4月に入り、2023年度が始まりました。年度が変わると新しい制度や法律が施行されますよね。新年度の前後では、各メディアが一覧表を作って報じたりします。
2023年度は、インボイス制度の開始、育児・介護休業法の改正、18歳から成人などさまざまなことが変わります。その中でも、タイトルに挙げたデジタル給与の解禁については「実際どうなの?」と良さ・悪さがイメージしにくいですよね。キャッシュレス決済は増加傾向にあるなか、今回はデジタル給与について考えていきます。
デジタル給与とは?
そもそもデジタル給与とは何か?を簡単に言うと、電子マネーでお給料をもらうことです。例えば、デジタル給与に参入すると発表している楽天グループ(4755)を例に挙げると、決済アプリ「楽天ペイ」を通じて給与を「楽天キャッシュ」で受け取ることができます。
仮に月の手取りが20万円だったとして、全部をデジタル給与で受け取った場合は20万円分の楽天キャッシュになるということですね。もちろん、一部をデジタル、残りは今まで通り銀行振り込みという形で受け取ることもできます。
デジタル給与のメリットは?
では、デジタル給与の導入によって何のメリットがあるのでしょうか。普段、現金を持ち歩いている人は、必要な時に預金を引き出す必要があります。交通系ICや決済アプリも、電子マネーをその都度チャージする必要がありますよね。受け取る側は、これらの手間を省くことができます。自動チャージを設定している人からすると、あまり関係のない話かもしれません。
企業側も、給与振り込みの手数料が減ることで費用の削減につながります。銀行の業務負担も軽減されそうですね。負担が減れば月1回の給与支払いを毎週に分割することもでき、デジタル払いが進んでいる米国では、週1回の給与払いも多い様子。また、銀行口座を持たない海外からの労働者に対する支払いが容易になるといったメリットもあるようです。
一方でデメリットも
日本でもキャッシュレス決済の導入と利用は進んでいますが、現金オンリーのお店も多く存在します。家賃やローンなど、銀行口座からの引き落とししか対応していない支払いもありますので、デジタルマネーと現金の配分を誤ると大変なことになるかもしれません。
また、決済事業者がシステム障害などを起こすと、復旧するまでデジタルマネーが使えなくなるおそれもあります。財布が不要になる反面、デジタルならではのリスクがあることには要注意ですね。なお、デジタルマネーの受け取りは100万円以下に設定されるため、上振れる分は銀行口座などに自動で出金されます。
出所:MMD研究所 18歳~59歳の男女6,080人が対象
MMD研究所が2022年6月24日~7月1日の期間に実施した調査では、上記のような結果となりました。利用したくない方向の人が多い結果ではありますが、若年層になるほど「利用したい割合」が大きくなり、逆に年齢が高い層は「利用したくない」が多い傾向にあります。
株式市場にも恩恵はある?
楽天証券やPayPay証券など、一部のネット証券では電子マネーを使って株式や投資信託を購入することができます。給与として電子マネーを受け取ったら、銀行→証券会社への資金移動をせずにすぐ投資することもできそうですね。
ただ、マネーブリッジ(楽天銀行→楽天証券)、SBIハイブリッド預金(住信SBIネット銀行→SBI証券)、おいたまま買付(PayPay銀行→PayPay証券)など、系列で連携しているネット銀行も多いので、メインバンクと利用証券会社が同系列の人にはメリットが薄そうです。
投資家としてのメリットは薄そうですが、利用者が増えるかどうかは今後次第です。少なくとも、今よりもキャッシュレス決済の普及に拍車をかけそうな制度のため、デジタル給与に関連する銘柄には注目しておきたいですね。