中国株の銘柄選び

二季報を使った銘柄選び(7) ランキングを使って銘柄を探す、経営効率の高い銘柄を探すなら「高ROE」

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。香港、上海、深センの取引所には合わせて8000近くの銘柄が上場しているので迷うのは当然です。そんな場合は、「中国株二季報」を活用して銘柄を探してみるのがいいでしょう。中国株二季報には、中国株を取引するに当たっての基本情報から、中国市場の概況、中国の業界動向、個別銘柄の情報などがぎっしりと詰まっています。このシリーズでは、中国株二季報を利用した中国株の銘柄選びについて紹介していきます。


▼参考

中国株二季報の最新号はこちら


中国株をこれから始めようとした場合、まずは銘柄選びの手掛かりが欲しいですよね。とはいえ、数多くの銘柄の中から自分で有望銘柄を見つけ出すのは大変です。そんなとき参考になるのが、巻末付録の「ランキング」です。今回は「高ROE」と「高ROA」のランキング活用法を紹介します。


「高ROE」で経営効率の高い銘柄を探す


ROEとは、Return On Equityの頭文字を取ったもので、日本語では「株主資本利益率」もしくは「自己資本利益率」と呼ばれます。経営の効率性を示す指標として利用され、年間純利益÷株主資本×100で計算することができます。



株主資本とは、企業の貸借対照表の「純資産の部」に記載される項目の一つで、株主が出資した資本金および資本準備金、過去の利益の蓄積である利益剰余金の合計値を指します。説明が難しかったかもしれませんが、簡単に言ってしまえば「株主から預かった資金」です。


そして、その株主から預かった資金を使って、年間にどれだけ利益を上げたかを示す指標がROEです。年間の純利益なので、中間決算の場合は純利益を2倍にして計算します。仮に分母である株主資本が一定の場合、分子である年間の純利益が大きくなればROEも大きくなります。逆に年間の純利益が小さくなればROEは小さくなります。


投資家はなぜROEを重視するのか?


投資家にとってなぜROEが重視されるのでしょうか。それは、ROEが高ければ高いほど、少ない資本でより多くの利益を生み出せる会社であることを意味し、経営効率が高く、収益性の高い会社を見つけることができる指標だからです。せっかく投資するなら、預けた資金に対して効率的にたくさん稼いでくれる会社を選びたいですよね。


利益を多く生み出している会社は配当余力も大きいため、増配の可能性が高くなります。また、高い収益性によって得られた資金を研究開発や設備投資などに再投資することで、さらなる成長の加速も期待されます。



例えば、ボトル入り飲料水の中国最大手、農夫山泉(09633)を見てみます。2023年6月中間決算では、投下した株主資本(222億5700万元)に対して、57億7500万元の純利益を計上しており、ROEは51.9%となっています(中間決算なので純利益を2倍して年間利益に換算します)。


「中国株二季報」では、掲載銘柄のROEの平均をページ右上に記載しています。2024年春号ではROEの平均が「11.2%」となっており、農夫山泉が株主の預けた資金から効率的に利益を生み出している会社であることが分かります。


ROEは平均と比較する


ROEは業種によっても平均値が違うので、「中国株二季報」の企業データの最初のページに掲載している「業種別指標一覧」も合わせて比較してみましょう。こちらは香港証券取引所に上場している全銘柄を集計した平均を掲載しています。農夫山泉を含む「食品・飲料」業界の平均ROEは12.5%であることが分かります。ここからも、農夫山泉の51.9%というROEが、いかに高い数値であるかが分かります。


業種別指標一覧で業種別の平均を確認することができる


ROAは企業の総合的な収益力を測る指標


一方、似たような指標にROAがあります。Return On Assetsの頭文字を取ったもので、日本語では「総資産利益率」と呼ばれています。分母が「総資産(自己資本+他人資本)」になっていることがROEとの違いです。ROEの分母である「自己資本」に加え、銀行借り入れなど返済が必要な「他人資本」も含めたすべての資産を使って、どれだけ利益を生み出しているかという、企業の総合的な収益力を測る指標です。



ROAも業種によって数値が大きく違ってきます。大規模な設備などが必要な業種では、一般に分母の値が大きくなるので、ROAは小さな数値になってきます。個別銘柄のROAを見るに当たっては、やはりROEのときと同様、「業種別指標一覧」で業種ごとの平均と比べてみる必要があります。



ROEとROAのランキングに関しては、数値が大きければ、より効率的に利益を生み出している企業といえますが、投資家としては、過去の実績に比べてどうか?という点も注意しておきたいポイントです。ランキング上位であっても、ROEやROAが年々低下しているということであれば、利益を生み出す力が低下していることを意味しますので、注意が必要です。


「中国株二季報」では、前年の実績も合わせて掲載しているので、ROEやROAの数値がどう変化しているのか確認してみましょう。できれば、ROEやROAが業界平均よりも高く、かつ数値が年々上昇している銘柄を選びたいところです。


「中国株二季報」のウェブ版に当たる「二季報WEB」では、予想も含めた5期分のROEとROAを掲載しているので、こちらも合わせて確認してみるといいでしょう。

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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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