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急落はチャンス? 業種別で大きな差も

トランプ米大統領が発表した相互関税を発端として、世界的に株式市場が揺れています。日経平均はさも当たり前のように1000円単位で上下しており、感覚がマヒしてきますよね。長期保有が前提であるとはいえ、NISAで買った投資信託や個別株式もマイナスとなっている事例が多いと思います。


出所:トレーダーズウェブ 24年12月30日~4月9日の日中まで


不安が不安を呼ぶ相場ではありますが、そのような状況でも注目されそうな銘柄はあるのか、今回は考えて聞きたいと思います。


特に売られた銘柄は?

これだけ相場が下がると、銘柄問わず全面安です。ただ、下落率は銘柄によってまちまちで、大まかに業種で分けてもその違いがはっきりと出ています。


<東証業種別の月間騰落率>

各種データを基に弊社作成 4月8日終値基準


上の一覧で分かるように、最も下げたのは非鉄金属、一方でほぼ横ばいなのは不動産業でした。業種別でこれまで差が開くのは驚きですよね。関税による影響が大きいとされる業種ほど、下落率が大きい傾向にありました。


個別銘柄で例を挙げると


<値下がり率上位>

非鉄金属:フジクラ、古河電気工業、住友電気工業など

証券・商品先物取引業:野村ホールディングス:大和証券グループ本社など

石油・石炭製品:ENEOSホールディングス、出光興産など

海運業:日本郵船、商船三井、川崎汽船など

電気機器:ソニーグループ、日立製作所、東京エレクトロン、アドバンテストなど


<値下がり率下位>

不動産業:三井不動産、三菱地所、住友不動産など

食料品:日本たばこ産業(JT)、味の素、明治ホールディングスなど

小売業:ファーストリテイリング、イオン、ニトリホールディングスなど

倉庫・運輸関連業:上組、三菱倉庫、住友倉庫など

陸運業:JR東日本、JR東海、東京メトロ、SGホールディングスなど


このようになります。値下がりトップの電線各社は、生成AIの普及に伴うデータセンター需要により、電線需要が増加したことで株価も大きく伸びていました。ただ、高関税の影響や設備投資減退の影響から期待が後退したことで、反動安も大きいと考えられます。


このほか、証券業→株安で取引減少、石油石炭→景気不安で需要減、海運→貿易戦争で荷動き停滞、電気機器→輸出が多く高関税の影響大きい、これらの懸念が大きく下落した要因になります。


一方、値下がり率が低い業種は、総じて内需が多い印象でした。不動産大手は海外にも進出していますが、売上高の大半は国内です。食料品や小売は生活に必須、倉庫や陸運といったインフラ関連も必須であり、関税リスクが低いとみられたことが底堅い要因といえそうですね。


配当利回りも上昇

NISAを使った好配当株投資は昨今で非常に人気です。ただ、ここ1~2年で全体的に株価が大きく上昇し、配当利回りが低下した銘柄も多く存在していました。そのような状況下、株価が下がったことで再び配当利回りが4~5%台となる銘柄も多く出てきています。


時価総額1兆円以上を対象 配当利回りは4月8日大引け時点


配当利回りは会社予想を基にした数値のため、実際にその通りの利回りが約束されているわけではありません。ただ、昨今では株主還元を強化する傾向にあり、業績連動よりも安定的な配当を実施する企業が増えています。


例えば、減配せず横ばいまたは増配を行う「累進配当」や、DOE(株主資本配当率)を採用している企業などは、今後も配当額が安定しやすいでしょう。累進配当と明言していなくても実質的に累進配当となっている企業も多く存在します。


ただ、急激な業績悪化、事業環境の変化などが起こった場合、配当方針を変える可能性もゼロではありません。いろいろなリスクを考え、この企業なら大丈夫そうと角度を高めたうえで投資することが大切です。まとめると、関税の影響が軽微と思われる企業、配当妙味が増した企業などが、今後の不透明なマーケット環境で注目されやすくなると思われます。


相場では「人の行く裏に道あり花の山」という格言があり、要約すると「他人とは反対のことをやった方が、うまくいく場合が多い」という内容になります。時にはピンチをチャンスととらえるたくましさも必要です。うまく荒波を乗り越えていきたいですね。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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