昨今では、半導体が何かと話題になります。2021年~2022年は半導体不足で生産が滞っているというニュースがことあるごとに流れ、実生活に影響した人もいるでしょう。新車の納入も相当遅れていますよね。
そもそも半導体が何なのか、いまいちイメージしにくい人もいると思います。辞書的な意味だと、電気を通す「導体」と、電気をほとんど通さない「絶縁体」の中間の性質をもった物質という意味ですが、これだとますます混乱しそうですね。
分かりやすく説明すると、電気を流すことで決められた動作を実行したり、電気の流れを一定に保ったりしてくれる部品の総称です。人の体では腕を動かすとき、脳が命令することで腕の筋肉を動かします。これをロボットに置き換えると、腕のパーツを動かすために必要な命令は、半導体回路に電気を流すことで実行するといったイメージです。
電化製品を分解しない限り、半導体を日常で目にすることはまずないでしょう。ただ、見えないところで人々を支えており、半導体がないと今のサービスはほとんど機能しないといっても差し支えありません。そのようななかで「パワー半導体」が注目を集めており、大きな投資テーマにもなっています。
パワー半導体とは?
半導体にはいくつか種類があり、例えばデータを記憶するメモリもその一つです。ほかにも、電力を制御するトランジスタやダイオード、演算を行うIC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)などがあります。
このなかで、IC、LSI、メモリなどの演算・記憶を行う半導体に対し、適切な電気を流す役目を持つトランジスタ、ダイオードなどがパワー半導体と呼ばれます。
極端な例ですが、高圧電線に豆電球をつなげたら、おそらく一瞬で焼き切れてしまいますよね。精密部品である半導体も同様に、電気を流しすぎると壊れてしまいます。このため、電源から流れてくる電気を制御して半導体に送る「パワー半導体」が必要になります。
注目される理由
時代とともにさまざまな製品が高度化しており、電気自動車(EV)、工場の自動化(FA)、第5世代通信(5G)、データセンター(DC)、太陽光発電、蓄電池など、話題となる言葉はどれも電気制御が重要な技術ばかりです。これらが増えるほどパワー半導体の需要が拡大しますし、かつパワー半導体の高性能化も同時に求められていきます。
技術の発展にはパワー半導体の高性能化が非常に重要で、次世代型の開発に各社がしのぎを削っています。半導体基板はSi(シリコン)が主流ですが、最近では次世代型としてSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)パワー半導体が有名で、Ga2O3(酸化ガリウム)、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体なども有望視されています。
性能差は・・・
※各データを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成
上記の対比表のように、SiCはSiと比べて高耐圧、省エネ性に優れており、高い温度にも耐えられることがわかります。これによって、SiCパワー半導体はより過酷な環境でも動作でき、半導体だけでなく周りの部品も小型化できるようになります。例えば燃費が課題となっている電気自動車においては、小型化・軽量化によるメリットが非常に大きいですよね。
このように、SiCパワー半導体をはじめとした次世代半導体によって、新技術の開発も進んでいくことが期待されています。
ちなみに、パワー半導体の市場規模は
※富士経済発表資料を基にDZHフィナンシャルリサーチ作成
上図のように、将来的に大きく拡大することが予想されています。日本の半導体関連企業は製造装置や関連材料で高いシェアを持っていますし、パワー半導体分野に強い企業の中からテンバガーとなる銘柄が生まれるかもしれませんね。