中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(16) 「高額銘柄」ランキングで人気銘柄を発掘、取引単位引き下げや株式分割を実施する銘柄も

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「高額銘柄」のランキング活用法を紹介します。


「高額銘柄」のランキングで最低売買価格をチェック


「高額銘柄」のランキングは、最低取引単位の株を購入するのに必要な資金である「最低売買価格(=最低購入額)」が大きな銘柄のランキングです。株価は1株当たりの金額ですが、必ずしもその金額で購入できるわけではありません。銘柄ごとに「最低何株から買うことができるか」という取引単位(単元株)が決まっていて、最低売買価格は、株価×取引単位×日本円換算レートで算出します。


 


香港市場の場合、株価は香港ドルですが、本土市場の場合はA株が人民元、B株は上海が米ドル、深センが香港ドルとバラバラです。そのため、ランキングでは基準を日本円に統一しています。取引単位(=単元株)は、香港市場は銘柄によって異なり、1株から80万株までとさまざまです。ETFは1株から500株と取引単位が比較的小さくなっていますが、通常銘柄であれば1000株や2000株のケースが最も多くなっています。本土市場はすべて100株で統一されています。


「高額銘柄」ランキング、人気銘柄は高額化する傾向に


具体的に「中国株二季報」2024年夏秋号で高額銘柄を見てみると、上海証券取引所に上場する大手白酒メーカーの貴州茅台酒(600519)が1位で、投資するには最低でも日本円換算で約375万円が必要になります。しかも、これに加えて取引にあたっては手数料もかかりますので、ハードルはさらに高くなります。資金に余裕があれば問題ありませんが、中国株をこれから始めようというビギナーにとって、資金面では少し不向きな銘柄といえるかもしれません。


 


日本人投資家に人気のあるビール銘柄の青島ビール(00168)や、電気自動車・バッテリーのBYD(01211)も、最低売買価格は200万円を超えています。買いたいと思っても投資資金が足りなくて断念・・・というケースがあるかもしれません。人気のある銘柄は、株価もどんどん上昇していくため、最低売買価格も高額化しやすくなっています。高額銘柄ランキングの上位銘柄は人気銘柄の証ともいえます。


高額銘柄の中には最低売買価格を引き下げる銘柄も


人気はあるけど手を出しにくい――。最低売買価格が高くなるのを放っておくと、投資できる人がどんどん減っていき、流動性が低くなってしまいます。そうなると、株価は適正な価格がつきにくくなります。こうした事態を避けるため、会社側が株式分割をしたり、取引単位を引き下げたりして、最低売買価格の引き下げを行うことがあります。


例えば、中国株を代表する人気銘柄の一つであるテンセント(00700)は、2007年に取引単位を1000株から200株に引き下げたほか、2009年にも200株から100株に引き下げるなど、最低売買価格の引き下げを実施しています。その後、2014年には1:5の株式分割も実施。これにより、取引単位を変更することなく最低投資額が5分の1に下がり、個人投資家にとっては、株式分割前に比べて格段に投資しやすくなりました。テンセントの最低投資額は約74万円ですが、もし取引単位の引き下げや株式分割をしていなかったら、最低でもおよそ3700万円の資金が必要だった計算になります。個人投資家には厳しい金額ですね。



このように、最低売買価格が高くなりすぎた銘柄は、最低投資額を引き下げて個人投資家が取引に参加しやすくする措置を行うことがあります。そうすると、今まで買いたくても買えなかったような投資家も取引に参加できるようになり、結果として株価の上昇につながるということがあります。


高額銘柄の上位に出てくるような銘柄は、予算オーバーで買えないという人も多いとは思いますが、中にはこうしたチャンスもあるということを頭の片隅に置いておくといいでしょう。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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