自動車に関する話題は豊富ですが、横文字や英語が多くてぱっと見では何がなんやら?と思うこともあるでしょう。そのようななか、経済産業省と国土交通省が5月に「モビリティDX戦略」を策定したと発表しました。
乗り物のデジタルトランスフォーメーション(DX)ということになりますが、いったい何について語られているのでしょうか。探っていきたいと思います。
キーワードになっているSDVとは
今回の戦略は「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)を始めとする自動車分野のDXにおける国際競争を勝ち抜く」ことが目的としています。突然出てきたSDVですがいったい何をさすのでしょうか。
説明によると、SDVは「クラウドとの通信により、自動車の機能を継続的にアップデートすることで、運転機能の高度化など従来車にない新たな価値が実現可能な次世代の自動車」とのことです。
スマートフォンに例えると、定期的にやってくるOSのアップデートのようなものでしょうか。OSを更新すれば新しい機能などが使えるようになっているので、自動車でもそういったことができるという認識でよさそうです。
出所:経済産業省「モビリティDX戦略(案)」
EVを制する者はSDVを制す?
現在、電気自動車(EV)の開発競争が激化しているのはご存じの通りです。なぜ世界中でEV開発が行われているのか?というと、環境面だけでなくガソリンエンジン車を開発するよりも参入障壁が低いからと言われています。
ガソリン車は1台につき何万という部品が使われており、エンジン内の過酷な環境でも壊れない品質が求められます。なので、自動車開発のノウハウがない国からすると、一から開発しても採算が取れないという事情があるようです。それに比べてEVは複雑なエンジンからモーターに置き換わるため、必要な部品数が大きく減ります。
モーター、電池などの電動部品をコンピュータで制御できれば車が動くため、これを勝機と捉えた中国勢が猛進しています。中国最大手のEVメーカーであるBYDが日本でコマーシャルを流し始めており、見た人も多いのではないでしょうか。
将来的に完全運転自動化(レベル5)が可能な車が誕生したら、搭乗者は運転する必要がなくなります。そうなると移動時間をどのように有効活用しようか?という話になってくるので、車内で提供できるコンテンツの開発が活発になります。スマホをアップデートするように車をアップデートできたら、さまざまな娯楽を車内で楽しめますよね。自動運転のシステムを常に最新にするためにもSDVは欠かせません。
スマホの登場が生活スタイルを大きく変えたように、SDVも同じく生活スタイルを大きく変える可能性を秘めています。もちろん、そこには多くのビジネスチャンスが眠っており、兆のお金が動く市場となるかもしれません。誰がいち早くその市場をリードできるか、そのために日本も動いているということが分かります。
ちなみに、自動車のシェアを全体、EVで比較するとこのようなになりました。
※各種データを基に弊社作成 実績は2023年
EVについてはテスラが1位なのは何となく想像できますが、それを除くと上位10社中4社が中国です。日本車メーカーは日産連合がかろうじて10位なので、他国と比べてだいぶ出遅れている印象ですね。なお、参考データだとトヨタは24位、ホンダは28位となっていました。
次世代の自動車で覇権を取ることができれば、中国の存在感はさらに強まることとなります。長らく米中対立が続いていますが、次世代車の開発競争は政治的な思惑も絡んでいそうですね。
そういった事情を差し置いてもSDVは大規模なマーケットになりそうで、株式市場にとっても大きなテーマとなるかもしれません。次世代車の開発には、素材、システム、半導体、AI、エンタメコンテンツなど幅広い分野が関わってきます。これらに関連する銘柄に、今のうちから注目しておきたいところです。