不動産経済研究所が6月19日に、2024年5月の首都圏新築分譲マンション市場動向を発表しました。毎月半ばに発表されている民間指標ですが、不動産業界だけでなく株式市場でも比較的重要な指標として見られています。
気になる結果については、5月の供給戸数は1550戸(前年同月比19.9%減)となり2カ月連続で減少。契約率は56.0%(同18.3ポイント低下)だったため、半分近くが売れ残っている状況です。平均価格は7486万円(同7.2%低下)、平米単価も114万円(同5.5%低下)と下がりましたが、それでも一般層が簡単に手を出せる金額ではありませんね。
都内は不動産バブル?
昨今の不動産価格高騰は、もはやバブルであるとの意見が多くあります。コロナ禍で発生した住宅需要は一巡しており、このごろの不動産会社の決算を見るとその影響が如実に現れています。
土地自体が高い、建設コストなど諸々の費用が軒並み上昇しているという状況であり、収入に対する借り入れ可能額では足りないといったケースも散見されます。広告などを見ると、郊外であっても新築なら総額5000万円以上は当たり前という感じですよね。
日本の平均年収だと5000万を貸してくれる銀行は少ないので、やむなく夫婦でペアローンを組むという人も多いです。それでも今回の平均価格7486万円を借りられる世帯は限られるため、いったい誰が買っているの?と疑問が出てきます。
参考までに、住宅価格の推移を見てみると
出所:国土交通省 2010年1月~12月までの算術平均値を100として基準化
対象は2008年4月~24年2月
コロナ禍以降、住宅価格が全体的に上昇していったのは記憶に新しいところですが、マンションはアベノミクスあたりから上昇していることが分かりますね。上がり方もぶっちぎりです。
高騰の裏に投資マネー
都内の不動産価格が高騰している理由の一つに、投資マネーが流入していることが挙げられます。どういうことかというと、実際に住むのではなく、今後の値上がりに期待して買うといった投資家たちが価格を吊り上げているかもしれない、ということです。
その例として顕著なのが、2020年東京五輪の選手村跡地として開発された「晴海フラッグ」です。タワーを除く分譲マンションの平均販売価格は約7500万円で、当時の抽選倍率は最高で266倍だったそうです。当たったら超ラッキーと言える倍率ですね。不動産価格が上昇するなか、東京都中央区にもかかわらず値段が抑えられているということで、これだけの応募があったようです。
ちなみに、検索すれば売り出し物件を見ることができます。例えば18階建てのE棟は新築部分が大体1億3000万円、中古も同じくらいです。当初の平均価格よりもかなり高いですね。賃貸で募集がかかっている部分は3LDKで家賃30万円程度です。
東京23区30代ファミリーの世帯年収は中央値で1000万円に迫るそうです。年収1000万円であれば住宅ローン7500万円(金利0.5%と仮定)の返済負担率(年収に対する年間の返済比率)は25%程度であり、余裕はなくとも生活はできる水準です。これが1億3000万円になってしまうと返済負担率は43%であり、収入のほぼ半分がローンに消える計算となってしまいます。何かしらのきっかけで生活が破たんする可能性が高いですね。そもそも、借入額が年収の13倍となると基本的にローンを組むことはできません。
晴海フラッグに関しては、NHKから興味深い調査が出ていました。報道によれば、晴海フラッグで最も戸数の多い「サンビレッジ」に絞り、1089戸の登記簿を取得して所有者を調べたとのことです。この結果、4分の1以上が法人名義で、それらの多くが不動産業や投資業などを行う会社だったもようです。中には1社で38戸を所有していた会社もあったそうで、申し込みに戸数制限がなかったのも投資目的の購入を助長したと思われますね。
もともとは東京都がファミリー層向けの分譲マンションを整備する目的で晴海フラッグを計画しましたが、高騰した現状の価格で買おうと思うファミリーがどれだけ存在するのかは疑問が残ります。実需層に届いていないのは本末転倒ともいえるので、何かしらの対策が出てくることを祈るしかありません。
そろそろ東京都知事選挙が始まります。今回は候補者の多さが話題となっていますが、次の都知事は晴海フラッグについても触れるのか気になるところです。