気になるテーマ解説

中小型株への資金回帰が鮮明に

2024年も後半に入りました。今年は辰年ということで、株価は上昇しやすいというアノマリー(経験則)があります。相場格言通り、日経平均はバブル時の高値を上回り、史上初の40000円台に乗せました。


指数だけ見れば、今年に株を買った人はみんな儲かっている・・・と思いきや実はそうではありません。今年に入って強く買われたのは、大型の半導体関連株、大型の低PBR、好配当株などが中心でした。時価総額が小さい中小型株は目立って上昇することがなく、これらを買った個人投資家があまり儲かっていないというのが現状です。


ただ、そのような状況に変化の兆しが見えてきました。今後はどのような展望が期待されるか、考えてみようと思います。


これまでの中小型株

値上がり率ランキングでは中小型株が毎日入れ替わりで上位に顔を出しており、ストップ高となる銘柄も少なくありません。そういった場面を見続けていると中小型株は買われているんだなと思ってしまいますが、指数ベースではそのような期待とは程遠いの状況・・・


東証グロース市場250指数 週足

 

出所:トレーダーズ・ウェブ


上のチャートは期間10年程度の比較的長めのものです。その間の推移を見てみると同じ範囲を行ったり来たりしており、世間で言われているような史上最高値とは程遠い世界にいます。ちなみに、東証グロース市場250指数(旧マザーズ指数)の史上最高値は2006年1月16日につけた2799.06ポイントです。

 

ほかの指数と比較してみるとこのようになりました。

※各種データを基に弊社作成

2016年4月終値を100として指数化 2016年4月末~24年7月16日

 

大体8年のチャートですが、最も上昇しているのは日経平均で、要は大型株です。その次はTOPIX、TOPIXスモールと続き、東証グロース市場250指数のみ40%下落という結果です。TOPIXスモールも小型株で構成されていますが、中身は東証プライム銘柄です。つまり、小型株の中でも東証プライム銘柄は買われ、東証グロース銘柄は買われないという動きでした。


東証グロースの逆襲か


さえない動きを続けていた東証グロース銘柄ですが、7月に入り少し様相が変わってきています。エヌビディアを中心とした半導体株の上昇が一服し始め、その資金がほかの銘柄に流れているような雰囲気が強まってきました。


11月の米国大統領選挙ではトランプ氏率いる共和党が優位との見方が強まっており、市場では景気刺激策に期待した買いが先行している段階です。これまでは半導体株やマグニフィセント7と呼ばれる大型テック株中心の相場でしたが、7月半ばからは景気敏感株と呼ばれる資本財や住宅などの銘柄が鮮明に買われてきています。


これまで一部の銘柄に集中していた資金がほかに流れ始め、それが中小型株にも向かっているようです。それを裏付けるように、米国の小型株指数であるラッセル2000が急激に動き始めました。米国の小型株が強いということで、国内の小型株も買われ始めたといえそうですね。


<直近の大型テックと小型株は真逆の動き>

※各種データを基に弊社作成

2024年4月1日終値を100として指数化 期間は7月17日終値まで


ちなみに、東証グロース市場250指数の直近の動きを見てみると、このように推移しています。

出所:トレーダーズ・ウェブ 日足 2024年7月18日11時時点


しばらく下落が続いていたところ5月末~6月初頭にかけて底打ちし、徐々に持ち直す展開となっています。直近では上値抵抗線となりやすい200日移動平均線(赤い線)も上回ってきているので、本格的な持ち直しが期待されるところです。一辺倒にぐんぐん上昇するとは言いづらいですが、辛酸をなめる状況が続いた小型株に光が差したと考えたいですね。引き続き、動向に要注目です。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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