気になるテーマ解説

名前だけで買われてしまった銘柄

4月終盤から5月中旬の毎年恒例行事である1-3月の決算発表ラッシュが終わりました。3月締め決算の企業が多いため、今回の決算発表は今期の見通しを出す重要な決算でもあります。市場の懸念に反して多くの企業が今期の見通しを開示したため、多少なりとも安心感が広がった印象です。


企業である以上、利益を追求する必要があるので決算発表は最も注目される材料の一つと言えますね。ただ、株価はそれだけで動くものではなく、さまざまなイベント、ニュースで動きます。そんなことも株価に影響するの?と思われる内容もしばしば見受けられ、飽きることがありません。


このように、株式市場は毎日何兆円単位で資金が動くダイナミックな市場ですが、投資家の遊びとも言える売買で株価が動くことがあります。それがタイトルにもある通りの「名前」です。今回は、一切関係がないはずなのに名前が株価を動かしてしまった事例について紹介していきます。


某メジャーリーガー関連

国内市場で最も有名になったのはおそらく大谷工業(銘柄コード:5939)です。説明しなくてもメジャーリーガーの大谷翔平選手を思い浮かべるでしょう。大谷工業は1946年2月に前身の大谷重工業株式会社富山支社小杉製作所が創業されました。配電線用架線の部品や送電用鉄塔などを手掛けており、今年で79年目を迎えた歴史のある会社です。


ちなみに、大谷工業と大谷選手の関係性はないと言われます。ただ「大谷」が同じだっただけであり、大谷選手の活躍が伝わると「ご祝儀」という名目で株価が急騰することがありました。最近では祝砲として株価が動意づくことは減りましたが、大谷選手が活躍し始める前と比べて株価は高い水準にあります。


出所:トレーダーズウェブ


某議員に名前が似ているだけ

元内閣総理大臣の小泉純一郎氏のご子息である小泉進次郎氏は、現在自由民主党に所属しています。最近では2024年秋の自民党総裁選に出馬し、現総理の石破茂氏、高市早苗氏とともに決選投票へ挑んだことでも話題となりました。


進次郎氏と上場企業に何の関係があるのかと思いますが、総裁選の最中に動意づいたのが勤次郎(銘柄コード:4013)とオーイズミ(銘柄コード:6428)、さいか屋(銘柄コード:8254)でした。


これらの上場企業も、もちろん進次郎氏との直接的な関係はないとされます。ただ、勤次郎→進次郎、オーイズミ→小泉と、語感が似ていたから買われてしまったもようです。さいか屋は名前の関連性がないですが、進次郎氏の出身地かつ選挙区(神奈川県横須賀市)に店舗があるため関連銘柄になりました。


総裁選の最中、インターネット上では石破氏や高市氏に名前が似ている上場企業はないか?と探す動きもありました。該当企業からすると、半ば強引な理由で株価が上昇したため困惑以外の何物でもないでしょう。ただ、株価は市場で決まるもの。そういった面白い一面もある、ということを覚えておいても損はないかもしれません。


ちなみにタイムリーな話ですが、5月21日に現石破政権の江藤拓氏が失言を受けて日本農林水産大臣を辞任するとのニュースが流れました。進次郎氏が後任とのことで、同日は再び勤次郎とさいか屋が買われることに。忘れたころにやってくるのもこのテーマの面白いところで、すぐに反応できる投資家には敬意の念を抱きます。


海外発の名前だけ売買

国内ではあまり話題にはなりませんが、海外でも名前を理由に買われてしまった事案が存在しました。せっかくなのでいくつかご紹介します。


・Tiziana Life Sciences(ティッカー: TLSA)

テスラ(ティッカー:TSLA)とティッカーが似ており、注文を間違える事案が発生。


・フェイスブックが「メタ」に社名変更(2021年)

カナダ本社の素材メーカーMeta Materialsが勘違いで急騰。日本でもメタリアル(銘柄コード:6182)が急騰。


・Zoom Technologies(ティッカー: ZOOM 店頭取引株)

コロナ禍でビデオ会議「Zoom」が人気になったことで勘違い。「Zoom」を提供しているのはZoom Video Communications(ティッカー:ZM)。米国証券取引委員会が一時的に店頭売買を停止する事態に。


調べてみると、これら以外にも多くありました。昨今では自動売買(アルゴリズム取引)が多く、機械的に株価が上下することが非常に多い時代となりました。ただ、こういった人間自身の判断で株価が動いているところを見ると、謎の安心感があったりもします。さまざまな思惑が交錯する株式市場で、今後も驚くような出来事があるのだろうと期待したくなりますね。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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