動画サービス「Netflix」で7月25日より配信されたドラマ「地面師たち」が人気です。映画サイト「シネマトゥデイ」のニュースによれば、「Netflixの日本トップ10(テレビ部門、8月26日~9月1日)での連続首位記録を更新し、6週連続の1位を獲得した」とのこと。
筆者もNetflixを開くと、常に「地面師たち」がトップを飾っています。先日、不動産取引に携わる人と話す機会がありましたが、最近では毎回「地面師たち」が話題に上がるようです。社会現象と言っても過言ではなさそうですね。
「地面師たち」の原作は小説で、2019年に連載が開始されました。今年7月からは続編も刊行されており、これだけの人気が出たとなるとドラマの続編が期待されます。筆者もドラマを視聴しましたが、内容は非常に過激です。よほどマイルドな脚本にしない限り地上波で流すのは困難という印象でした。ネット配信だからこそできたと言えそうです。
土地競争は激しい
「地面師たち」はフィクションなので、すべてが真実というわけではありません。ただ、モデルになった「積水ハウス地面師詐欺事件」では約55億円という被害が実際に出ており、大なり小なり不動産詐欺は数多く発生しています。90年代のバブル期には、原野商法といったものも流行しました。
なお、不動産業の法人数は令和3年度で36万8552法人あり、全産業に占める比率は12.8%と非常に多いです。町の不動産屋から大手デベロッパーまで様々ですが、不動産は参入障壁が比較的低い業種と言われます。そのため、大手不動産会社に入社し、その後独立する人は多いようです。
出所:公益財団法人不動産流通推進センター 2023不動産業統計集
前述のように不動産業はライバルが星の数ほどいるので、良い土地は我先にと奔走する必要があります。そもそも需要がありそうな土地はすでに誰かが所有権を持っており、簡単には市場へ出てきません。地主が売るのを待つ・・・ではなく、業者自ら売却を勧めていかなければならないので、なかなか難しい仕事でもあります。
「地上げ屋」という言葉があるように不動産業者にあまり良いイメージを持っていない人も少なくはないと思いますが、どの業界にも良い人悪い人は存在します。また、不動産取引は必要事項や書類がとにかく多いです。不動産業者が仲介役となってくれるからこそ取引が円滑に進むので、きつい仕事の代表格と言われつつも、なくてはならない仕事でもありますね。
良い土地はすぐ売れる
どの国でも言えることではありますが、良い土地は高くてもすぐに売れていきます。SUUMOなどの不動産ポータルサイトを見ると売り出されている土地はたくさんありますが、掘り出し物といえる物件は多くありません。
当たり前の話ですが不動産業者の方が広いネットワークを持っているため、一般人よりも早く良い土地の情報を仕入れやすいポジションにいます。その後、不動産業者専用の情報交換サービス「レインズ」に登録され、最終的にポータルサイトにも掲載されるといった形のようです。
一般人がネットで探しても、良さそうだと思った土地は大抵「建築条件付き」。不動産業者が指定する方法で住宅を建てる必要があり、これによって不動産業者は普通に土地を売買するよりも利益率が良くなるという仕組みです。
なんてこったと思ってしまいますが、個人の力では限界があります。土地探しは戦争です。少しでも良い土地を見つけたい場合、信頼できる不動産業者と協力し、二人三脚で探してくのが最も効率が良いでしょう。仲介手数料は安くありませんが、間違って難あり物件を買ってしまう方が損です。
謎の土地
航空写真をみると、住宅密集地なのになんでここだけぽっかり空いているんだろう?といった土地があります。人気エリアだとなおさら、その土地が欲しいという人は多いはずです。しかし、何年たっても雑草が生い茂る空白地帯の場合があります。
なぜなのか?と不思議に思うかもしれませんが、地主が売りたくても売れないという事情があったりします。ただ雑草が生い茂っているだけの空き地に見えても、それは生産緑地として指定を受けているかもしれません。
生産緑地は税制が優遇されるものの、30年間の営農義務、農地以外の用途への制限がかかります。また、生産緑地を解除した場合は優遇措置がなくなり税負担が重くなるといったデメリットもあります。なので、30年の経過を待つ、または相続時に宅地へ転用されることが多いようです。
このように売りたくても売れないといった土地は日本全国に数多く存在しています。買い手が見つからない不便な土地、空き家問題などもあり、少ないパイを大勢で取り合っているのが現状です。そういった厳しい環境が地面師に付け入る隙を与えるのかもしれませんね。