気になるテーマ解説

インターネット広告に試練 Cookie規制とは?

インターネットでさまざまなウェブサイトにアクセスすると、「Cookie(クッキー)」の同意を求められることがよくあります。この記事を見ている人も、ほとんどの人が経験したことがあるでしょう。そもそもCookieとは何なのか?という人が多いと思いますが、昨今ではこのCookieに対する規制が強まっています。


 

※画像はイメージ


Cookieとは?

Cookieは、ウェブサイトにアクセスした人に関する情報を保存する仕組みのことです。通販サイトでとある商品を見たとします。その後再び通販サイトにアクセスしたとき、前に見た商品がオススメとして表示されることがありますよね。


これは、Cookieという仕組みによってその人が見た商品という情報がウェブサイト上に保存されているため、同じ人が再アクセスしたときにすぐに表示できるということになります。IDやパスワードを入力する必要があるウェブサイトであっても、cookieが有効だと再入力せずに入れることができます。何かと便利な仕組みでであることには間違いありません。


ちなみにCookieはファーストパーティCookie、サードパーティCookieの2種類があり、役割も違います。ちょっとややこしいですが、簡単にまとめると以下のように。

 

要するに、ID、パスワードなどを1つのサイトで完結するのはファーストパーティCookieの仕組み、Aサイトで見た商品などがBサイトでも広告表示されるのがサードパーティCookieの仕組みということですね。


プライバシー保護の観点から批判も

Cookieが使われることでインターネットの利用を快適になるものの、プライバシー侵害の観点から指摘があり次第に規制が始まりました。最初は2016年。EU一般データ保護規則(GDPR)が制定され、Cookieの取得には同意が必要になったようです。それまでは同意なしにCookieが取得されており、今あるような「同意する」「拒否する」といった選択がなかったとのこと。


米国のカリフォルニア州でもCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が制定され、Cookieに関する規制が定められました。行政ではなく、民間企業も動きました。その一例が、米アップルによるブラウザ「safari」へのトラッキング防止機能実装です。これにより「safari」ではサードパーティCookieが基本設定としてブロックされるようになりました。現在、こういった規制が強まっているのはサードパーティCookieが中心です。


2024年からグーグルも規制開始


2024年からは、米グーグルのウェブブラウザ「Google Chrome」においてもサードパーティCookieの規制が徐々に始まります。Google Chromeの世界シェアは、パソコン・スマホともに60%台と断トツの1位。最も使われているブラウザで規制が入るとなると、サードパーティCookieを利用したマーケティングはかなり厳しくなりそうです。


ちなみに、Google Chromeでは、今年1月から一部のユーザーで「トラッキングプロテクション」のテストが始まったようです。サードパーティCookieによる追跡を制限する機能なので、「safari」のトラッキング防止と似たような機能ですね。段階的に拡大して、年後半にはすべてのサードパーティCookieを廃止する計画とのことです。


注目されるファーストパーティ

インターネット上ではさまざまな広告であふれていますが、サードパーティCookieが規制されることでユーザーに対するマーケティング手法も変える必要があります。


サードパーティCookieを現実世界で例えると、無料アンケートに答えたら知らない企業からダイレクトメールが届いた・・・みたいな感じです。興味がなければ不快に思うこともありますよね。数打ちゃ当たる戦法です。


他方で、服が欲しいと思った人が洋服店に行ったとき、店員の一押しで買うケースはよくあることです。もともと買おうか悩んでいる人なので、「興味がない」の段階をクリアしていますよね。インターネットに置き換えると、通販サイトにアクセスして商品を見ている人は、その商品に多少なりとも興味があるということです。


ファーストパーティCookieを活用すれば、その人が何の商品をどれだけの時間見たのか、カーソルをどのように動かしたのか、どのページの滞在時間が長いか、などの行動が分かります。そういったデータを分析すれば、わざわざ自社サイトに来てくれる見込み客に対してより魅力的なセールスを仕掛けられるということです。


デジタルマーケティングを手がける上場企業はたくさんありますが、こういった事情から今後はファーストパーティCookieに強みを持つ企業への注目度が高まるかもしれません。

 


ネットリテラシーも求められる


通販サイトを見ていると突然「初回限定クーポン!」「数時間限定で●%オフ!」みたいなポップアップが出てきたことはないでしょうか。これもファーストパーティCookieを活用したマーケティングの1つです。そういわれると、ついつい焦って買ってしまいそうになりますよね。


新聞記事で見た内容ですが、いつでも解約できると謳っておきながら連絡がつかない、制限時間を過ぎたら時間が更新される、キャンセルに応じてもらえないなど、悪質サイトの被害にあった人たちへのインタビューがありました。デジタルマーケティングは成長市場と位置付けられていますが、市場が大きくなるほど闇も深くなるのが世の常です。だまされた!とならないよう、常に心掛けておきたいところです。


この連載の一覧
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております