少し前の話になりますが、政府による「経済財政運営と改革の基本方針2023」(いわゆる骨太方針)では、国民に毎年の歯科健診を義務づける国民皆歯科健診制度の検討が明記されました。ちなみに制度が始まるのは2025年の目標です。
健康に関する課題なら他にもたくさんあるはずなのに、なんで「歯」なの?と思う人がいるかもしれません。じつは、歯の健康を保つことは他の病気を防ぐことにもつながり、タイトルにもあるように全身の健康に深く関係します。
高校生までは毎年健康診断があり、その中に歯科検診が含まれています。ただ、大学生以上になると健康診断の項目には歯科検診が入っておらず、自発的に歯科検診を受ける必要があるようです。思い返してみると、会社で実施している毎年の健康診断で歯のチェックを受けた記憶はありません。
こういった事情もあって、歯に関しては疎かになりがちとのこと。問題が起きてから病院に行くケースがほとんどとなるため、歯科検診の受診率は極端に低いようです。適切なケアをしていないと歯周病となるおそれがあり、これが進行すると糖尿病などの生活習慣病に結び付くと言います。
歯は健康ですか
厚生労働省が実施した歯科疾患実態調査(令和4年)では、80歳以上で自分の歯が20本以上残っている人が2人に1人以上いるとのこと。多くの高齢者が歯を大事にしていますね。これに該当する人を8020達成者というらしいです。
一方で、全年齢層のほぼ2人に1人が歯周病とのこと。こちらも尋常ではありません。これを書いている筆者も、記事を見ている人も、もしかしたら歯周病である可能性があります。2人に1人となると、自分に限ってまさか・・・とはさすがに言えません。一刻も早く歯科医に見てもらった方がよさそうです。
歯周病になると糖尿病になりやすくなる理由についてですが、歯周病によって炎症が起こると、それに由来する化学物質がインスリン(血糖値を一定に保つ働きを持つホルモン)に関与し、血糖値が下がりにくくなってしまうとのこと。血糖値が高いと歯を支える骨が弱くなるようなので、歯が抜けやすくなります。
歯が抜ける、糖尿病になる・・・と悪いことずくめですね。現状、糖尿病が発症してしまうと完治することはまずありませんので、歯の健康を疎かにした結果、一生後悔するという可能性が誰にでもあると言えます。
出所:厚生労働書 令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要
歯の健康を保つところに需要
国民が定期的に歯科検診し、歯の健康に努めれば医療費の負担も大きく削減することができる。との理由から国民皆歯科健診の導入が検討されていますが、恩恵は医療費の削減だけではありません。
「いまから投資」なので、株式市場についても触れます。矢野経済研究所の調査によれば、2019年度における歯科市場規模は歯科機器が949億円、予防歯科関連製品が240億円、歯科材料が1219億円、歯科用薬品が65億円、歯科用インプラントが208億円だったとのこと。過去であっても計2683億円の市場規模でしたが、国主導で歯の健康が推進されれば、さらに国内の市場規模が拡大するでしょう。歯に関連する上場企業も意外と多いので、チェックしてみると面白そうです。
<歯科関連の一例>