中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(29) 業種から銘柄を見つけてみよう、中国株二季報では全銘柄を32の業種に区分

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株二季報で銘柄を探すにはどうしたらいいか?


中国株二季報で個別銘柄を探す際、業種からも探すことができます。索引に業種別で銘柄が記載されているので、業種が分かっているのであれば、索引で業種を探し、その業種の一覧から銘柄から見つけることができます。例えば、パソコン大手のレノボグループ(00992)であれば、業種は「電子・半導体」です。


 


中国株二季報では、すべての銘柄を32の業種に区分しています。香港市場や中国本土市場にも業種分類はありますが、両市場で異なる業種分類が使われているため、中国株二季報では独自に設定した業種分類を使っています。そのため、取引所の業種分類とは違う業種分類になっているケースもあります。


 


事業の組み合わせ方によって経営方針が分かる


複数の事業を手掛けている企業の場合、基本的には売上構成で最大の項目から業種を決めています。ただ会社側が「この事業を今後の主力事業としていきます」と明言しているようなケースでは、まだ売上構成が最大ではなかったとしても、今後最大になることを見越し、先取りして業種を選ぶことがあります。


 

出所:中国株二季報2025年春号


複数事業を手掛けていたとしても、通常は相乗効果が見込めるような組み合わせになっていることが多くなっています。例えば、火力発電事業を手掛ける銘柄の多くは同時に燃料となる石炭の採掘事業を手掛けていることが多く、自動車銘柄の中には同時に電気自動車(EV)の中核技術となるバッテリー事業を手掛けているケースもあります。


一方、有料道路事業と証券事業といったまったく畑違いの事業を行っている会社もあり、主に単一事業に頼ることによるリスクを分散するという目的のこともあります。このあたりに各社の経営方針の違いが表れています。


持ち株会社の場合は、さらに複雑になっているケースがあります。例えば太古A(00019:スワイヤ・パシフィックA)は、飲料事業が約4割、航空事業が約3割、不動産事業が約2割、貿易・工業が約1割という構成になっており、航空事業はキャセイ・パシフィック(00293)、不動産事業は太古地産有限公司(01972)という上場企業がそれぞれ担っています。


 

太古A(00019)の売上構成 資料:太古Aの決算報告書


どれだけ相乗効果が期待できるのか疑問に感じる組み合わせですが、一方で各事業が同じ要因で影響を受けることが少ないため、事業のリスク分散ができているとも言えます。このような銘柄の業種分類は「コングロマリット(複合企業)」としています。中国株二季報の2024年春号では、こうした「コングロマリット」銘柄は、9銘柄掲載しています。


出所:中国株二季報2025年春号


「一つのカゴ」リスク回避を実践するコングロマリット銘柄


「卵を一つのカゴに盛るな」という有名な相場格言があります。卵を一つのカゴに盛った場合、そのカゴを落としてしまうとすべての卵が割れてしまいますが、複数のカゴに分けて盛れば、一つを落としても影響は少ない範囲で済みます。コングロマリット銘柄は一つの銘柄でこうしたリスク分散をしている銘柄であるとも言えます。


一方、ある業種にとって好材料が出ても、ほかの業種の悪材料で打ち消し合ってしまったり、事業内容が複雑で分かりにくいため、株価が適正に評価されないといった「コングロマリットディスカウント」という現象も見られたりもします。なんとも残念な業種ではありますが、リスクを分散して長期投資で増やしたい人には向いた業種といえます。


 

出所:中国株二季報2025年春号


なお、中国株二季報に掲載している銘柄の業種別の内訳は上のグラフのようになっています。最大の業種は「金融・証券・保険」で36銘柄を掲載しています。この中には中国の4大国有商業銀行や香港証券取引所(00388)などが含まれています。


次に多い業種が「IT・ソフトウエア」で、中国株の代表する銘柄であるテンセント(00700)やアリババ集団(09988)といったテック系銘柄が入っています。テック系銘柄は成長期待が高く、他業種と比べると割高な銘柄が多い傾向にあります。


ただ、業種内では割安であったり、同じ銘柄でも過去の水準と比べると割安だったりというケースもあります。中国株二季報には業種別指標一覧が掲載しているので、こちらを使って比較してみるのもいいでしょう。


出所:中国株二季報2025年春号


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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