中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。
▼参考
中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「流動比率」と「低負債比率」のランキング活用法を紹介します。
「流動比率」ランキングの活用法
「流動比率(Current Ratio)」とは、貸借対照表(バランスシート)上の流動資産を流動負債で割って算出され、企業の短期的な負債に対する支払い能力を示す指標です。流動資産とは1年以内に現金化できる資産を指し、流動負債とは1年以内に返済する必要のある負債を指します。1年以内に返済する必要のある負債に対して、1年以内に現金化できる資産をどれだけ持っているかを示し、この比率が高ければ高いほど流動性が高く、当座の資金に余裕があるとみることができます。
業種によって安全とされる流動比率の水準は異なりますが、一般に200%以上あることが望ましいとされています。逆に100%を下回ると危険な水準であると判断されます。「中国株二季報」2024年春号では、掲載銘柄の平均が175%となっています。
企業の成長性やバリュエーションなどに着目した指標と異なり、流動比率は企業財務の健全性、安全性を示す指標です。流動比率が高ければ、それだけ短期的な支払い不能による倒産のリスクは少なくなります。ただし、高ければ高いほどよいかと言えば、必ずしもそうとは言い切れません。流動比率が高いということは、それだけ現預金などの流動資産を多く抱えていることを意味しますので、資産が有効に活用できていない可能性があります。要するに資産を無駄に寝かせているケースが疑われます。資産が有効に活用できていなければ、安全性は高まるかもしれませんが、高い成長姓は期待できません。
投資するに当たっては、流動比率のランキングを単独で使うのではなく、別の指標を組み合わせてみましょう。まずは200%程度の流動比率を確保していることを前提に、業績が悪化傾向にないかどうかを確認します。その上で、割安銘柄であれば「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」、成長期待の銘柄であれば「増益率」や「業績増額修正」など、これまでに紹介してきたランキングを使ってみてください。財務が健全であることが前提であれば、「高配当利回り」との相性もよさそうです。
低負債比率ランキングの活用法
同じく財務面に着目した指標として、「低負債比率」ランキングがあります。こちらは総負債を株主資本で割って算出され、財務の健全性を評価する指標として利用されています。株主から預かった返済の必要のない資金である株主資本に対して、銀行借り入れなど返済の必要がある負債の割合を示すものです。一般に数値が低ければ低いほど、財務体質が強固であると判断され、高くなれば高くなるほど、財務リスクが高いと判断されます。
分子である負債が小さい場合や分母である自己資本が大きい場合には、負債比率の値は小さくなります。数値が小さければ小さいほどよいかと言えば、そうとも言い切れません。これは流動比率のときと同じです。数値が小さい方が、財務リスクが小さく、企業の安定性は増しますが、成長のタイミングで借り入れを抑制しているようであれば、成長の機会を逃してしまうことになります。成長企業にとっては、積極的に借り入れを増やして設備投資に充てた方がよいこともあるため、企業の成長ステージや業種によって望ましい水準は異なってきます。
「中国株二季報」2024年春号では、掲載銘柄の平均が279.2%となっています。業種ごとの平均は「中国株二季報」の企業データの最初のページに「業種別指標一覧」を掲載しています。
出所:「中国株二季報」2024年春号
投資するに当たっては、負債比率だけで財務の健全性を判断することはできませんので、先に紹介した短期的な支払い能力を示す指標である流動比率などと合わせて判断する必要があります。負債比率のランキングも単独で使うのは避け、流動比率のときと同様に別の指標と組み合わせて利用してみるよう心がけてみてください。