気になるテーマ解説

配当株投資の怖いところ

2024年に新NISAが始まってから、配当への意識がより強くなった感じがします。投資雑誌も配当株をテーマとした特集が多く出ており、銘柄選びの参考にしている人もいるでしょう。


配当金も非課税なら、多く受け取れる方がいいと考えるのはごもっともです。ただ、それだけに傾斜しすぎると恐ろしいことに・・・ということが昨今で起こりました。


その事例は、ニュースでも大きく取り上げられたあおぞら銀行です。

ちなみに、株価チャートは以下のように。

 

出所:トレーダーズ・ウェブ


暴落の原因となったのが決算発表です。2月1日、2024年3月期が最終赤字になる見通しと発表し、下期の配当を無配にする計画としました。あおぞら銀行については、個人投資家を中心に好配当銘柄として注目が集まっていました。2023年前半は配当利回りが6%を超える時期もあり、しかも年4回に分けてもらうことができます。3カ月ごとに配当金がもらえ、利回りも魅力的となると、人気が出るのは必然ですね。


ちなみに、24年3月期の年間配当予想は元々154円でしたが、下期を無配とする結果76円に減っています。暴落前の株価では配当利回りは半分となり、第3四半期(10-12月)、第4四半期(1-3月)は権利を取ったとしても配当がもらえません。銀行が赤字!?という衝撃を受けて売った人もいると考えられますが、多くは無配による怒りの投げ売りだったのではないかと思われます。


配当株選びは慎重に


配当利回りが高いのは魅力的ですが、数字だけ見て選ぶと前述のような事態となる可能性もあります。なぜ配当利回りが高いのか?ということをしっかり調べ、納得できたら買うようにしたいですね。


ちなみに、配当を利益からどれだけ出しているか?というのは、「配当性向」という指標で分かります。

計算式は以下の通り




この計算式にに当てはめると、EPSが100円だったとして、年間配当金が50円だった場合の配当性向は50%となります。仮に配当性向40%をめどにしますと宣言している会社があったとしたら、EPSが100円なら配当は40円程度、EPSが50円なら配当は20円程度となるでしょう。赤字だと基本的に配当が出せません。


なお、あおぞら銀行は2024年3月期の期初時点で、予想EPSが205.51円であるのに対し、年間配当金は154円でした。計算すると配当性向は75%です。利益の4分の3を配当に回すので、かなり多い気がしますね。


参考までに東証プライム・スタンダード・グロースの全銘柄について、配当利回りが高い順に並べてみました。多すぎるので上位30銘柄までとします。

 

※トレーダーズ・ウェブの銘柄スクリーニングを基に筆者作成

配当は予想値なども含みます。


このような結果となりました。配当性向が100%を超えている銘柄もあるので、何かしら個々の理由があるかもしれません。例えば、トレンドマイクロ(4704)は大規模な株主還元を発表しています。手持ちの現金を活用するため、EPSを大幅に上回る配当が実施される予定です。丸三証券(8613)についても内部留保を株主に還元するため特別配当を実施する計画で、このため配当性向が100%を超えることになっています。


このように、なぜ配当性向が高いのか?という個別の理由があるケースも多いです。ちなみに、配当性向のめどを決めている会社は30%~40%が多い印象です。配当と成長投資のバランスは大事ですね。


配当株として人気な銘柄の中には、常に配当性向が100%に近い銘柄もあります。減配すると株価が急落しかねないため、減配したいけれどそれができない・・・という事情があるかもしれません。ただ、好配当株には減配による株価急落のリスクがある、ということを忘れないようにしておきたいですね。


この連載の一覧
手取りが増えたら何をしたい?
気を付けたい権利取りのポイント
【気になるテーマ解説】DX銘柄も生成AI活用が必須に
来年のNISA枠はどうする?
投資促進の一方で詐欺被害も多発
市場予想との付き合い方
政策保有株の解消良し悪し
「地面師たち」が大ヒット 厳しい日本の土地事情
7分の1は空き家の日本
QUOカードはなぜ人気なのか
住宅ローン人気銀行の動向まとめ
米大統領選、どこに恩恵?
中小型株への資金回帰が鮮明に
国際会計基準のルール変更へ 営業利益が分かりやすく?
新紙幣の発行開始でキャッシュレスが進む?
次世代自動車「SDV」とは?
マンション価格下落も依然高い そういえば晴海フラッグは?
プロが注目する配当株は?
出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化
日本の長期金利が1%台に 今後の影響は?
日経平均と半導体株の関係
株式分割は本当に好材料なのか
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております