世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。これまでテンセント(00700)、アリババ集団(09988)、中国建設銀行(00939)、チャイナ・モバイル(00941)、美団(03690)、HSBC(00005)、AIAグループ(01299)の7銘柄を紹介してきました。今回は前回に続き、時価総額8位のJDドットコム(09618)を紹介します。
04年に京東多媒体網を立ち上げ、掲示板への書き込みで集客
重症急性呼吸器症候群(SARS)をきっかけにオンラインのEC事業に戦略転換したJDドットコム(09618)は、2004年にネット通販サイトの京東多媒体網(360buy.com)を立ち上げます。もともと実店舗で販売していたものをオンランで販売するという発想だったため、アマゾンのように自社で商品を仕入れて販売する直販型のビジネスモデルを採用します。しかし、サイト立ち上げ当初、ネット上に出回っている無料プログラムを利用して制作したため、すぐにサイトをハッキングされてしまいます。サイトを乗っ取られ、サイト上には大きく「京東のサイト管理者は大バカモノ」と落書きされてしまいました。当初は失敗が続きます。
勝手が分からず手探り状態が続きますが、ネットワーク管理者を採用するなどしてセキュリティーの強化を進めます。ネット上の掲示板への書き込みなどを通じて地道な集客を図り、徐々に注文が入り始めると劉氏はEC事業に手応えをつかみます。翌年2005年には毎日500件余りの注文が安定して入るようになっていました。
京東多媒体網のオフィス受付 出所:金融界
07年に大きな決断、自前の物流ネットワークの構築に着手
2007年には1日当たりの注文件数が3000件を突破。事業は急成長します。そこで当時、顧客からの苦情の大半を占めていた物流問題の改革に乗り出し、自社の物流ネットワークの構築に着手。北京、上海、広州に5万平方メートルを超える物流拠点を建設します。東京ドームとほぼ同じくらいの広さです。これにより他社が真似できない迅速な配送が可能になります。商品が途中でなくなってしまったり、破損してしまったりということも減ります。そして、ベンチャーキャピタルの今日資本(キャピタルトゥデー)からは約1000万米ドルの出資を獲得。ECサイトも「京東商城」に名称変更し、取り扱い商品も日用品からテレビや冷蔵庫、エアコンなど大型の家電製品に拡大し、「専門店」から「総合店」を目指すようになります。
2010年には顧客の多様な需要に応えるため、第三者が出店するモール型のサービスも開始します。2013年には「京東商城(360buy.com)」から「京東(JD.com)」にECサイトの名称を変更。このころには登録ユーザー数が1億人を突破します。
14年にテンセントと戦略提携、20年に香港市場に重複上場
2014年には中国のIT大手テンセント(00700)との戦略提携を発表。ライバルであるアリババ集団(09988)と激しい陣営争いをしていたテンセント側に加わり、テンセントのスーパーアプリ「微信(WeChat)」を通じて利用者が急増します。そして、2014年5月、中国の総合ネット通販会社としては初めて米ナスダック市場に上場。2020年6月には香港市場への重複上場を果たします。香港での新規株式公開(IPO)による調達資金額は300億HKドルを超え、応募倍率は179倍に達する人気ぶりでした。
写真は2020年の香港上場セレモニーの様子 出所:投資界
香港市場に上場した日は創業記念日でもある6月18日。香港市場での銘柄コード(09618)にも、しっかり「618」という数字が入っています。ちなみに、2020年12月に上場した医薬品のネット通販を手掛ける京東健康(06618)、2021年5月に上場した物流事業を手掛ける京東物流(02618)の銘柄コードにも「618」が入っています。銘柄コードを覚えやすくていいですよね。
618へのこだわり、創業記念日に大セールを展開
写真は2022年の取引額 出所:JDドットコム公式サイト
銘柄コードだけ見ても創業記念日に強い思い入れがあることが分かりますが、JDドットコムは、6月18日の創業日に合わせて毎年大規模なセールも実施しています。アリババ集団が11月11日の「独身の日」に行っている大規模セールは日本でも報道を通じて大きな話題となりますが、こちらも負けてはいません。当初はJDドットコム単独で実施していましたが、いまでは多くのEC事業者が参入して一大ネットセールになっています。
毎年、セール期間は異なりますが、2022年は5月31日から6月18日の期間中、総取引額が3793億元超に達し、過去最高を更新しました。取引額は年々増え続けています。
次回もJDドットコムの続きです。お楽しみに。