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【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性

先日、京都の宇治市に行きました。10円玉の裏に描かれている世界文化遺産「平等院鳳凰堂」も、ここに建てられています。京都市内と比べるとそこまで混雑していないので、人混みは嫌だけど京都を味わいたい!という人にはうってつけかもしれません。


宇治と言えばお茶ですよね。駅周辺には、中村藤吉や伊藤久右衛門など老舗の本店が構えており、商店街のさまざまなお店では抹茶コラボ商品で溢れています。そのようななか、今回の訪問で初めて「玉露」を飲みました。普段飲んでいるようなお茶とは全くの別物で、一言で表すと「緑茶の風味がある出汁」のような味わいです。


お茶には特有のアミノ酸「テアニン」が含まれており、「玉露」はこれが特に濃いとのこと。まだ飲んだことがない人、もしくは気になった人がいたら、玉露使用のペットボトル飲料ではなく、是非とも目の前で淹れたものをご賞味ください。


それはそれとして、アミノ酸といえば、うまみ成分として有名な「グルタミン酸」や「イノシン酸」などが思い浮かぶでしょう。最近では日本人のタンパク質不足がよく取り上げられます。なかでも、タンパク質の素になるけれど、体内で合成できない必須アミノ酸が不足しているといった指摘がよく取り上げられますよね。


このように、健康とは切っても切れない関係にあるアミノ酸ですが、実は健康以外にもさまざまな分野で活躍しているすごい物質です。今回は、アミノ酸とその可能性について解説していきます。


アミノ酸ってなんだ?


そもそもアミノ酸とはどういうものかというと、アミノ基とカルボキシ基から構成されている有機化合物のことで、タンパク質を構成する成分にもなります。自然界には500種類程度のアミノ酸が存在すると言われ、人間に必要なのはこのうち20種類とされます。それらが複雑につながることで人体が作られますが、人体の約20%がタンパク質とされているので、私たちの身体の20%はアミノ酸でできているといっても過言ではありませんね。


 


アミノ酸を扱う企業


<食品>

アミノ酸と聞くと、うまみ成分「グルタミン酸ナトリウム」などを使った調味料の「味の素」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。商品名が社名にもなっていますよね。筆者も愛用しています。味の素かどうかは分かりませんが、味をよくするために調味料(アミノ酸等)といった表記で数多くの加工食品にうま味調味料が使用されています。

 

<美容>

前述の通り人間の体はアミノ酸からできているため、スキンケアなどにも使用されています。肌は人体で最も外部環境にさらされる部分ですから、美容液やクリームにアミノ酸を配合することで、肌の健康に役立つされています。


普段はスキンケアなんてしないよ!という人であっても、シャンプー、ボディソープ、洗顔料などに配合されていることも多いので、意識せずにアミノ酸に触れているケースが多いでしょう。肌に関わるものは人によって合う合わないが大きく分かれるので、ニーズに応えようと各メーカーが多種多様な商品を展開しています。

 

<医薬>

上の図にあるように、アミノ酸が2個以上つながるとタンパク質の前に「ペプチド」という物質に変化します。このペプチドで、なんと病気の治療薬を作ることができる可能性があります。例えば、骨粗しょう症用として骨の育成を促進する「テリパラチド」などが該当し、すでにペプチドを使った薬は複数存在しています。


500種類もあるためアミノ酸の組み合わせは天文学的な数字となり、2種類を選んだ組み合わせはなんと12万4750通り。3種類では2070万8500通りです。組み合わせを増やせば億、兆・・・と増えていきますので、新薬候補を探すのは途方もない作業ですね。裏を返せば、それだけ可能性があるということです。

 

<電子材料>

前述の食品で味の素について触れましたが、実は同社、アミノ酸の技術を使って半導体材料を作っています。パソコンに採用されている高性能半導体(CPU)には「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」という層間絶縁材が使われており、同社によれば全世界の主要なパソコンのほぼ100%のシェアを持つとのこと。


市場を独占していることはもちろんですが、アミノ酸製造の技術が半導体に応用されているのは驚きですよね。同社に限らず、アミノ酸を用いた電子材料を手がける会社がほかにも存在しています。

 


アミノ酸は世界を救う?


ここまで説明してきたように、アミノ酸は「食」に関すること以外にもさまざまな分野で活躍していることが分かります。何気なく手に取った商品の成分表示を見てみると、アミノ酸とは書いてなかったとしても食べ物であれば「グルタミン酸」「イノシン酸」、スキンケア用品であれば「メチオニン」「イソロイシン」などといった具体名で表記されているかもしれません。


話は変わりますが、筆者は紹興酒を好んで飲みます。クセがあるので好みは分かれますが、実は必須アミノ酸を多く含んでいる栄養価の高い飲み物です。アミノ酸は肝臓によるアルコール分解の効率を高めるとされており、紹興酒を飲んでも今のところ悪酔いをしたことがありません。


もちろん飲みすぎは良くないですし、差は人それぞれでしょう。ただ、知れば知るほど、アミノ酸は奥深いものです。アミノ酸が世界を救うかも?と期待して、これらを扱う企業にも要注目したいところです。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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