中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(26) 香港全上場企業一覧、時間のない人はサラッと業績だけでもチェック

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株にこれから投資しようとした場合、投資するからにはベストのタイミングで投資したいと考えますよね。もしくは、すでに銘柄を保有している場合には、ベストのタイミングで手放したいと思うでしょう。当然、個別銘柄であれば業績やチャートを見て判断することになりますが、全体相場がどのような状況にあるのかを確認することも重要です。今回は「香港全上場企業一覧」の活用法について紹介したいと思います。


香港全上場企業一覧を使って保有銘柄の業績を簡易チェック


 

出所:中国株二季報2024年夏秋号


今回紹介するのは、巻末付録の「香港全上場企業一覧」の活用法についてです。「香港全上場企業一覧」は、香港証券取引所に上場する通常銘柄の業績一覧です。ETF(上場投資信託)など一部の特殊な銘柄を除いて、すべての銘柄を掲載しています。


香港市場には、メインボードとGEMを合わせて3000銘柄近い銘柄が上場しています。しかし、「中国株二季報」は、少人数の編集スタッフで個別銘柄のページ作成を行っているため、残念ながら会社四季報のようにすべての銘柄をカバーすることができません。個別銘柄のページは、基本的に1銘柄1ページで作成していますが、1ページ版で紹介できなかった銘柄を「プラス銘柄」として1/3ページ版で掲載。そこにも掲載できなかった銘柄を掲載しています。


 出所:中国株二季報2024年夏秋号


各銘柄の決算は直近の期末決算、もしくは中間決算を掲載。決算通貨は香港市場がさまざまな通貨を認めているので、人民元、香港ドル、米ドルだけでなく、ユーロ、豪ドル、マカオパタカ、台湾ドル、マレーシアリンギ、タイバーツなど何でもありです。日本円で決算を発表している銘柄もあります。


前年から決算通貨を変更した銘柄については比較が難しいので、前年比を「―」で表示しています。何らかの理由で決算が発表できなかった銘柄については、最後に発表された本決算、もしくは中間決算を掲載しています。


中国株のベテランになると、一人で数十銘柄に投資しているというケースもあります。保有銘柄が多くなってくると、すべての銘柄をじっくりチェックしている時間がありません。そんな時は「香港全上場企業一覧」で業績だけでもサッとチェックしておきましょう。


掲載している内容は、直近の売上高と純利益だけなので、業績チェックとしては必要最低限の内容です。1期だけなので評価は難しいかもしれませんが、売り上げが伸びているかどうか?純利益が同じように伸びているのか?それとも大きなブレが出ているかどうか?もしブレが出ているとすれば何か特殊要因がありそうです。


詳細を確認する場合は「二季報WEB」も併用


気になる場合は、「中国株二季報」のWEB版である「二季報WEB」で、最新の業績をチェックしてみましょう。「中国株二季報」はどうしても出版のタイムラグがあるので、最新の業績には対応しきれていません。「二季報WEB」では最新の業績が掲載されていますので、「中国株二季報」は最低限の業績チェック、そしてページをパラパラとめくりながら気になる銘柄の発掘といった用途で使うのがいいでしょう。


なお、下記は「香港全上場企業一覧」から抽出した売上高ランキングです。各銘柄の決算期、決算通貨が異なるため、中間決算は便宜的に2倍にして12カ月の期末決算と同じ条件に換算しています。また、決算通貨もバラバラなので、すべて日本円に換算しています。


 


売上高の上位2銘柄は中国の石油大手であるシノペック(00386)とペトロチャイナ(00857)で、この2銘柄の売上高が突出しています。それに続くのが大手ゼネコンの中国中鉄(00390)と中国鉄建(01186)です。



一方、純利益のランキングは、中国の4大国有商業銀行がトップ4を独占しています。それに続くのが石油大手のペトロチャイナ(00857)で、10位にも石油銘柄のCNOOC(00883)が入ってきています。中国の国有銘柄以外では、HSBC(00005)、アリババ集団(09988)が入ってきていますが、それでもランキングを見ると国有銘柄の強さが実感できるかと思います。ランキングに出てくるような規模の大きな企業は、「中国株二季報」では1ページ版で詳細に扱っていますので、そちらで内容を確認してみてください。

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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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