中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回は街中の飲食店で中国株銘柄を探してみました。
火鍋のトップブランド「海底撈」、日本では12店舗を展開
出所:海底撈の目論見書
まずは中国で火鍋料理店をチェーン展開する海底撈です。火鍋というのは、日本でいうところのしゃぶしゃぶのような中国を代表する鍋料理で、1700年以上の歴史があると言われています。海底撈はその火鍋で中国トップシェアを誇る会社です。
1994年に四川省簡陽に1号店を開店したのを皮切りに店舗数を増やし、2022年6月末時点の店舗数は中国で1332店、海外で103店に上ります。海外では2012年に初めてシンガポール進出を果たし、日本では2015年に1号店となる池袋店をオープン。2017年に新宿店、2018年に千葉・海浜幕張店、大阪・心斎橋店と次々と店舗を増やし、2023年2月時点で12店舗を展開しています。
店内では中国語が飛び交い、料理も日本風にアレンジしてない「ガチ中華」のお店として紹介されることもあります。海外で展開する中華料理チェーンとしては米国のパンダ・レストラン・グループ、P.F.チャングスに次ぐ世界3位の規模となっています。
海底撈の日本進出地域(2023年2月時点)
日本国内の店舗は、東京5、神奈川3、千葉1、大阪1、兵庫1、福岡1となっていて、少し関東に集中していますが、実際にお店に行ったことがあるという人もいるのではないでしょうか。(最新の店舗情報はこちら)
海底撈の人気の秘密はエンタメ性にあります。誕生日や記念日には店員さんたちが歌で祝ってくれたり、プレゼントを渡してくれたりします。各国の文化に合わせ、例えば米国ではイースターやハロウィンのイベント、中華系の人が多いインドネシアでは旧正月のイベントなども企画されています。韓国では大学入試当日、学生に無料でお餅を振る舞い、合格を祈願するそうです。
店員さんたちが一緒に誕生日を祝ってくれる
エンタメ性は抜群、さまざまなサービスで中国式のおもてなし
待ち時間にも工夫があり、退屈な待ち時間を利用して無料のネイルサービスを利用することができます。日本ではなかなかお目にかかれないサービスです。また、スタッフが常駐するキッズルームを設置した店舗もあり、子連れでも安心して食事ができるようになっています。しかもキッズルームには監視カメラが設置されていて、テーブルに設置されたタブレットを利用してリアルタイムに子供たちの様子を確認することもできるといいます。
待ち時間にはネイルサービスを利用できる
そして、清掃の行き届いたトイレにはなぜかダイソンのドライヤーも設置。最初は何に使うのかよくわからなかったのですが、雨に濡れたり、料理で洋服を汚してしまった場合にすぐに乾かしたりできるように用意しているとのことです。各テーブルにはスマホ用の充電用コードも用意されていて、至るところに気遣いを感じさせます。
テーブルの引き出しには食事に必要なものが用意されている
気遣いといえば、お一人様用には席の向かいに大きな熊のぬいぐるみを座らせてくれます。余計に目立ってしまうかもしれませんが、これはこれで温かみを感じます。
お一人様の相手をする熊のぬいぐるみ
注文はすべてテーブルに設置されたタブレットで行います。メニューの中で目を引くのは「カンフー麺」。店員さんがカンフーのパフォーマンスをしながら麺を伸ばしてくれます。お客を楽しませてくれる仕掛けです。時間帯によっては、中国四川省の伝統芸能「変面ショー」を観ることもできます。
各テーブルに設置されている注文用のタブレット
カンフー麺のパフォーマンス
つけだれの種類も豊富で、「たれバー」にある約30種類のたれや薬味を調合して自分に合ったたれを作ります。あまりに種類が多すぎて迷ってしまいますが、親切に「お勧めのたれ調合ランキング」も紹介してくれています。
たれバーには約30種類のたれや薬味が用意されている
中国で火鍋業界は中小が乱立する激戦の業界です。そうした中で生き残るためには何が必要かを考え、究極のサービスとエンターテインメントを楽しめる体験型の火鍋店として差別化を図ってきたのです。
日本の店舗は特海国際が運営、親会社の海底撈国際はハンセン指数採用銘柄
写真は今回訪問した海底撈秋葉原店
海底撈を運営する海底撈国際(06862)は2018年9月に香港市場に上場。2021年3月には香港市場の主要指数であるハンセン指数の構成銘柄に選ばれています。そして、2022年12月には海外事業を手掛ける特海国際(09658)が香港市場に分離上場しました。
日本の海底撈を運営しているのは特海国際で、その親会社が海底撈国際という位置づけになっています。特海国際の決算は海外だけ、海底撈国際の決算には連結のため国内と海外の両方が含まれます。
海底撈とマージャン、最後に勝利をつかみ取る
ちなみに「海底撈」という社名はマージャン用語で、最後のツモ牌(海底牌)で和了(あが)る役のことです。「海底撈月(ハイテイラオユエ)」または「海底摸月(ハイテイモーユエ)」とも言い、もともとは海面に映っている月をすくい上げようとするという意味から、「実現不可能なことに労力を費やして無駄に終わること」を指します。
四川省出身の創業者・張勇氏(アリババ集団のCEOと同姓同名)が社名を決めようと悩んでいたとき、隣でマージャンをしていた妻がたまたま「海底撈(月)」で和了ったことをヒントに名付けたといいます。要するに社名の意味はマージャンの「ハイテイツモ」。もともとの四字熟語の意味は絶望的ですが、マージャンでは最後の最後で勝利をつかみ取ることができる幸運の役です。いかにもマージャンが大好きな四川人らしいエピソードです。
マージャンの役の名前から社名を決めた
まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄
今回見つけた身近な中国株銘柄は、海底撈国際(06862)と特海国際(09658)の2銘柄で、いずれも香港市場に上場している銘柄です。
【中国の火鍋料理チェーン】「海底撈」ブランドで火鍋料理レストランをチェーン展開する。1994年に四川省簡陽市に1号店を開店したのを皮切りに店舗数を増やし、22年6月末時点の店舗数は海外を含めて1435店に上る。中国本土外では台湾、香港、マカオ、シンガポール、韓国、日本、英国、米国、カナダなどで計103店を展開する。出前や調味料・食材販売も手掛ける。
【海底撈の海外事業】「海底撈」ブランドで火鍋料理レストランチェーンを運営する海底撈国際(06862)から分離し、資金調達を伴わない紹介形式で上場。海外で火鍋料理レストランチェーンを運営する。12年にシンガポールに出店したのを皮切りに22年12月時点でタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、日本、韓国、米国、カナダ、英国、豪州に計110店を展開する。「海底撈」は中国発の中国料理レストランでは国際市場での売上高で最大手(21年)。