気になるテーマ解説

シリコンアイランド九州は復活か

2月24日に、台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場の開所式が開催されました。さまざまなメディアでも取り上げられ、熊本では早速経済効果が現れてきました。


産経ニュースによれば、熊本県内の人手不足は飲食店や清掃、コールセンターなど業種を問わず広がり、人材確保に必要な時給水準は1.5倍程度に上昇したとのこと。ホテル不足や交通渋滞、不動産価格の高騰も熊本名物となっているようです。TSMCの影響力がいかに大きいかを感じられますね。


TSMCが熊本に決めた理由


世界は広いですが、わざわざ熊本を選んだ決め手は何だったのでしょうか。理由をかき集めてみると、いろいろな理由がありました。


<半導体企業が集まっている>

まず熊本には半導体関連企業が集まっていることが挙げられます。九州産業大学のレポートによれば、九州には大小で約1000社の半導体関連企業があり、そのうち200社以上が熊本に集中しているとのこと。ソニー、ルネサスエレクトロニクス、三菱電機などの大手企業も熊本に工場を置いています。


 

出所:九州経済産業局


<水が豊富>

熊本は良質な水あります。半導体の製造工程では洗浄により大量の水を必要とするため、水資源が豊富な地域が適地です。しかも地下水を使用できるため、天候に左右されず安定的に水を使用できることが大きなメリットです。台湾との距離も比較的近いことから、総合的にみて熊本が選ばれました。


ちなみに、熊本市は水道資源をすべて地下水で賄っているとのこと。市が「蛇口をひねればミネラルウォーター」と公言しており、常においしい水が飲めるのはうらやましい限りです。なお、台湾現地では過去に台風が上陸しなかったことで水不足に陥ったことがあったようです。そういった地域の事情も熊本への決定を後押ししたと考えられます。


一つ心配になるのが地下水の枯渇です。もちろん熊本市としても地下水かん養域(水が浸透しやすい田畑や森林などの土地)の減少を認識しており、昭和50年代から地下水保全条例の施行などにより地下水を守る取り組みを続けています。半導体工場が増えるほど水の消費量は増えますので、地下水を持続可能な資源とするために官民一体で継続的に取り組んでいかなければなりませんね。



半導体で盛り上がる九州

九州地域で半導体関連の投資が活発となったことで、冒頭のとおり現地では値上がりや人手不足が進んでいるとのこと。報道ではバブルというワードが強調されているように感じますが、人が集まり、地域経済が活発化、時給も上昇しているのであればインフレが起こるのは自然なことです。足元を見た家賃設定も散見されるので、地域の経済成長からかけ離れた高騰となればバブル感も出てきます。仮にそうなるとしても、明日明後日に弾けるというわけではありません。みなの感覚が麻痺してきたころに突然やってくるので、おそらく数年先の話となりそうです。ちなみにTSMCの第2工場も計画されています。まずは、これからさらなる盛り上がりが期待される九州で、力を発揮できそうな企業を探した方が面白そうですね。


<九州関連銘柄の一例>

 

※上記銘柄を推奨するわけではありません



この連載の一覧
手取りが増えたら何をしたい?
気を付けたい権利取りのポイント
【気になるテーマ解説】DX銘柄も生成AI活用が必須に
来年のNISA枠はどうする?
投資促進の一方で詐欺被害も多発
市場予想との付き合い方
政策保有株の解消良し悪し
「地面師たち」が大ヒット 厳しい日本の土地事情
7分の1は空き家の日本
QUOカードはなぜ人気なのか
住宅ローン人気銀行の動向まとめ
米大統領選、どこに恩恵?
中小型株への資金回帰が鮮明に
国際会計基準のルール変更へ 営業利益が分かりやすく?
新紙幣の発行開始でキャッシュレスが進む?
次世代自動車「SDV」とは?
マンション価格下落も依然高い そういえば晴海フラッグは?
プロが注目する配当株は?
出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化
日本の長期金利が1%台に 今後の影響は?
日経平均と半導体株の関係
株式分割は本当に好材料なのか
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております