いまや、リチウムイオン電池は生活に欠かせないものです。スマホなどのモバイル端末、ノートパソコン、ゲーム機といった広く普及している製品、そして開発が進む電気自動車(EV)にも使われています。取り扱いに注意しないと発火する恐れもありますが、世の中からなくなったら困るものの1つですよね。
次世代の二次電池(繰り返し充電できる電池)としては「全固体電池」がよく話題に上がります。リチウムイオン電池は、電気が移動するための「電解質」として液体が入っていますが、全固体電池は電解質が固体です。液漏れの心配がない、エネルギー密度が高い、小型化できるなどさまざまなメリットがあるため、世界中から注目されている技術です。
出所:経済産業省
そのようななか、リチウムイオン電池の代替品として「亜鉛二次電池」の開発が進んでいます。電動アシスト自転車を吟味したことがある人なら知っているかもしれませんが、安価な電動アシストに亜鉛バッテリーが搭載されているケースがあります。リチウム系と比べて容量が少ないじゃないか!と思った人もいるはずです。
ただ、最先端の亜鉛二次電池はこれらの短所を克服したハイスペック品になっており、本当にリチウムイオン電池の代わりになり得るポテンシャルを秘めています。
亜鉛二次電池とは?
電池にはプラス(正極)とマイナス(負極)があり、負極の材料として亜鉛が使われています。
国内企業では、日本ガイシ<5333>がリチウムイオン二次電池とニッケル水素二次電池の長所を併せ持つ亜鉛二次電池「ZNB」を開発しました。正極にニッケル、負極に亜鉛を使用し、独自技術を用いたセパレーターを採用することで長寿命化と安全性を実現したといいます。
三井金属<5706>も同志社大学と共同で亜鉛ニッケル二次電池に使用する負極用亜鉛箔を開発しました。1900回以上の充放電サイクル寿命を確認したとしており、単純に毎日充電した場合でも5年以上もつ計算になりますね。
海外ではEos Energy Enterprisesという米国の新興企業が、水性亜鉛電池「Znyth」を手がけています。低コスト・長寿命が特徴で、3~12時間の放電が可能とのこと。再生可能エネルギー用の蓄電池に向いているようです。なお、2015年にはNEC<6701>子会社のNECエナジーソリューションズがEOSエナジーストレージと協業することを発表しており、国内外で亜鉛電池が注目されていることがわかります。ちなみに、Eos Energy Enterprisesはナスダック市場に上場しています。
資源量も豊富
レアメタルであるリチウムと比べ、亜鉛はベースメタルと言われるように資源量が豊富です。リチウムの生産量が少ないというわけではありませんが、亜鉛の方が生産量が圧倒的に多いのが現状。需給の動向によってどちらも価格の上下は大きいですが、亜鉛の方が「モノがない」という事態に陥りにくいですね。
※出所:エネルギー・金属鉱物資源機構、米地質調査所 リチウムは上位4カ国の合計
今のところ、亜鉛二次電池がマーケットで大きく話題になっているわけではありません。話題になるのは明日かもしれないし、数年後かもしれませんが、今のうちから注目しておくと面白いでしょう。