気になるテーマ解説

決算プレーと自動売買

2024年10-12月期の決算発表が一巡しました。当たり前の話ですが、決算発表は株価に最もインパクトを与えるイベントの一つです。好決算で保有株が上昇したら気分は最高ですよね。株式投資の醍醐味とも言えます。一方、暴落して悔しい思いをすることも隣り合わせであり、決算日をまたぐのは「丁か半か」です。


このように決算発表後は株価が大きく動きやすいので、そこを狙って取引する人も多いでしょう。「決算プレー」とも言われますが、はたして個人投資家が簡単に儲けられるものなのでしょうか。


秒で注文が殺到


決算発表の時間は企業によってまちまちで、東証の大引け後(15時以降)に発表する企業だけでなく、取引時間中、昼休み中に出す企業もあります。大引け後なら資料をじっくり見る時間がありますが、取引時間中だとそうはいきません。


とりあえず大まかに数字だけ確認して、すぐに注文を出すといったことが必要です。いち早く発注した人が勝ちという世界ですが、大抵は決算発表が出て数秒後には株価が急騰(急落)しています。決算短信を開いている間に決着という感じなので、どう頑張っても人間の能力では対応しきれません。短信を見ずに、時間になった瞬間ボタンを押すしかありませんね。


参考までに、場中決算発表の事例を見てみましょう。


2月14日13時発表の住友ゴム工業(5110) 日中足

出所:トレーダーズ・ウェブ 赤線は前日終値


13時に決算短信が開示されたと同時に一気にプラス転換。おおよそ2分後には再びマイナス転換しており、最終的に決算発表前の株価を下回って取引を終えました。決算発表直後に買った人は、もれなく全員が損という事態です。


ちなみに13時00分から1分間の出来高は大体60万株でした。上のチャートにおいて、青い棒線が長く伸びている部分です。短期間にそれだけ注文が殺到したということですが、一体誰がそんなに注文を出しているのでしょうか。


決算プレーの主体は?


人間では到底無理なスピードの注文は、自動売買によるものです。あらかじめ一定の条件を設定して、そうなった場合に機械が注文を出す取引です。プログラム売買と呼ばれたりもします。


例えば、13時A社が決算発表をする予定なので、13時になったら1万株の買い注文を出す。というように設定すればそのように動きます。決算内容が良くないのに、途端に急騰していくケースがあったら、プログラム売買によって自動的に買い注文が入っていると考えることもできそうですね。


急騰していく様子をみて、後から買い注文が続けば株価はさらに上がります。ある程度上がったところで自動的に売り注文を出すようにしていれば、簡単に値幅が取れてしまう・・・というのがプログラム売買で利益を出す方法です。


反対に、決算が悪いことを見込んで自動で売り注文を設定することも考えられます。下がっていく様子をみて、ほかの投資家が焦って売れば株価がさらに下がります。ある程度下がったところで買い戻せばサヤが取れますよね。


住友ゴムの決算発表にプログラム売買が仕組まれていたかは分かりませんが、どう考えても自動取引だよね、という動きは色々な銘柄で見ることができます。株価の急変動で焦って注文を出してしまうと思うツボ・・・ではありますが、顔が見えない全投資家の考えをくみ取るのは困難です。その後も上がり続ける(下がり続ける)こともあるため、どうするのが正解なのか、的中させるのは難しいですね。


結局のところ


自動売買と言っても、買い上げた(売り崩した)株に追随する投資家が出てこないと利益を出せません。自分で買って自分で売るだけ・・・と失敗するケースもあるようです。勝てば官軍負ければ賊軍ですが、決算プレーで勝ち続けるのはプロでも困難です。決算はさまざまな思惑と期待が入り混じる混沌としたイベントなので、結局のところ自分の判断を信じるしかなさそうです。


ちなみに、四半期ごとの決算ラッシュを見ていると、短時間で急騰して急落(急落して急騰)することが恒例となっている銘柄も見受けられます。そういったクセのある銘柄を見るけられると、決算プレーの勝率が上がるかもしれません。



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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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