4月17日、なんだかすごそうなニュースが飛び込んできました。佐賀大学理工学部の嘉数誠(かすう まこと)教授が、ダイヤモンドのパワー半導体を使って世界で初めて電子回路を開発したとのことです。半導体の材料については、シリコン、炭化ケイ素(SiC シリコンカーバイド)、窒化ガリウム(GaN)などがありますが、ダイヤモンドになると何が違うのでしょうか。今回は、名前だけで興味をそそられるダイヤモンド半導体について調べていきます。
究極の半導体
ダイヤモンド半導体は、性能や耐久性の高さから「究極の半導体」と呼ばれているようです。佐賀大学の資料によれば、宇宙やBeyond5G(いわゆる6G)に向けた半導体の高周波化・高出力化に必要とのこと。現在、ダイヤモンド半導体で実現できる動作可能領域は、真空管が用いられていると言います。トランジスタに置き換わった現代では、真空管と聞くと筆者はブラウン管テレビくらいしか思いつきません。
シリコンを基準とした性能は以下の通り
出所:佐賀大学 報道発表資料を基に弊社作成
バンドギャップ:数値が高いほど高温での動作が可能 ダイヤはシリコンのほぼ5倍
絶縁破壊電界強度:電圧への強度 ダイヤはシリコンの33倍
熱伝導度:放熱のしやすさ ダイヤはシリコンの17倍
バリガ性能指数:ダイヤはシリコンの5万倍の大電力で高効率のデバイス特性
ジョンソン性能指数:高周波・大電力デバイスの性能を示す指数
マーケットではパワー半導体が投資テーマとして人気ですが、実用段階にあるSiCが話題の中心です。ダイヤモンド半導体は時折聞くことがあるものの、一瞬の話題だけにとどまることがほとんどでした。ただ、こうしてみると性能はほかを遥かに凌駕していますね。
実用化はいつごろか
今回の発表ではダイヤモンド半導体デバイスのパワー回路を開発したことにとどまっており、報道発表資料ではいつ実用化するかまでは言及されていませんでした。今後はさらに高電圧での動作や過酷な動的特性試験を行い、実用化をめざして研究開発を加速するとのことですが、報道によると今後メーカーなどと連携し、3年後の実用化をめざすとしています。
なお、嘉数教授がダイヤモンド半導体の作製に成功したのは21年前の2002年で、当時はNTT物性科学基礎研究所に在籍していたようです。ダイヤモンド半導体自体の開発から、パワー回路の開発までに相当の時間がかかったことを考えると、しばらく先になるのかもしれません。ただ、現代は1年ごとの技術進歩がすさまじいので、案外早く実用化する期待も持てそうです。
出所:佐賀大学 報道発表資料
夢のあるダイヤモンド半導体 関連銘柄は?
ダイヤモンドというと宝飾品のイメージが強いですよね。そのほか、高い硬度を生かしたダイヤモンドカッター、研磨剤、ドリルなどの工業用途で使われています。
<関連しそうな銘柄の一例>
ダイヤモンドを取り扱う上場企業はたくさんありますが、ダイヤモンド半導体に関係しそうな企業はそこまで多くはない印象です。ただ、今後の実用化を見据えて参入してくる企業も増えると考えられるのでアンテナは張っておきたいところですね。