中国株の銘柄選び

意外と身近にある中国株、ドンキの店内で探してみた(7) お湯要らず!「海底撈」のインスタント火鍋

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回もファミリー型ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ」の店内で中国株銘柄を探してみました。


海底撈のインスタント火鍋


「海底撈」のインスタント火鍋


今回見つけたのは、「海底撈」のインスタント火鍋です。「海底撈」は香港証券取引所に上場する海底撈国際(06862)が展開する中国最大の火鍋料理チェーンのブランド名。今回見つけたのは、この火鍋料理のインスタント食品版です。このインスタント食品を製造・販売しているは、同じく香港証券取引所に上場する頤海国際(イーハイ・インターナショナル:01579)です。


このインスタント火鍋の特徴は、火を使わずに熱々の火鍋が食べられること。カップ麺などのインスタント食品は沸騰したお湯を使いますが、このインスタント火鍋は水を注ぐだけ。一体どういう仕組みになっているのでしょうか?


今回購入したのは「四川風即席火鍋」の麻辣嫩肉味(マーラービーフ味)。値段は税抜きで980円。インスタント食品としては結構な値段です。まずはずっしりと重いインスタント火鍋の中身を開けてみます。中に入っているのは、春雨、野菜パック、ビーフパック、鍋の素(マーラー:麻辣)、食品用発熱パック(ヒートパック)、割り箸・スプーン・爪楊枝のセットです。割り箸やスプーンも入っているので、水さえ手に入れば、外でも何とかなりそうです。


インスタント火鍋の中身はこんな感じ


パッケージに書かれた調理方法に従って順に準備していきます。調理方法は日本語で書かれてれているので、初めての人でも安心です。


調理方法は日本語で書かれているので安心


まずは春雨、野菜パック、ビーフパック、鍋の素を順番に白いトレーに入れ、トレーの内側に記してある注水線まで水を注ぎます。見た目、まあまあ美味しそうです。


具材を入れ水を注いだところ


次に黒いトレーの注水線まで水を注ぎ、そこにビニールから取り出した食品用発熱パック(ヒートパック)をセットします。


発熱パックを黒いトレーにセット


発熱パックは水に入れてもすぐには反応しません。黒いトレーに、先ほど具材を入れた白いトレーをセットし、上から黒い蓋(ふた)をしっかりと閉めます。


黒いトレーに白のトレーをセット


すると突然、蓋の上に開いた穴から勢いよく蒸気が出てきました。しっかり発熱しているようです。その状態で15分間待ちます。カップ麺の3分間に慣れた日本人にとって15分はとても長く感じます。パッケージには、屋内で使用する場合は十分な換気を行い、やけどに注意するよう書いてあります。黒いトレーを触ってみると、相当熱くなっています。念のため鍋敷きを用意するのがよさそうです。


蓋を閉めて15分待ちます


15分近く経つと湯気も出てこなくなりました。どうやら発熱パックの発熱時間が切れたようです。そして、15分経過したところで熱々のインスタント火鍋の完成です。蓋を開けると黒い蓋の内側についた水蒸気がこぼれ落ちます。部屋全体に調味料の臭いが広がります。ガチ中華の臭いです。早速食べてみます。ゲホっ、か、辛い・・・。麻辣(マーラー)が喉に突き刺さります。辛いものが苦手な人は白ごはんも用意しておくのがいいでしょう。


春雨の箸上げ


どうしても辛さが気になってしまいますが、春雨に牛肉、じゃがいも、たけのこ、とうもろこし、黒きくらげ、れんこん・・・、どの食材も味が染みてやわらかく、思っていた以上の味です。具材の容量は、野菜パック、ビーフパック、鍋の素、春雨を合わせ全部で380グラム。日本で売られている大盛りカップ麺が100グラム前後であることを考えると、一人前としては十分すぎる量です。この1食で847キロカロリーあります。2、3人で一緒に食べてもいいかもしれません。


今回は、マーラービーフ味(麻辣嫩肉味)を購入しましたが、このほかにも、「ビーフトマト味」や「ピリ辛野菜味」も売られていました。水だけで作れるので、災害時などの非常食としても重宝するかもしれません。


お湯を使うインスタント食品としては、同じく「海底撈」ブランドの「混ぜ混ぜメシ」も売られていました。こちらはオーツ麦入りの混ぜチャーハン。火鍋のように辛くはないので、辛いのが苦手な人にはオススメです。


写真は「混ぜ混ぜメシ」


頤海国際は海底撈の成都支社として発足


海底撈ブランドの調味料など 出所:頤海国際のホームページ


頤海国際についても少し紹介を加えておきます。頤海国際は2013年にケイマンに登記された会社ですが、もともとは2005年に海底撈の成都支社として発足したのがルーツです。当初は、完全に海底撈の内部組織として、海底撈向けに火鍋スープの素を製造していました。


しかし、2007年ごろから火鍋用調味料を代理店経由でスーパーや食材店向けに販売し始め、徐々に外部販売を拡大していきます。そして、2014年の組織再編を経て、2016年に香港証券取引所に上場。上場前の2013-15年ごろは海底撈向けの売り上げが全体の半分以上を占めていましたが、2022年の段階でその割合は24%にまで低下しています。


頤海国際はこれまで、海底撈の成長に合わせて拡大を続けてきましたが、最近では天猫や京東などでのネット販売を強化したり、日本を含む海外向けの販売を強化したりするなど、海底撈に頼らずとも成長できる土台を築きつつあります。


頤海国際のインスタント火鍋、いかがだったでしょうか?気軽に食べられるガチ中華として、いずれ日本でもブームがくるかもしれませんね。


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄は頤海国際(01579)の1銘柄で、香港証券取引所に上場しています。このほか、関連銘柄である海底撈国際(06862)と特海国際(09658)の2銘柄も香港証券取引所に上場しています。海底撈国際と特海国際は、過去のコラムで取り上げているので、以下のコラムをご参照ください。


▼参考

● 意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(1) 火鍋編(海底撈)



 【中国の鍋用調味料メーカー】中国で火鍋用のスープの素、つけダレなどの調味料を生産する。火鍋料理の人気レストランチェーン「海底撈」を展開する海底撈国際(06862)や特海国際(09658)に調味料を供給するほか、「海底撈」ブランドの調味料やインスタント食品を市販。「哇哦(ワオ)」ブランドでスナック菓子の製造・販売も手掛ける。四川省成都、河南省鄭州、河北省覇州などに生産拠点を置く。


【中国の火鍋料理チェーン】「海底撈」ブランドで火鍋料理レストランをチェーン展開する。1994年に四川省簡陽市に1号店を開店したのを皮切りに店舗を増やし、22年末時点の店舗数は1371店(中国本土で1349店、香港・マカオ・台湾で22店)。出前や調味料・食材販売も手掛ける。22年12月、資金調達を伴わない紹介形式で海外飲食店事業を展開する特海国際(09658)を分離上場。海外事業は非継続事業となった。


【海底撈の海外事業】「海底撈」ブランドで火鍋料理レストランチェーンを運営する海底撈国際(06862)から分離し、資金調達を伴わない紹介形式で上場。海外で火鍋料理レストランチェーンを運営する。12年にシンガポールに出店したのを皮切りに22年12月時点でタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、日本、韓国、米国、カナダ、英国、豪州に計110店を展開する。「海底撈」は中国発の中国料理レストランでは国際市場での売上高で最大手(21年)。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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