気になるテーマ解説

HEMSとは

2月7日に経済産業省などが行う住宅支援策「子育てグリーン住宅支援事業」の公式ホームページが開設されました。筆者も昨年12月に取り上げましたが、「子育てグリーン住宅支援事業」は前回の「子育てエコホーム支援事業」に続く支援事業です。今回は補助金額が最大160万円に引き上げられるということで、業界や住宅購入を検討する人から大きく注目されていた事業でもあります。

 

出所:子育てグリーン住宅支援事業 公式ホームページより抜粋


ただ、事前に説明されていた条件に加えて新たな要件も追加されており、これが界隈に衝撃を走らせています。一体何があったのか、今回解説をしていきたいと思います。


追加の条件「HEMS」

補助金として最大160万円(GX志向型住宅)を受け取るには国が定める条件を満たす必要があり、2月7日以前は断熱等性能等級「6」以上、一次エネルギー消費量の削減率35%以上(再エネ含む100%)の2つとなっていました。


これらの達成に向けて施主も動いていたところ、公式HP開設とともに「高度エネルギーマネジメントシステムによる制御(HEMS)」が要件として新たに追加。多くの人がHEMSって何?と困惑する事態となりました。人によってはすでに建築工事が始まっており、新しい要件への対応が間に合わないケースも出ているもようです。


そもそも「HEMS」という言葉自体が聞きなれないですが、正式名称は「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」。頭文字をとって「HEMS(ヘムス)」といいます。端的にいうと、専用のモニターやパソコン、スマートフォンなどによって家庭で使うエネルギーを可視化したり、制御したりするシステムのことです。



HEMSで実現すること

HEMSを導入すると家庭内で使用するエネルギーを数値で確認できるようになるため、電気のムダ遣いや使用の傾向がわかり、節電の目標を立てやすくなります。また、モニターだけでなくスマホやタブレットでも家電の操作ができるため、効率的な電気の使用、帰宅前にエアコンを付ける、電気代が安い時間帯に自動で家電を使用といった活用もできます。


<イメージ図>

 

出所:国立研究開発法人 国立環境研究所


ちなみにHEMSへの対応は、スマートメーター、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、EV(電気自動車)充電器、エアコン、照明機器、給湯器といった重点8機器があります。これらが効率よく自動で制御できれば、快適に過ごすことができそうな気がしますね。政府としても、HEMSを普及させることで脱炭素化やスマートシティ化を加速させようという意図があるようです。


なお、HEMS市場はパナソニック、シャープ、京セラの寡占状態とされており、パナソニックのシェアは50%以上とのこと(SVPジャパン調べ)。自社製品との連携はもちろん問題ないと思いますが、HEMSを導入する際には、すでに使用している家電、購入しようとしている家電との連携ができるのか、しっかりと下調べをする必要がありそうです。


HEMS自体の導入コストは決して安価ではなく、メーカーにもよりますが本体のみで10万円前後はかかるようです。電気工事もありますので、そういった諸々の費用を込みにすると数十万円はかかる可能性があります。導入すれば便利になるのかもしれませんが、コストに見合うかどうかは人それぞれとなりそうですね。


国が求めるHEMSの要件は?

冒頭で申し上げたように2月7日に公式HPが開設されました。その後、2月26日に更新されており、HEMSについても「検討中」→「後日公表」に修正されました。詳細がわかることを期待していましたが、この記事を書いている時点では具体的なことはまだ何もわかりません。

 

出所:子育てグリーン住宅支援事業 公式ホームページより抜粋


HEMSと言っても、メーカーや商品によってできることは異なります。HEMSを導入しないと160万円がもらえない!と焦ってしまうと、取り返しがつかない…なんてことになりかねません。補助金を目的にHEMSを検討する場合は、今後公表される要件を満たす製品かどうかしっかりと確認する必要があります。


何はともあれ、突然の要件追加に関してはどのような思惑があったのかなかったのか、部外者の筆者にはわかりません。使い方次第では生活コストを抑えて快適な家を実現できるHEMSですが、昨今では諸事情により建築コストは継続的に上昇しています。快適な家を追求しすぎた結果、建築費用が大幅に増加。ローンの支払いや生活費の工面などが大変・・・と本末転倒にならないように気を付けたいところです。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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