気になるテーマ解説

訪日旅行者は今後も伸びる?

先日、有給休暇を取得して東京の築地に行きました。休みの日も勤務先の近辺をうろついていたわけですが、平日にもかかわらず築地の商店街は人でごった返し。ただ、日本人でいっぱいというわけではなく、見たところ半数以上が海外からの旅行者でした。日本の名物といえばスシ、刺身ということもあってか、市場が移転しても観光地としては健在です。下の写真の3倍くらいは人がいた印象です。


 

※イメージ


既に感じているように、訪日旅行者が目に見えて増えました。一部メディアによるとコロナ収束後、海外から見た行きたい旅行先ランキングでは日本が1位になったといいます。最近の動向をみるとそのランキングも間違いではない印象ですね。


 

日本政府観光局(JNTO)発表資料を基に弊社作成


JNTOの発表データを見ると世界的に訪日客は増加していますが、最新データの22年4月→23年4月では韓国・台湾・香港といったアジア圏からの渡航者が際立って伸びました。

なお、JNTOは毎月中旬に訪日外国人の動向を発表しています。


今後も訪日客は増える?

目に見えて訪日旅行者が増えているのは分かりますが、今後も訪日客数は増えるのでしょうか?旅行関連やインバウンド関連の企業などは訪日客の動向が業績に大きく影響しますし、株式市場においても訪日客に関するニュースなどで株価が動いたりします。投資家としても気になるところですよね。


今後も訪日外国人が増えるかどうか、それぞれ要因を探ってみたところ以下の要因が考えられました。



「4月29日午前0時以降に日本に入国する場合には、有効なワクチン証明書または出国前検査証明書の提示は不要」と政府が発表したように、現在では水際対策が終了しています。様子を見ていた外国人が減れば、日本への旅行者数が増えそうですね。


ご存じの通り、今は円安です。コロナショック前の20年2月は1米ドル110円前後でしたが、23年5月末時点では140円前後です。トルコリラなど一部を除きさまざまな通貨に対して円安が進んでいますので、同じ予算でも使える金額が増えます。今がチャンスと考える海外旅行者も増えそうです。


中国からの訪日客数も大きく増加していますが、話によると日本ツアーは再開しておらず、個人での旅行が中心になっているようです。中国政府が日本へのツアーを解禁していないことが理由とされています。対中国への規制が強まりつつある中で今後解禁されるかは何とも言えませんが、今後の続報に注目したいところです。



前述のとおり日本では水際対策が終了し、コロナの第5類移行も実施されました。ただし、海外で爆発的に感染者数が増加したり、危険度の高いコロナ変異種などが発生した場合、再び水際対策が実施される可能性もゼロではありません。


今のところは円安方向ですが、金融政策などによって一転して円高方向へシフトすることは十分に考えられます。日銀が金融緩和政策を縮小するだけでなく、米国の金利が下がることも円高要因の一つです。為替はさまざまな要因で動きますが、大きく円高に振れた場合は

旅行費が割高になることから、様子を見る人が増えることが考えられます。


訪日外国人が以前の水準に回復するには、中国からの旅行者回復が欠かせません。ただ、5月下旬には現地でのコロナ感染が再拡大しているといった報道も出ており、やや不安なところです。中国政府は新規感染者数の統計発表をやめているため、どれだけの規模かは報道ベースでしか把握できなさそうです。


隣国がミサイル発射の実験を繰り返していることも懸念の一つです。最近、北海道と沖縄にJアラート(全国瞬時警報システム)が発令されたことは記憶に新しいと思います。今のところ日本に直接的な被害はないものの、地政学リスクの上昇は訪日の見送りにつながるおそれがあります。


プラスが続いてほしいが

ここまで良い悪いを述べてきましたが、各国の政策変更や景気動向など、さまざまなことがキッカケで訪日旅行者の動向も変わるでしょう。ニュースのヘッドラインで株価が上下することもありますが、筆者の願いとしては景気のためにも訪日旅行者の増加傾向が続いてほしいところです。いざ関連銘柄に投資する時は、ニュースなど速報性のある情報を頼りにするのも重要ですが、実際に観光地を訪れて雰囲気を感じてみることも大切かもしれません。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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