戦略で伊利を抜き業界トップに
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(3) 伊利との決別と蒙牛の創業、伊利を追放された勢力が集結
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(2) 創業者の波乱の人生、生後まもなく両親に50元で売られる
香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(1) 世界9位の乳製品会社、国内首位の座を巡ってライバル伊利と激しい争い
二季報を使った銘柄選び(26) 香港全上場企業一覧、時間のない人はサラッと業績だけでもチェック
香港市場の主要銘柄:トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン 誕生のきっかけはアジア通貨危機でのソロスとの対決
二季報を使った銘柄選び(25) 主要指数の推移で投資リターンを高める
二季報を使った銘柄選び(24) 銘柄選びに困ったときは個別銘柄ではなくETFという選択肢も
二季報を使った銘柄選び(23) スクリーニングを使って銘柄を探す、「総合評価」の活用法を紹介
二季報を使った銘柄選び(22) スクリーニングを使って銘柄を探す、「安定性」の活用法を紹介
二季報を使った銘柄選び(21) スクリーニングを使って銘柄を探す、「成長性」の活用法を紹介
二季報を使った銘柄選び(20) スクリーニングを使って銘柄を探す、「割安株」の活用法を紹介
二季報を使った銘柄選び(19) 「粗利益率」ランキングで高い競争力を持った高収益企業を探す
二季報を使った銘柄選び(18) 「現金同等物」ランキングは安定性を重視した投資家向けの指標、上位には高配当利回り銘柄も
二季報を使った銘柄選び(17) 「低額銘柄」ランキングの「お手頃」銘柄で中国株投資をスタート
二季報を使った銘柄選び(16) 「高額銘柄」ランキングで人気銘柄を発掘、取引単位引き下げや株式分割を実施する銘柄も
二季報を使った銘柄選び(15) 「年間上昇率」と「年間下落率」のランキングで勢いのある銘柄やダメ銘柄を見つける
二季報を使った銘柄選び(14) 「株主資本比率」のランキングで安全性をチェック
二季報を使った銘柄選び(13) 「流動比率」と「低負債比率」のランキングは単独で使ってはいけない
二季報を使った銘柄選び(12) 「増益率」ランキングを活用して成長性の高い銘柄を探す
二季報を使った銘柄選び(11) ランキングを使って銘柄を探す、「業績増額修正」と「業績減額修正」で予想の変化をつかむ
二季報を使った銘柄選び(10) ランキングを使って銘柄を探す、「高配当利回り」はお宝銘柄の宝庫?10%を超える高配当銘柄がザクザク
二季報を使った銘柄選び(9) ランキングを使って銘柄を探す、「低PBR」だけで割安株を探してはいけない
二季報を使った銘柄選び(8) ランキングを使って銘柄を探す、「低PER」は投資指標の基本中の基本
二季報を使った銘柄選び(7) ランキングを使って銘柄を探す、経営効率の高い銘柄を探すなら「高ROE」
二季報を使った銘柄選び(6) ランキングを使って銘柄を探す、「時価総額」で企業規模の大きな会社を見つける
二季報を使った銘柄選び(5) 「業界マップ」を使って銘柄を見つける
二季報を使った銘柄選び(4) 証券会社の「注目銘柄ランキング」を参考にする
二季報を使った銘柄選び(3) 「業界天気予報」を使って業種を手掛かりに絞り込む
二季報を使った銘柄選び(2) 「中国株二季報」を目的に合わせて効率よく使いこなそう!
二季報を使った銘柄選び(1) 中国株の銘柄選びに欠かせない「中国株二季報」とは?
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(5) 香港版Suicaのオクトパス、世界に先駆けてFeliCaを採用
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(4) 香港鉄路はなにで儲けてる?鉄道会社だけど利益の柱は別にある
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(3) 海外売上比率5割超、香港の鉄道会社だけど海外で稼ぐ
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(2) 九広鉄路吸収で香港の鉄道独占事業者に、ディズニー線も運行
香港市場の主要銘柄:香港鉄路(1) 公共輸送シェア約5割!香港市民の移動を支える鉄道銘柄
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(5) 広告重視の経営、どうする後継者問題?
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(4) 勝者無き戦い、「京華時報」との大バトル
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(3) 新参者のとった驚きの戦略とは!?訴訟に敗れて市場を奪う
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(2) 娃哈哈との最初の確執、亀とスッポンで成功後に飲料水業界に参入
香港市場の主要銘柄:農夫山泉(1) 社名はダサそうだけど実はスゴい、ボトル入り飲料水の中国最大手
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(4) ロクシタン、南仏プロバンス発祥の自然派コスメブランド
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(8) バドワイザーAPAC、世界最大のビール会社のアジア部門
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(4) 23年に創立90周年、デジタル分野でも挑戦を続ける
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(3) 史上最大の1965年危機、ライバルの傘下に下る
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(2) 戦後の香港で再出発、香港の「超人」李嘉誠氏らを支援
香港市場の主要銘柄:ハンセン銀行(1) 「永遠の成長」を目指す香港の華人系銀行大手
香港市場の主要銘柄:中電控股(3) 戦後復興と海外展開、SOCに守られた香港事業と不安定な豪州事業
香港市場の主要銘柄:中電控股(2) カドゥーリー家の夢と挫折、第二次大戦中は日本軍が接収
香港市場の主要銘柄:中電控股(1) 100年以上の歴史を誇る香港最大の電力会社、イラク系ユダヤ人が支配
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(3) 1910年創業の旅行かばんの王者「サムソナイト」、社名の由来となった「サムソン」とは?
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(2) ペニンシュラホテル、「東洋の貴婦人」と呼ばれた歴史と伝統の高級ホテル
意外と身近にある中国株、街中で探してみた(1) シャングリラ・アジア、東京駅に隣接する「理想郷」
中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
意外と身近にある中国株、ショピングモールで探してみた(1) ポップマートのロボショップ、沼にハマる人続出の「盲盒」とは?
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(7) お湯要らず!「海底撈」のインスタント火鍋
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(6) 1840年創業の超老舗企業が生み出す「鎮江香酢」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(5) 不思議な味の中華ジャンクフード「辣条(ラーティアオ)」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(4) 周恩来が愛した大白兎のミルクキャンディー
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(3) 旺旺のミルクキャンディー、独特の企業文化と「黒皮精神」
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(2) 洽洽食品のヒマワリの種と康師傅のカップ麺
意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(1) 小米のスマートバンド、TCLのテレビ、ANKERのスマホアクセサリー
香港市場の主要銘柄:ネットイース(3) どん底から奇跡の大復活、ゲームを事業の柱に成長
香港市場の主要銘柄:ネットイース(2) ポータルサイト化へ戦略転換、ナスダックに上場
香港市場の主要銘柄:ネットイース(1) 中国のオンランゲーム大手、より簡単なネット接続を目指す
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(3) お米を使ったライスヌードル「米線」の「譚仔三哥」
香港市場の主要銘柄:CNOOC 中国最大のオフショア石油開発会社
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(2) 羊のしゃぶしゃぶ料理の「小肥羊」
意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(1) 火鍋のトップブランド「海底撈」、抜群のエンタメ性が人気の秘密
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(3) 自前主義でライバルと差別化、顧客に喜びを届ける
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(2) 創業記念日に上場、618に強い思い入れ
香港市場の主要銘柄:JDドットコム(1) 中国のネット通販大手、分かれ道となった20年前のSARS
香港市場の主要銘柄:AIAグループ(2) AIGから独立して香港市場に上場、ロゴに描かれている山は?
香港市場の主要銘柄:AIAグループ(1) アジア最大級の生命保険会社、1919年創業の保険代理店がルーツ
香港市場の主要銘柄:HSBC(2) 民間銀行だけど紙幣を発行、紙幣に描かれたライオンの正体は?
香港市場の主要銘柄:HSBC(1) 1865年に香港で創業、アヘンで成長した黒歴史も
意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(3) 白物家電編
中国株の銘柄選び:意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(2) テレビ編
中国株の銘柄選び:意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(1) スマホ、PC編
香港市場の主要銘柄:美団(3) 「アリババ系」から「テンセント系」へと転身、そして・・・
香港市場の主要銘柄:美団(2) アリババ集団との蜜月と決別、転機となった15年のある出来事
香港市場の主要銘柄:美団(1) ATMXの一角で時価総額5位、清華大卒の王興氏が北京で立ち上げ
香港市場の主要銘柄:チャイナ・モバイル 携帯契約数は世界1位、NTTドコモの11倍
香港市場の主要銘柄:中国建設銀行 4大国有商業銀行で時価総額最大、インフラ建設分野に強み
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(3) アリババは102年続く企業になれるのか?
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(2) イーベイとの争いを制して中国での覇権を握る
香港市場の主要銘柄:アリババ集団(1) 落ちこぼれジャック・マーの逆襲
香港市場の主要銘柄:テンセント、目指すは「最も尊敬されるインターネット企業」

中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

池ヶ谷 典志の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております