現在、日本株市場では株主優待制度を廃止する会社が増えています。有名企業が実施する株主優待制度を魅力的に感じる人は多く、食事券、割引券、カタログギフト、自社製品など、その種類はたくさんあります。それらを目当てに長年保有していたものの、優待廃止を受けてガッカリとなった投資家は多いかもしれません。
株主優待制度を廃止するのは、どちらかというと大企業が多い印象です。優待をもらっても困るという海外投資家からの圧力が大きく、公平な株主還元を検討した結果、配当に集約するといった流れです。
一方で、時流に逆らって株主優待制度を新設する企業も意外と多く存在します。大企業と比べると認知度が低い中小型銘柄に多く、週に大体1~2社は株主優待制度の新設が発表されているような感じがします。
前述のように、自社製品やカタログギフトを贈呈する内容もありますが、特に多いと感じるのがQUOカードです。株価の反応も大きく、発表後はストップ高まで買われることも少なくありません。いったい何が投資家をそこまで引き付けるのか考えてみたいと思います。
そもそもQUOカードとは何なのか?
QUOカードは、株式会社クオカードが発行しているギフトカードです。額面は300円から1万円まであり、シンプルなデザインのもの、風景やイラスト、企業ロゴが入ったものまでさまざまな種類があります。贈り物や景品としてもらったことがあるのではないでしょうか。
クオカードは東証プライム市場に上場するティーガイアのグループ会社で、ティーガイアは携帯販売代理店の国内最大手です。ちなみに、ティーガイアは現在、住友商事が筆頭株主です。QUOカードってどこのサービス?となったら、住友系のサービスと思い浮かべれば安心感がありますね。
なぜQUOカードが人気?
QUOカードが人気となっている大きな理由は、現金のように使えることでしょう。自社製品や優待券は、使わない人からすると貰っても仕方がありません。
一方で、QUOカードであればコンビニやドラッグストア、カフェ、ガソリンスタンド、ホテルなど、約6万店舗で使用することができます。実質的には配当金と言っても差し支えないので、幅広く使えるQUOカードは万人受けする優待として人気です。企業のオリジナルQUOカードを集めるのが趣味といった人もいるようですね。
株主優待制度の新設を発表した企業
何かと便利なQUOカードですが、2024年に優待新設を発表した企業の株価がどうなったのか見てみたいと思います。すべては掲載しきれないので、一部を抜粋しました。
※各社発表資料を基に弊社作成 2024年8月21日時点
各社の内容はいずれも100株以上が対象。発表後はもれなく株価が大きく上昇していることが分かります。特に、デュアルタップの買われ方が凄まじいですね。4月9日、10日は寄り付かず、ストップ高比例配分で終えました。
同社の発表日の終値は413円(単元購入に必要な資金は4万1300円)でした。その期の期末配当予想12.5円(100株で1250円)と、QUOカード4000円を合わせると、実質的にもらえる金額は5250円になります。
4万1300円の資金で5250円がもらえるとなると、その利回りは驚異の12.7%です。2日ストップ高となっても利回りは依然として高水準なので、買いが殺到するのも納得できます。ちなみに2営業日連続でストップ高比例配分となったため、11日は制限値幅の上限が拡大されることとなりました。結果、その日は高値で973円(ストップ高)まで上昇。たった3日で株価が一時2.4倍です。
デュアルタップ 日足チャート
出所:トレーダーズ・ウェブ
配当+QUOカードの利回り次第では、ほかの銘柄であっても2倍以上になる可能性があります。わざわざQUOカードの権利を取らなくても、短期的に大きな値上がり益を取れそうな気がしてきますよね。このことも買いに拍車をかける要因と考えられそうです。
気を付けたい税金の話
話は変わりますが、気を付けたいこととして税金のお話をします。大きな値上がりや、魅力的な利回りが期待できるQUOカードですが、実は株主優待で貰える品物は税金の対象になります。株の売買益は譲渡所得、配当金は配当所得、そして優待は雑所得に該当するため、税制上は確定申告する必要があります。
特定口座(源泉徴収あり)だと配当金は税引き後の金額が入金されます。一方、QUOカードの額面が税金分差し引かれて渡されることはありませんよね。見かけ上は税金がかかっていないよう思いがちですが、QUOカードを非課税で貰えるというわけではありません。
なお、会社員の場合で、給与所得以外の収入が20万円以下であるなど、一定の要件を満たす人は確定申告の必要はありません。詳しくは国税庁ホームページをご参照ください。
とは言っても、株主優待を目的とした投資家はたくさんいらっしゃいます。中には、QUOカードや優待券、ギフトなどの総額が20万円相当以上になってしまう場合があるかもしれません。ただ、株主優待に関する脱税のニュースも聞いたことがないですよね。
誰が20万円相当以上を受け取っているのか、どれだけの経済的利益を受けたのかを正確に把握することは困難です。こういった事情もあって、株主優待は課税対象である一方、見逃されているというのが現実ですが、かといってまったく気にしなくてもよい?というわけでもありません。今後、何かしらの法改正が出てくる可能性も0ではないので、株主優待は税金の対象になるという事実は気にとどめておきたいところです。