気になるテーマ解説

政策保有株式の売却が進む(2)

依然に取り上げたテーマですが、その後も続々と政策保有の解消を目的とした売り出しが発表されています。時代の流れからか、まだまだ続きそうな様子です。投資家としてどのように対応したらよいか、前回に続いて考えてみようと思います。


おさらい

政策保有株式とは、とある企業が業務上の関係で他社の株式を保有していることです。株式を保有している分だけ影響力が大きくなりますので、都合が悪い議案への反対意見が通りやすくなります。つまり、お互いの経営陣がウィンウィンの関係を保ちやすいというメリットが出てきます。


一方、こういった性質上、癒着が問題になります。体制が刷新されにくいため、古い体質が残りやすい、経営が腐敗しやすいなどの問題点もありますよね。株主からしたら、そんなことしていないで経営を効率化しなさいよ!と思うのも無理はありません。一長一短であり長らく続いた政策保有ですが、昨今ようやく解消の動きが強まってきました。物言う株主(アクティビスト)の存在も影響していそうです。


2月に発表された売り出し

2月半ばに10-12月期の決算発表ラッシュが一巡した後、見計らったように公募増資と売り出しが発表されました。このうち、売り出しだけに限ってみると2月19日時点で5件です。これまでは月に1件あればよい方でしたので、格段に増えていますね。


 


これら5社の売り出しでは、数十~数百万株が一気に市場に放出されます。公募でたくさんの投資家に割り当てられますので、数百~数千人規模で取引参加者が増えることになります。この中では全員が長期保有というわけではないので、すぐ売る人も多く存在します。つまり需給が悪くなるということです。


5社とも売り出し発表の直後は下落することに。

下のチャートは東映アニメーション


出所:トレーダーズ・ウェブ


ちなみに、売り出しに応募すると、市場価格より数%安く買うことができます。つまり、売買できるようになった日(受渡日)に買値を上回っていればすぐに利益が出ますよね。こういった特性があるため、売り出しに参加して短期で利益を狙う投資家は多く存在します。


なるべく避けたい売り出しリスク

基本的に、売り出しが発表されると株価は大きく下落します。既存の株主からすれば、たまったものではありませんよね。政策保有が多いからといって絶対に売り出しが行われるわけではありませんが、できるだけそういったリスクは避けたいものです。


政策保有株式が多い企業の上位3位はメガバンク3行で、その後に損保各社やトヨタ自動車、京セラなどが並んでいるようです。このためか、これまでの売り出しを見ると金融機関が売出人となっているケースが多く見受けられます。


全企業が保有する政策保有株を調べるのは途方もない作業ですが、金融機関に絞ればだいぶ楽になります。まずは大株主に銀行がいないかを確かめてみると良いでしょう。逆に考えれば、政策保有株式が多い企業については、それを解消する期待も高まります。


売却資金を株主還元に充てるのか、それとも成長投資に充てるのかは分かりませんが、今よりも一歩先へ進むことになるのは間違いないでしょう。売り出しのリスクをチャンスと捉え、銘柄をリサーチするのも面白いかもしれません。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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