気になるテーマ解説

著名投資家の投資候補を考察

マーケットは著名投資家の行動を大きく受けることがあります。代表的な例だと、米国の投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏が有名ですよね。「投資の神様」とも言われる御年92歳の超がつく敏腕投資家です。


バフェット氏がとある銘柄を買ったことが分かれば追随するのはもちろん、バフェット氏が興味を示すだけでも上昇します。マーケットに絶対は存在しませんが、あの人が買うなら間違いない!といった思惑が膨らむのでしょう。もはや「バフェット銘柄」という投資テーマの1つです。


直近では23年4月11日、バフェット氏が日本経済新聞の単独インタビューに応じ、日本株への追加投資を検討していると報じられました。このことがきっかけとなり、11日、12日は商社株が買われる展開。今回もバフェット氏を信じて買うべきなのか、踏みとどまったほうがよいのか、こればかりは神のみぞ知るところです。


ただ、学ぶべきことはたくさんあるはずなので、今回はバフェット氏が今後どのような銘柄群を検討しているのか考えていきたいと思います。


インタビューのポイント

日経新聞のインタビュー記事から、ポイントになりそうな部分を抜粋してみました。


・PBR(株価純資産倍率)1倍割れについては

「投資を決める要素の一つではあるが、取り立てて重要なわけではない」


・日本企業への評価は

「一定のチェック項目がある。配当や自社株買いのためにより多くの資金を生み出しているという事実を非常に高く評価している」


・商社以外への投資について

「日本株で現状保有しているのは商社株だけだ。考えている会社は常に数社ある。問題は価格だ。もし商社の株価が2倍だったら我々は投資しなかっただろう」


この3点から、投資銘柄を探っていきます。




銘柄をスクリーニング


弊社が運営しているトレーダーズ・ウェブの銘柄スクリーニングを使ってみましょう。


今回のスクリーニング条件は3つ

・PBR:1.0倍以下

・時価総額:5000億円以上

・配当利回り:3.0%以上


バフェット氏の回答を踏まえるとPBRにこだわらない方が良いのかもしれませんが、実際のところ商社株のPBRは1倍を割れているため、スクリーニング条件に組み込むことにしました。流動性などの観点から時価総額も入れています。


結果は以下の通り(23年4月12日大引け時点)

 

※時価総額順 上位30銘柄


合計62銘柄ありましたが、表の都合上30銘柄に絞りました。時価総額順ではあるものの、金融緩和の修正期待から注目が高まった銀行株や、保険、鉄鋼、鉱業、輸送機器などがヒットしています。いわゆるバリュー株ですね。


株主還元策なども重要

スクリーニングによってある程度は定量的に絞ることができました。ただ、株主還元策の内容や、株価の推移も総合的に考慮する必要があります。


株主還元で調べておきたいこととして、配当性向や総還元性向などが挙げられます。これくらいを目安に利益を還元しますといった指針なので、配当金はどれくらいになるか、自社株買いが期待できるかなど、株主還元策がイメージしやすくなりますよね。



株価については「過去の高値から見て安値圏にある」といった条件はないほうが良さそうです。バフェット氏が商社株を買ったことが判明した2020年8月、商社株は上場来安値から見ると大幅に上昇している水準でした。むしろ、ここ数カ月で上場来高値を更新する勢いです。


三菱商事(8058) 週足

 


そうなると、利益成長や株主還元の強化が評価されれば、バフェット氏は商社株をさらに買い増しするかもしれませんし、一方で過去から見れば安い鉄鋼や銀行株は対象外・・・とはならないでしょう。むしろ逆に高値からの下落率が大きいハイテク・グロース株を検討しているかもしれませんし、考え出すときりがないですね。


ここまで筆者の憶測で述べてきましたが、答えはバフェット氏が行動した後にしか分かりません。今回のインタビューについては、リップサービス、ポジショントーク、出口戦略と言う人もおり、考え方は投資家それぞれです。


いずれにしても、バフェット氏を含めて著名投資家だからといって妄信はせず、かといって一方的に否定するのもよくないです。自分とは違った見方や知見・ノウハウなど、情報を上手く取り込んで投資に生かしたいですね。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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