中国株の銘柄選び

香港市場の主要銘柄:中国蒙牛乳業(1) 世界9位の乳製品会社、国内首位の座を巡ってライバル伊利と激しい争い

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。


▼参考

中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本


中国の乳製品大手、売上高で8年連続世界トップ10入り


今回紹介するのは中国の乳製品大手、中国蒙牛乳業(チャイナ・モンニュウ・デイリー:02319)です。中国で牛乳や乳飲料、ヨーグルト、アイスクリームなどを製造・販売している会社です。日本では直接、中国蒙牛乳業の牛乳やヨーグルトを見ることがないので、もしかしたら初めて名前を聞いたという人もいるかもしれません。


しかし、中国蒙牛乳業は中国国内では同じ内モンゴル自治区に本社を構える内蒙古伊利実業集団(600887)に次ぐ業界2位の大手企業。オランダの金融機関ラボバンクが発表した24年版世界の乳業メーカー売上高ランキング(23年の売上高を米ドル換算、牛乳・乳製品のみを対象)によると世界9位となっており、8年連続で世界トップ10入りを果たしています。


もちろん中国ではスーパーやコンビニに必ず中国蒙牛乳業の商品が置いてあり、知らない人のいない有名企業です。2014年3月にはハンセン指数の構成銘柄にも選ばれ、10年以上にわたって優良企業「ブルーチップ」の地位を確保しています。


 


五輪やサッカーW杯でスポンサー契約を獲得


しかも、今年開かれたパリ五輪では米コカ・コーラ社と共同で五輪スポンサーの中で最高位の「ワールドワイド・パートナー」に選ばれていたので、テレビを通じて中国蒙牛乳業のロゴを見かけたという人は多いかもしれません。また、サッカーではFIFAワールドカップ(W杯)の2018年ロシア大会、2022年カタール大会でスポンサーを務めました。グラウンド脇の電光掲示板に表示された「蒙牛」の2文字が印象に残っているという人も多いことでしょう。


また、三菱UFJフィナンシャル・グループが株式約7%を保有する大株主でもあり、日本とも少なからず縁がある企業といえます。


サッカーW杯の26年大会、30年大会でもスポンサーを務める

出所:中国蒙牛乳業HP


牛乳・乳製品が主力事業、ライバル伊利と激しい首位争い


売り上げの中心は牛乳やヨーグルトを中心とした牛乳・乳製品部門で、売り上げ全体の8割超を占めています。ハイエンドの超高温瞬間殺菌(UHT)牛乳「特侖蘇(Milk Deluxe)」のほか、乳飲料の「真果粒(Fruit Milk Drink)」、ヨーグルトの「冠益乳(Champion)」、ヤクルトのような乳酸菌飲料「優益C(Yoyi C)」などを生産しています。


 

中国蒙牛乳業の乳製品 出所:AASTOCKS


このほかに、アイスクリーム部門では「随変(Suibian)」「蒂蘭聖雪(Deluxe)」「緑色心情(Mood for Green)など、粉ミルク部門では「雅士利(Yashili)」「貝拉米(Bellamy’s)」など、チーズ部門では「愛氏晨曦(Ai Shi Chen Xi)」「芝式分子(Zhishifenzi)」など、さまざまなブランドを展開。売上高を地域別に見ると全体の96%を中国本土が占めていますが、海外ではインドネシアや豪州、ニュージーランド、フィリピンに工場を持っており、グローバル展開も進められています。


 


中国国内では、同じ内モンゴル自治区に本社を構えるライバルの内蒙古伊利実業集団(600887)と激しいシェア争いを繰り広げています。2007年から2010年にかけて国内首位の座を奪ったことがありますが、近年は内蒙古伊利実業集団との差がやや広がってきています。この差はどこから生まれているのでしょうか?また、中国蒙牛乳業と内蒙古伊利実業集団は非常に仲の悪いことでも知られています。この2社はなぜ仲が悪いのでしょうか?次回以降、中国蒙牛乳業の創業の歴史をさかのぼって、このあたりを紹介していこうと思います。お楽しみに。


 


まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄


今回紹介した銘柄は、2004年に香港証券取引所のメインボードに上場し、2014年にハンセン指数に採用された、中国の乳製品大手・中国蒙牛乳業(02319)です。


【中国の乳業大手】牛乳や乳飲料、ヨーグルト、アイスクリームなどを製造・販売する。蘭ラボバンク発表の24年世界乳業番付で9位。23年末時点で国内45カ所、豪州、NZ、インドネシア、フィリピンに生産拠点を持ち、年産能力は1404万トンに上る。国有の中糧集団(COFCO)が実質筆頭株主で、デンマークのアーラ・フーズと共同事業を展開。中国現代牧業(01117)や中国聖牧有機ダイ業(01432)、雅士利国際を傘下に抱える。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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