日本では毎年のように出生数の減少が話題となりますが、2022年については80万人を割れる見通しとなりました。21年は81万1622人だったため、確報値の発表次第ですが2万人以上の減少となる可能性もあります。
止まらない出生数の減少
少子化ついては、仕事と育児の両立が難しい、資金がない、将来の不安、そもそも出会いがない・・・などさまざまな理由が指摘されており、挙げるときりがありません。コロナ禍では外出機会が抑制されたこともあり、今でこそ持ち直してきているものの、すぐに持ち直すこともなく、20年以降の出生数減少に拍車をかけているとみられます。
出生数の推移
出所:e-Stat 政府統計の総合窓口 1899年~2020年
統計が開始されてから120年以上が経過しますが、100万人を割れたのは2016年が初めてです。2000年以降は横ばいと言える期間がほぼ存在せず、減少の一途を辿っていることがわかりますね。このままだと2053年には日本の人口が1億人を割れ、2090年には約6700万人、2110年には約5300万人にまで減少するという予測もあります。
新たな少子化対策は功を奏するか
もちろん、このまま見過ごすわけにもいかないので、政府や自治体も少子化対策に乗り出しています。直近では、23年に入り岸田首相が年頭記者会見で「異次元の少子化対策」を表明。東京都の小池知事も18歳以下に月々5000円を一律給付する少子化対策案を発表しました。
出生数80万人割れの見通しを受けて「さすがにヤバい」と思ったことが発案のキッカケとされていますが、日本では過去にも少子化対策は行われています。
<例>
18年度~22年度・・・子育て安心プラン
待機児童の解消、女性の就業率の上昇を踏まえた保育の受け皿整備
15年度~・・・ニッポン一億総活躍プラン
保育人材確保のための総合的な対策、希望出生率1.8の実現
14年度~・・・放課後子ども総合プラン
共働き家庭などの「小1の壁」打破、次代を担う人材育成、放課後児童クラブなどの整備
このほかにも、「選択する未来」委員会の設置、少子化危機突破のための緊急対策、待機児童の解消に向けた取り組み、子ども・子育て応援プラン、少子化社会対策大綱、エンゼルプランなどさまざまな対策が実施されました。
これらの政策の中には自治体独自の働きなどもあって、一部地域では待機児童の解消などが達成されています。ただ、出生数は年ごとに多少の増減はありつつも右肩下がりの傾向が続いており、日本全体で見ると今までの政策は結果的にうまくいっていないと言えそうです。
今回、岸田首相が表明した新たな少子化対策については、一部報道により「非正規労働者などを対象とした子育て給付の創設」が伝わっていますが、公式には発表されていません。子育てにおいて教育資金は人生3大支出の1つとも言われているので、月並みな内容では失望されてしまいます。今後、具体的にどのような政策が打ち出されるのかに注目したいところですね。
期待先行になりがちな子育て関連銘柄
前述の新政策を受け、新年相場は子育て関連銘柄がこぞって物色されました。なかでも就労支援や育児支援事業を展開しているSERIOホールディングス<6567>は、1月5日、6日、10日ともに終値ストップ高、11日は場中ストップ高といったように、やり過ぎ感も・・・
買われた銘柄の一例
子育て関連銘柄が物色されるのは今に始まったことではなく、新たな政策が伝わるたびに動意付くものの、短命に終わってしまうことが恒例となっています。一過性ではなく上昇が継続するには、今後の具体的な政策内容が好感される、出生数が上向く、実際に業績が拡大する、世間のマインドが変わるなどの好材料が必須です。
また、子育て関連といっても、関連企業の業績がそろって良くなるとは言いづらいところです。例えば、習い事や学習塾であれば、給付金を使って通わせようと考える人が増えるかもしれないので、政策による即効性がありそうです。
一方で、子どもを作ろうと思ってもすぐにできるわけではなく、時間とお金を費やす不妊治療も確実ではありません。政策が効果を発揮しても出生数が増えるには時間が必要ですから、保育園などは業績寄与にも年単位での時間がかかるでしょう。
いずれにしても少子化対策は長期戦になるため、短期的な資金は不向きです。もし子育てをテーマに投資するなら、長期投資を前提に熱が冷めたころを見計らって買うのがよいかもしれません。