中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(3) 「業界天気予報」を使って業種を手掛かりに絞り込む

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


まずは手掛かりを見つける


「中国株二季報」では号によって異なりますが、通常800以上の銘柄が掲載されています。パラパラとページをめくって、たまたま目についた銘柄に投資してみたら、たまたま大当たりした――。宝くじよりは確率が高いかもしれませんが、偶然はそんなに続きません。賢明な読者であれば、まずは手掛かりを見つけて、そこから絞り込んでいく方法で探していきましょう。


中国株ビギナーの場合、まずは業種を手掛かりに絞り込んでいく方法がおすすめです。中国株はよく、「中国政府による政策の影響を受けやすい」と言われますが、中国政府が支援している業種は政府による手厚い保護を受け、高い成長が期待されます。一方、中国政府の方針と合わない業種を選んでしまうと、政策変更で大きなダメージを食らうことがあります。学習塾の禁止で瀕死状態となった教育産業がよい例です。業種選びは非常に大切なのです。まずは中国政府が支援している業種かどうかを調べてみましょう。


中国株では業種選びは非常に重要なポイント


巻頭特集「業界天気予報」の活用法



どの業種に当たりをつけるか、参考になるのは巻頭特集の「業界天気予報」です。「業界天気予報」は、(1)主要14セクターの天気図(2)業界天気レポート――の2部構成となっていて、(1)の「主要14セクターの天気図」では、「テクノロジー」「カジノ」「自動車」「銀行」など主要14セクターについて、代表的銘柄を3銘柄挙げた上で、現状と展望を200文字前後の文章で簡潔に説明しています。「晴れ」「薄日」「曇り」「小雨」「大雨」という5つのお天気マークを使い、主要セクターの現状と展望を天気図で分かりやすく表示しているのが特徴です。まずはここで、主要セクターの状況を手っ取り早く把握しましょう。特に天気図が好転しているセクターが狙い目になります。


天気が好転しているセクターが狙い目


もう少し詳しくセクターを調べてみたいという場合は、(2)の業界天気レポートをチェックしてみましょう。ここでは編集部がピックアップした注目業界を毎回3-4セクター取り上げ、最新動向と見通しを踏み込んで紹介しています。できるだけ新たな動きのあったセクターや業界を取り巻く環境が変化したセクターを取り上げるようにしているので、すでに中国株に投資をしている方であれば、ここで情報をアップデートしておきましょう。


業界天気レポートでは注目業界を取り上げている


気になるセクターが見つかったら、銘柄もチェックしてみましょう。業界天気レポート内に主要銘柄の株価指標を掲載しているので、まずは指標を見比べてみてください。掲載しているのは「株価」「目標株価」「EPS(1株利益)」「PER(株価収益率)」「PBR(株価純資産倍率)」「配当利回り」の各指標です。指標はすべてファクトセット社のコンセンサス予想に基づいて算出しています。目標株価との乖離の大きな銘柄、PERやPBRが割安な銘柄、配当利回りが大きな銘柄・・・どの指標を重視して選ぶかは読者によって異なると思いますので、目的に合わせて銘柄の目星をつけてみてください。


業種から個別銘柄を探す


ここまでで気になる業種が見つかったら、次に個別銘柄のページに行って業績などをチェックしていきます。「中国株二季報」は銘柄コード順に銘柄を掲載しているので、もし銘柄コードが分かるのであればページを順番にめくっていくことで、目当ての銘柄にたどり着くことがきるでしょう。もし業種だけを選んで、その中から選びたい場合は、索引の「業種別」を利用します。「中国株二季報」では掲載銘柄を32の業種に分類しているので、業種からでも銘柄を探すことができます。



なお、索引ではこのほか、「市場・属性別」「50音順」「アルファベット順」でも銘柄を探すことができるようになっています。「市場・属性別」は、香港市場に上場する銘柄の場合は「ハンセン指数採用銘柄」「H株」といった属性分類、中国本土市場に上場する銘柄は「上海A株」「深センA株」といった市場分類です。「50音順」では、中国語社名の漢字音読み、英語社名のカタカナ読みで調べることができるようになっています。


例えば、パソコンの世界最大手であるレノボグループ(聯想集団有限公司:00992)であれば、漢字社名の音読みである「レンソウシュウダン」、英語社名のカタカナ読みである「レノボグループ」といった感じで、どちらも調べることができます。英語社名だけが分かる場合は「アルファベット順」でも調べることができるので、もし銘柄コードが分からない場合は索引を使って探してみてください。



索引ではいろいろな方法で銘柄を探すことができる


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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