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コスト最安の日本株アクティブファンドが登場

SBIアセットマネジメントが、日本株式ファンドとしては信託報酬率が国内最安となるアクティブ型の運用を開始しました。名称は「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」で、信託報酬はなんと年率0.099%(税込み)とのことです。


国内アクティブ型ファンドの信託報酬は平均1.5%程度なので、コストは15分の1くらいになります。コンマ数%の差ではなく1.4%程度の差となるため、投資家にとっては長期ではかなり有利なコストになりそうですね。2023年12月12日から運用開始となりましたが、今後どのような展開となるのか考えていきたいと思います。


気になる中身は

高配当と大々的についているため、どのような銘柄で運用するのか気になるところです。月次の運用レポートはまだ作成されていませんが、会社側から事前の運用ポートフォリオ案が開示されていたので確認してみましょう。


 

出所:SBIグローバルアセットマネジメント 2023年12月1日プレスリリースから抜粋


運用当初は30銘柄を選別する予定とのことで、上記の30銘柄が挙げられました。実際の運用でこの通りに組み込まれるかは分かりませんので、だいたいこんな感じになるとみておけば大丈夫です。予想配当利回りはこの時点で4.57%です。TOPIX(東証株価指数)の配当利回りが大体2%なので、市場全体と比べると高い設定になっています。


ちなみに、このモデルポートフォリオで運用していた場合、TOPIX(配当込み)とのパフォーマンスに対しても良好な結果だったとのこと。


 

出所:SBIグローバルアセットマネジメント 2023年12月1日プレスリリースから抜粋


SBIのシミュレーションを見るとしばらくはTOPIXと同程度、ちょっと上振れる場面もあり、という推移が続いていましたが、2022年以降から急速に差が開いていることが分かります。


最近になって上昇している要因ですが、低PBR、好配当利回りの銘柄、いわゆるバリュー株の買いが目立った時期のため、このような結果になったと考えられます。今後も良好なパフォーマンスとなるかはアクティブファンドとしての腕の見せ所なので、期待したいところですね。


新NISAを踏まえて注意したい点

世間で人気のインデックスファンドは、ほとんどが分配金を出しません。投資先から得られた配当金は再投資し、複利で運用していくのが基本です。今回のSBIのファンドは、名称にもある通り年4回(原則として1月、4月、7月、10月の各10日)の分配金を実施する方針なので、インデックスファンドとの違いを押さえておく必要があります。



ポイント(1)

そのままだと複利効果が小さい


前述のように、今回の新ファンドは分配金を出す方針です。その都度1口当たり分配金の分だけ基準価格は下がるので、長期的に上昇していくことを前提とすると複利効果が小さくなる傾向にあります。


では、架空のファンドを用いて分配あり、分配なしを比較してみます。


条件は

・毎月2%ずつ上昇

・1・4・7・10月に100円の分配

・運用コストや税金は考慮せず

・基準価格10000円からスタート

 

※上記条件を基に弊社作成


分かりやすくするために運用期間は1年間にしていますが、分配金を支払うたびに基準価格の差が開いていることが分かります。「分配なし」の基準価格は1年後に12682円(2682円プラス)、「分配あり」は12226円です。「分配あり」は100円の分配金を4回受け取っているので、12226円に400円を足すとトータルリターンは2626円(2226円+400円)となりました。


1年間だけで見ると、あり、なしの差は0.5%程度です。ただ、これが長期となると複利効果で差がどんどんと広がっていくため、あまり軽視はできません。この問題を解消するには、分配金をその都度再投資に回していく必要があります。なお、新ファンドは現在SBI証券のみの取り扱いで、同証券では分配金の再投資コースが選択できます。


こちらに設定しておくと自動的に分配金額の分だけ買い増しをしてくれるので、分配金を使うあてがなければ再投資する方がよさそうですね。ただ、NISAの場合は買い付け枠を余分に消費することになる点には注意が必要です。


ポイント(2)

元本払戻金(特別分配金)に注意


ファンドの分配金には、運用益から出される普通分配金と、投資した元本を一部払い戻す元本払戻金(特別分配金)の2種類があります。基準価格10000円で買ったものが11000円になり、その時100円の分配金が出れば値上がりした内から支払われたことになります。これは普通分配金ですね。基準価格も10900円に引き下がります。簡単に言うと、自動で利益確定されるという感じです。


一方、10000円で買ったものが10050円にしか値上がりしていないのに、100円の分配金を出したらどうなるでしょうか。基準価格は9950円になるため、100万円分買っていたとしたら元本は995000円になります。


一見すると損した!?と思いがちですが、5000円の普通分配金、5000円の元本払戻金(計10000円)を受け取るので、トータル100万5000円になります。損ではないので安心してください。注意点としては、普通分配金は値上がりから出たものなので課税対象、一方で元本払戻金は自分の資金を切り崩しただけなので非課税であることです。


NISA最大のメリットは利益が非課税になることなので、元本払戻金はそもそもNISAのメリットを享受できません。今回の新ファンドに限らず、買った時期や基準価格によっては元本払戻金ばかりになる・・・といった可能性もあるので、非課税制度を最大限に生かしたい場合はタイミングが重要です。


ちなみに、ファンドの決算直前に購入してしまうと、運用益が出ていないためすぐ元本払戻金が発生するというケースになりがちです。NISAを利用した場合、枠の一部がすぐに無駄となってしまうことになりかねないので、分配金の権利落ち後に買う方が無難と言えます。


結局、どうなのか?


今回の新ファンドは低コストということで魅力的と言えますが、年に4回の分配金を支払う方針であることを踏まえると、積み立てとの相性は普通くらいだと感じます。ただ、個別株と違って投資信託は投資金額の自由度が高いというメリットがあります。


新ファンドが組み入れている銘柄を個別株でそろえようとすると、単元株の場合、何百万円~数千万円もの資金が必要です。それを最低100円(SBI証券の場合)から買うことができ、複数銘柄に分散するため個別株と比べるとリスクも抑えやすいです。複利効果が受けにくいものの、長期運用には適した商品と言えるでしょう。なお、個人的な意見ですが、資産形成をする若年層向けというよりも、資産の目減りを抑える年齢層(50~60代)が、ある程度まとまった金額で買うのに向いていそうな気がします。


ファンドあるあるですが、分配ありタイプを先に設定し、後から再投資型を始めるケースがあります。もし、このファンドに無分配(再投資)コースが出たら、積み立てとしてもかなり魅力的ですね。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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