気になるテーマ解説

出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化

6月5日に厚生労働省より2023年の合計特殊出生率(以下、出生率)が発表されました。数値は過去最低の1.20で、この数値は女性が生涯に産む子どもの数です。世帯で考えると夫婦2人に対して子どもが1.2人なので、その家庭は親よりも子どもが少ないということです。出生率の低下はだいぶ前から言われておりましたが、数値が下がり続けており深刻さが増しています。


日本の首都である東京都においては、出生率が0.99となりました。全国で1を割るのは東京だけであり、小池百合子知事も「極めて厳しい数字」とコメントしています。東京都は子育て支援が比較的手厚い印象ですが、それ以上に生活が大変ということが浮き彫りになってきているようですね。


ちなみに、これまでの出生率はこのような推移となっています。

※各種データを基に弊社作成


ここ数年では、19年の1.36から下げが目立ち始めました。22年は1.26だったので2000年以降の最低水準だった05年の1.26と同水準です。そして23年は過去最低を更新するという推移となっています。この調子だと、24年以降も過去最低を更新しそうな雰囲気ですね。


なぜ出生率が低下し続けるのか?

出生率が低下している要因はたくさんありますが、令和5年版厚生労働白書を参照にすると、ライフスタイルの変化や、共働き世帯の増加に加え、「多くの国民が結婚したい、子どもを産み育てたい、結婚した後も子どもを育てながら働きたいと希望しているにもかかわらず、その希望がかなえられず、結果として少子化が進んでしまっているものと考えられる。(原文ママ)」と分析しているようです。


前述の調査だと理由がモヤモヤしていますが、メディアなどのアンケートを見ると、世の中の意見としては、賃金が上がらない、責任を負いたくない、自由がいい、日本の将来に希望が持てないなど、さまざまな意見があります。筆者の知人は恋愛が面倒なようで、「出会いがあればね~」と言います。


筆者は現在共働きの子育て世帯ですが、子どもの急な体調不良、保育園の厳しいルール、高いおむつ代など、体力・財布ともに削られる毎日です。現在「小1の壁」が問題視されるように、今後も不安が解消される気はしません。


SNSではパートナーへの不平不満を綴る投稿も多く、こういったネガティブな情報ばかり目にするようになると、相手を見つけて結婚し、子どもを作ろうという気がなくなってくるのも仕方がないように感じます。加えて、大して賃金も上がらない、一方で物価は上がっていくとなると、無理のない範囲で自由を謳歌しようという人が増えるのは自然かもしれません。


同時に進む高齢化


出生率が低下していくと同時に、国民の高齢化も同時に進行していきます。総務省発表では、2023年9月15日時点で総人口に占める65歳以上の割合は29.1%(総務省発表)。10人中3人は高齢者という計算になります。実は、高齢者人口自体は1950年以降初めての減少になったとのこと。ただ、総人口が減っているため、高齢者の比率は上昇しているということです。


人口ピラミッドの予測を見てみるとこのようになりました

(左)2020年 (右)2050年

出典:統計ダッシュボード(https://dashboard.e-stat.go.jp/)


2020年時点では45~49歳が最も多いですが、50年になるとそれらの世代は75~79歳となり、最も多い年齢層になります。人口ピラミッドは現時点で既につぼ型であり、若年層は少ないですね。それが上にスライドしてくと50年のような形になるようです。50年以降もこの傾向が続くと、さらに小さく細長いつぼ型となっていくかもしれません。


高齢者が増えることによって、社会保障費なども大きく増加しています。誰もが時間とともに高齢者になるので、他人事ではありません。税金面での話は問題の1つに過ぎず、人口減による労働者不足もより厳しくなり、特に農業が深刻です。


人が亡くなれば火葬することになりますが、火葬場も現時点で不足しています。筆者の親族が亡くなった際も、1週間以上待つこととなりました。高齢化により年間の死亡者数が増えると、なかなかお墓に入れないという問題も発生します。なお、社会保障費などは以下の表のように推移しているようです。


財務省・厚生労働省の資料を基に作成


少子高齢化のことを考え出すときりがなくなってきますが、誰もがその影響を受けることになります。現状では、残念ながら国の政策だけだと不十分な状況です。今後をどうやって乗り切っていくのかは、個人の自助努力も重要になってきそうです。こういった問題の解決に取り組む企業もたくさんありますので、株式投資としてそれらの企業を応援するのも一つの手ですね。


この連載の一覧
中小型株への資金回帰が鮮明に
国際会計基準のルール変更へ 営業利益が分かりやすく?
新紙幣の発行開始でキャッシュレスが進む?
次世代自動車「SDV」とは?
マンション価格下落も依然高い そういえば晴海フラッグは?
プロが注目する配当株は?
出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化
日本の長期金利が1%台に 今後の影響は?
日経平均と半導体株の関係
株式分割は本当に好材料なのか
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております