2023年2月、住宅金融支援機構が提供するフラット35の最低金利が1.88%に引き上げられました。昨年12月に日銀がイールド・カーブ・コントロール(YCC)修正したことにより、フラット35の基準となる長期金利が上昇したためです。
1月は1.68%だったため、3000万円の借り入れで比較してみると
1.88%:総返済額4097万円
1.68%:総返済額3970万円
となり、2月に契約した人は1月よりも返済額が127万円増える計算です。固定金利を検討している人だと、ためらってしまうかもしれません。
なお、現在の住宅ローンは変動型を借りる人が大半のようなので、現時点で返済に影響が出た人は多くはないもようです。とはいっても、変動金利の基準となる短期金利も、日本の景気が良くなればいずれ上昇する運命にあります。今回のYCC修正をキッカケにその懸念が急拡大しており、短期金利がいつ上がるのか?といった議論がいたるところで繰り広げられていますよね。
現在では変動金利はいずれ上がる、土地は高い、建物も高いと3拍子そろっていることもあり、住宅購入の意欲は減退方向にありそうです。コロナ禍で発生した特需が一服したこともあり住宅メーカーの事業環境は厳しいようですが、家を売らないわけにはいきません。今後、厳しさが増しそうな住宅業界において、今回は何に注目するべきか考えてみます。
マイホーム購入時に重視される項目
マイホームは多くの人が一生に一度となる買い物です。なので、失敗した!とならないように各々の条件があると思います。マイホームを購入する際に最も重視されていることは、何となく察しがつくと思いますが「価格」です。いい物件を安く買うに越したことはないので当然ですよね。
出所:大成建設ハウジング 「マイホーム購入に関する意識調査」2014年
上のグラフはマイホームの購入検討者が重視した項目ですが、「価格」「耐震性」「間取り」が群を抜いています。2014年に実施された調査ですが、現在においても上位の項目を重要視する人が多いはずです。
今後は住宅性能がいっそう重要に
価格などはもちろん大事ですが、昨今のエネルギーコスト上昇も相まって、設備・耐久性・断熱・気密などの住宅性能の高さが改めて重要視されてきています。前述のようにマイホームは一生のうちに何度も買うようなものではありませんので、可能な限り長く快適に住める住宅を選びたいところ。
戸建てであれば数年おきの外壁塗装や屋根の修理、マンションであれば毎月の管理費や積立金など、何かと費用がかかります。せっかくマイホームを買ったのに、夏は暑く・冬は寒い家だと光熱費が高くなりますよね。価格だけでなく住み続ける間のランニングコストも考慮して物件を選ばないと、安く買ったつもりがトータルでは高かった・・・という後悔にもつながります。
現在では国が環境性能の高い住宅を推奨していることもあり、各社がこれに力を入れています。住宅ローン減税を受ける際、環境性能の高い家ほど大きな優遇を受けられますよね。昨年12月には、2025年から新築住宅への太陽光パネル設置を義務化する条例が東京都で成立しました。大胆な政策であり賛否も分かれるところですが、今後は住宅性能が低いと売れにくくなるといった潮流が強まりそうなニュースでもあります。
出所:国土交通省
2022年から住宅ローン減税の適用基準が変更され、上の表のようになりました。控除率が1.0%→0.7%に引き下げられたことが話題となり、省エネ性能が高い住宅への借り入れ限度額がより細分化されたことも大きなポイントです。
住宅メーカーの業績は二極化するかもしれない
国の制度やコスト面から、これから家を買おうとする人は必然的に住宅性能を重視することになるでしょう。最近ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:ゼッチ)という言葉を耳にする機会が増えました。高い断熱性能や高効率設備の使用、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用により、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にするといった省エネ性能の高い住宅を指します。
上の表にもあるように、省エネ貢献度によって長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅・その他住宅とレベルが分けられています。住宅が売れにくくなる懸念があるなかで、これからは各社の省エネ推しが加速するでしょう。
これらを踏まえると、今後は株式投資で住宅関連株や不動産関連株に注目する場合、顧客ニーズに合った省エネ住宅を提供できているかどうかも重要なポイントになりそうです。省エネ性能が高い建材を手がけるメーカーなどもチェックしておきたいところですね。